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 1988年9月15日、イギリス・マンチェスター生まれの30歳。俳優ジョン・ブラッドリーは、世界的人気となったテレビシリーズ『ゲーム・オブ・スローンズ』で、不動の愛されキャラとしてその存在感を高めています。

 彼が演じたのは、ランディル・ターリー卿とメリッサ・ターリーの長男であるサムウェル・ターリー。太っており、最も勇敢であり有能な…という男でもありません。その代わりに賢く、そして教養や洞察力の高さから発する彼のアイデアは冥夜の守人と壁の向こうの勢力との戦いにおいて多大な貢献をしました…。

 そんな彼が、キット・ハリントンとの友情そして「ウィンターフェルの戦い」で演じた忘れられない役、そして『ゲーム・オブ・スローンズ』のエンディングが満足のいくものだったのか!?…について語ってくれました。

 2018年7月、『ゲーム・オブ・スローンズ』の撮影が終了した約1カ月後の話になります。ジョン・ブラッドリーとキット・ハリントンは、ロンドンで夕食を共に。

 彼らがスクリーンの中で演じるサムウェル・ターリーとジョンスノーは、8シーズンをまたいで非常に強い絆を構築し、そしてその絆こそが、無謀で残忍なウェスタロスの状況下で2人が生き抜く手助けとなるのでした。

 そんな2人は、現実世界でも同様に友情を築き上げ、世紀最大のTVシリーズとも言える作品を通して、全くの無名から名が知れていくという大きなプレッシャーを互いに乗り越えてきた…とも言えるのです。

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 この夕食で、友人でもあり共演者でもあるこの2人は、自分たちがここ10年来ずっといた関係とは全く違う絆でつながっていることに互いに気づいたことを打ち明け合います。そう、それは『ゲーム・オブ・スローンズ』の撮影…“クレイジーで素晴らしい経験”を共にした戦友であることを…。そして、「自分たちは次に、誰になるべきなのか?」を探さなくてはならないことについてを語り合ったのです。

 「僕たちは、8年にわたる僕らの友情の本質について語り始めたんだ。そして、こう思った、『僕たちは会うべきして会ったのだと思うよ。一緒に力を合わせて働くべき人と出会えて本当に良かった。そして、こうして友だちになれてことに感謝です。もし友達になれていなかったら、好きでもない人の顔を毎日見なきゃいけなかったのだから…。それは悪夢だっただろうね(笑)」

 ラジオシティ・ミュージックホールで『ゲーム・オブ・スローンズ』シーズン8のプレミア記者会見が始まる前の午後、ブラッドリーはそう語っています(ちなみに彼のインタビューを行うため特別に用意した部屋は、彼のホテルからたった2ブロックでした。ですが、彼のファンがその週ずっとビルの外で寝泊まりしていたので、クルマで移動するしかなかったのです)。

 どんな職場でも言えることですが、一旦仕事が終わればもうその同僚に会う理由はなくなります。もちろん、オフィスの外でも会いたいと思えるような人じゃない限りは、ですが…。ブラッドリーはこうも言っています。

 「ちょうど撮影も終了したということで、僕らは互いに会う機会はもうなくなったことをちょうど話してたところなんだ。だから、これからが本当の意味で、僕らの友情が試されるときとも言えるね(笑)」 

 アメリカNBCの人気番組『サタデー・ナイト・ライブ』に出演した際、ゲストであったブラッドリーが、「撮影が終わっても、友だちでいてくれるかどうか?」とハリントンに訪ねたエピソードでも、その絆の確かさに世界が注目しました。

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2009年に共演し始めたときから、『ゲーム・オブ・スローンズ』が世界的に最大級のテレビショーになっていくのに伴って、二人は互いにカメラの前でどのような演技をすべきかを学び続け、そして今日があるわけです。

 『ゲーム・オブ・スローンズ』のファーストシーズンで、ブラッドリーが舞台のセットに足を踏み入れたとき、彼自身もハリントンも当時まだ20代前半でした。ブラッドリーに関しては、数カ月前にマンチェスターの演劇学校を卒業したばかり…。

 彼らはそれまで、カメラの前で演技をしたことは一度もなく、『ゲーム・オブ・スローンズ』は彼にとって、最初の公演だっただけであったばかりでなく、初めてのオーディションでもあったのです。ブラッドリーとキットソン(以下キット)は、そんな状況を共に共有してきたのです。

 「キットと僕が、ファーストシーズンの撮影という短い期間でここまで仲良くなれたのは、二人がそれまで演技が未経験だったから…という理由もあると思いますと、ブラッドリーは私に語りました。

 「きっとそれによって僕らは波長があって、その後の友情につながったんだと思う。何か怖くて不確かで傷つきやすい、そんなときにできる友人は、信じることができるし、お互いを分かり合えるものでは…。だからこそ、ずっとその先も一緒にいる友人になれるのだと思うんだ」

 画面の中でのキャラクターと非常によく似ていて、現実世界でもブラッドリーとキットは多くの視線を浴びながらも、不完全な状態で演技をしながら次なる演技を学んでいく…という役柄をこなし続けてきたのです。

 ブラッドリーがニューヨークで行われたシーズン8プレミア記者会見への準備をしている際、私は彼は、「ウィンターフェルの戦い」が放映された第3話以前のことを確認しました。

 この壮大なエピソードやバトルの中でのサムウェル・ターリーについてを細かく話し、彼のキャラクターがどのようにファンタジーの中で、違う意味での男らしさを表現したのか?を。そして『ゲーム・オブ・スローンズ』のエンディングが、「“レッドウェディング”のように満足いくものになったのか?」について語り合いました。


 シーズン1の第4話では、ジョン・スノウがナイツウォッチで暗闇を支配した新兵の訓練の手助けをしています。そこでサムウェル・ターリーが中に入り、彼は息を切らせ、全くサイズ違いの鎧をまとい、落ち着きがなく少し病気かのように見えました。

 「こいつはすぐに弱音を吐くな」と、周りの人々は思うわけです。そしてその後、予想どおりサムウェルは、すぐにコテンパンにやられることに…。そして彼を打ちのめした兵士に向かって、「降参だ!」と叫びます。

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 「もう十分だ」とジョンが言って、哀れなターリーを守ろうと間に入ります…。そうして物語は、さらなる深い意味合いが加わっていくと言えるでしょう。

 ほとんどの人の予想では、最後の6エピソードどころか、そのシーズン中でさえサムウェルが生き残ると思っていなかったでしょう。ブラッドリー本人でさえ思わなかったそうです。昔からよくある ウェステロス(物語の舞台となる大陸)のようなファンタジーの世界では、サムウェルのようなキャラクターが生き残ることはほとんど期待されませんでした。普通、ヒーローになるのは、肉体的にたくましかったり、現実離れな素晴らしい才能の持ち主だけですから…。

 そしてサムは才能はなく、単なる読書好きでしかありませんので…。それについてブラッドリー本人は、「ウェステロスの世界で“読書好き”というのは、“強い”という才能よりも珍しい才能だからさ」と語っています。

 「皆が、『物事には色々なやり方がある』というのを分かってくれたら嬉しいね。(強いキャラクターが生き残るのではなく、読書好きのキャラクターが生き残るという描き方は)特に現在の政治の風潮の中に見られるような、”男性的”であることが称賛される良くない固定観念とも言えるよね。それがなくなるべき…と言っているわけではないけど…」

 今日の現実世界は、サムウェル・ターリーよりもむしろ、もっとスタニス・バラシオンのような冷酷で権威的で権力に執着がある。 キットのような”男性的”な人が良いとされる風潮は…ある意味で毒性のある固定観念ではないだろうか。その例えとして、『ゲーム・オブ・スローンズ』の悪童ジョフリーとドナルド・トランプ大統領を比較すると面白い…。

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Jジョン・ブラッドリーいわく、「サムウェル・ターリーが、ゲームオブスローンズに出てくるすべての男性を象徴している」とのこと。サムウェル・ターリーなしではジョン・スノウは存在しないということです。

 「この2人には、ある固有の弱点があり、そしてそこにたくさんの共通点がある。これがとても興味深いんだ」

 「トランプとジョフリーは、確かにその世界において”最も強くあるべき人”ではあるけれど、実際の彼らはそうではない。そして彼ら自身もそのことを知っていて、不安に思っている。そしてジョフリーが『私が王だ』だとか、トランプが威張り散らしながら、『俺はやってやったから、俺が一番だ。誰も俺みたいな人間を今まで見たことがないだろ!』だとかというときは、実は自分の力を疑っていて、自信のない人々の口から出てくるものなんだと感じるんだ。そうやって彼らは、虚勢を張っていることを実は悩んでいるんだ」

 これらの微妙な権力の力関係を描いているからこそ、『ゲーム・オブ・スローンズ』は、いわゆる典型的なフィクション作品を超えるものとなりました。boobs and dragon (おっぱいとドラゴン)などと偏見を持たれやすいショーではありましたが、そこには表には現れていない深いレベルでのチャレンジがあったわけです。それこそが良いフィクションの在り方ではないでしょうか。

 そしてこれこそが、このシリーズでサムウェル・ターリーが愛され極めて重要な役となった理由なのです。ジョンがその才能とスキルとわずかな女教皇の魔法で、なんとか生き残っていた間(うまくいかなかったケースでも)、サムウェルは彼の賢さによってここまでの成果を出せたわけですから。

 私たちがシーズン7の終わりとシーズン8の始めで見たように、それは重要なことであり良いことでもありました。サムウェル・ターリーがこのシーズンの2つの、重要な秘密を暴露する役割を担っていたわけですから。彼がシーズン7でジョン・スノウの血縁関係を知り、それをシーズン8の最初でジョンに知らせるというカタチで…。

"「エンディングに満足するか?」
と聞かれたら、多分…きっと…
その答えは「ノーだ!」 "

 彼がやったのはそれだけではありません。

 「ウィンターフェルの戦い」の前夜に、サムが「ホワイトウォーカーを倒す最初の兵士が俺だったのをみんなが忘れているようだ」と説明したように、彼は「First of the First Men」も生き残りました。そしてボスゾンビとも戦い、ジリのことも守りました。シーズン8では、サムは自分を守る以上の事もできるようになっていたのです。

 そしてターリーと共に成長した8つのシーズンを通して、ブラッドリー自身もまた俳優、パフォーマーとして同様の自信を彼の中に築き上げたのでした…。

 「彼がこんな重要な役になるとは思わなかったけど、このサプライズは3つ面でいいことだと言えるよ。だって、視聴者は次の8シーズンを通して、このキャラクターがいかに勇敢で価値があるか、そして僕のほうは、このキャラクターがどれほど成長したかを確認できたし、このキャラクターによってさらに自分自身についても探求できるのだからね」と、ブラッドリーは語りました。

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ジョン・ブラッドリーでさえ、ジョン・スノーがシーズン8まで生き残ったことに驚いたそう。彼はターリーがこのストーリーで、こんな重要な役となって終わるとは思いもしなかったそうです。

 一般的な物語において、「すべてのキャラクターが、ジョン・スノーになることはできないってことに気づいた」とブラッドリーは言います。

 「普通の人を代表するために、サムのようなキャラクターが必要となるのさ。なぜなら、それが恐れや利害関係を文脈化するから…。そして、ジョン・スノーのような男の役割を理解するためにもサムが必要となるのさ。ジョン・スノーがそこら辺にいる男たちよりも卓越して見えるようにね…。そして、ほとんどの男性は認めたくないだろうけど、サムは多くの男性たちの代表として存在して登場しているのさ」

 「きっとほとんどの男性が、自らをジョン・スノーのように思いたいところだろうけど…。彼らは男は男らしく、そして彼のように物事に立ち向かうものだと自分自身を思いたい。そして、どんな困難でも乗り越える…と。僕の知っている限りでは、世の中そんな男性ばかりではないけどね。でも、僕の知ってる多くの男性は、様々な場面で傷つきやすいし、怖がり。彼らの自分自身に抱いている理想像や、あるべき姿へのファンタジー的要素を奪われないように、本来持っている自分の弱みと向き合うことを嫌うのさ」

 一方サムはそもそも、他と違って平和主義者。

 バイオレンス表現が強烈と言われている『ゲーム・オブ・スローンズ』の中でも、このサムのようなキャラクターが生まれた背景には、作家であるジョージR.R.マーティンが、ベトナム戦争に対して猛反対をしていたことがあるのではないかと思えるふしがあります。マーティン自身が、サムウェルと自分を重ねているのではないかと…。

 これについて私も、マーティン本人に言及したことがありました。が、ブラッドリーもまたこのことについて尋ねたことがあるのかを聞いてみました。

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ジョージR.R.マーティンそのものであるようなサムウェル・ターリーは、戦争や死、残忍で野蛮な作品の中では珍しい平和主義者。

 「いや、それについての会話を特に彼としたことはなかった。そして、あまりのその会話をしたくなかった。それを確認したいとは思わなかったから…。僕はその答えは、演技の努力を重ねていくことで、自然とその本の真意を感じていくものだと思っているから…」


 シーズン8のエピソード3に突入すると、サムウェル・ターリーは「ウィンターフェルの戦い」でジョン・スノーの隣に立つ権利を得ました。

 そのエピソードは、今までにある映画の中でも最長のバトルシーンの1つとして評価され続けています。その背景には、最後の数カ月間の骨の折れるような撮影スケジュールを語るという宣伝効果によって、盛り上げていったことでもあるでしょう。そう、安全な地下室にとどまるのを嫌っていたターリーのシーンも含めて…。

 「ターリーが安全な地下室にいる間、もし仮にジョンや他の誰かが死んでいたら、彼はその後、自分らしく生きることはできなかっただろうね」

 実際、エピソード2の地下室での出来事を考えると、「サムは第一線で戦うよりもきっと、地下室でジリとリトルサムを守るほうが良かっただろう…」とブラッドリーは続けまる。サムの震える手のショットから始まった「ウィンターフェルの戦い」のクライマックスは、息を飲むほど素晴らしいトラッキング・ショット(レールの上でカメラを動かすショットのこと)の中、歩いていたサムは女性や子どもたちが地下室に入っていくのを見る…。そこでサムは、大きな決断を下さなければならない状況となります。

 「この瞬間にサムは、これらの人々のために戦っていることを確信したんだ。彼は彼自身の義務感によって戦うと決めたのだ。それは実に力強い瞬間だったと思う」と熱く語りました。

 そのエピソードでのサムのシーンは、彼と彼に関わるすべての人々にとって、骨の折れるような過酷な撮影だったそうです。

 「夜間に60回にもおよぶ撮影をして、朝の6時に寝る。そして午後2時に起きて、また仕事に行く。そのときは、現実の生活から完全に隔離されるため、分子レベルで体全体が影響を受けているのを感じたよ」

 「自分が起きて社会と関わっているとき、友だちは皆ベッドで寝ている…。全く正反対さ。そして僕が寝ているときは、友だちは皆起きている…。自分が、現実の世界からはっきりと隔離されているのがここで分かったよ」

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彼は正確には戦士ではありませんでした。ですが、「ウィンターフェルの戦い」では最前列にいます。

 この戦いでサムウェル・ターリーは、いままで一度も関わったことのないキャラクターたちと一緒に横に並んで戦っていることに気づきます。とりわけエピソード3の終わり際では、彼は戦いそして敵を倒します。そして彼は生き残るのですが、同時に彼はその時に限界を迎えるのです。

 彼は山積みになっている知り合いたちの死体の上に横になり、エピソードの始めで、サムを救うために倒されたドラロス・エドを含め、死んでしまった人々に対して罪悪感と悲しみを感じるのです。

 「そのとき、僕が演じていたサムウェル・ターリーは、精神的にも肉体的にも疲れ切っていて、最後の戦いに取り残されたかのように感じていたんだ…」

 そのシーンの撮影中、ディレクターのミグエル・サポクニックからもらった言葉が忘れなれない…と、ブラッドリーは話しました。

 「今から君と死体の山だけの状態になる。ここで初めてサムが、自分はもうこの戦いで生き残れないと考えていることを君に表現して欲しい。このときこそが、君のキャラクターの中からすべての戦闘意識が消え去った瞬間になる…」と。

  「あれは、本当に大変な撮影の瞬間だったね。僕らはだいぶ長いこと撮影をしていて、それによって自分たちがおかしくなり始めてるのを感じていた。戦いが怖く感じていたよ」

 「劇中でのサムの知人の死体たちによりかかっていたとき、それらはただのつくり物だけど、それらの死体の顔や手を見つめていることは本当に不気味に感じたし、トラウマをもたらす可能性もあるって思ったよ。それを撮影していた瞬間は、僕がこのショーで過ごした時間すべての中で最も記憶に残る瞬間だったかもしれない」

 もちろん穢(けが)れなき軍団の指揮官グレイ・ウォームは、最後の瞬間でサムを救い出します。そしてすべてのキャラクターに向かって話しかけます。その瞬間、誰よりも人間らしい存在となりました。

 「その瞬間は、戦いの中で最も人間味だ出た瞬間の一つと言えるね。1日中アクションをやっていることは可能だが、人間らしさを出す瞬間っていうのは自分で見い出さなくてはならないね…」

HBO Presents "Game Of Thrones" Los Angeles Premiere - Red Carpet
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2013年3月18日、L.A.での『ゲーム・オブ・スローンズ』シーズン3プレミア記者会見でのブラッドリーとハリントン。このドラマが終わってしまった今、この2人はどうやってこの友情のカタチを保つのでしょうか。それを一番知りたいのは、当人たちでしょう。

 「この『ゲーム・オブ・スローンズ』の中で、サムがどれほどの影響力があるか僕は知っていたけれど、でも実際は、最後のエピソードの半分もいかないうちに死んでしまうと思ったいたよ」

 このストーリーにもっと多くのことをもたらしてくれるポテンシャルがサムウェルにはあると知りながら、彼がこの見せ場となる戦いを生き残れるとは思わなかったと語りました。

 「ウィンターフェルの戦い」は、サムウェル・ターリーの最期ではありません。彼は生き延び、そして戦中に倒れてしまったすべての友人や他の兵士たちに対し、深い悲しみを覚えつつ、自分が生きていることを感じるのです。

 この展開は、ブラッドリーが「レッドウェディングの大虐殺」と比較したように、このシリーズが最も『ゲーム・オブ・スローンズ』らしく終わるエンディングを我々に想像できる余地を与えてくれたと言えるでしょう。

 「皆がこの『ゲーム・オブ・スローンズ』を観て、どう感じるかを表すのに僕がいつも使う一言は『満足感』です。『喜び』ではありません。このドラマは、視聴者を喜ばせることに重点を置いていないからです。すべての人がそれぞれ好みが違うわけなので、人それぞれ違う結末を求めているものです」

 「『レッドウェディング』は、ものすごく満足したものになったし劇的なものでした。ですが、望んだ結末ではありませんでした。サムに対しても同様で、その結末を嬉しくは思っています。ですが、その嬉しさの大部分は、満足感から来るものなのだと思うのです」

…「ハッピーエンディングなんてものは、そもそも存在しない」と言うジョージR.R.マーティンの名言を、マーティンは思い出させてくれました。

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ジョージR.R.マーティンは、常に「ハッピーエンディングなんてものは存在しない」と語ります。ブラッドリーが「レッドウェディング」と比べた結論も含め、『ゲーム・オブ・スローンズ』もその例外ではありません。

 ブラッドリーがハリントンと、共演者としてではなく友だちとして初めて共にしたディナーは、その満足のいくエンディングの撮影の後のこと。そして、そのディナーこそが、2人が心を通わせたこのドラマでの仕事上の関係を越えて、2人がつながれるかどうかを観るチャンスでもあり、そして彼らとその友情を決定づけた瞬間でもあったわけです。

「僕らが好きだったすべてのものを僕らで共有し、話したすべてのことは、実際はほとんどとは『ゲーム・オブ・スローンズ』とは無関係のものだったよ…」

 彼らはドラゴンと劔のようなファンタジーを通してではなく、それぞれの好きなフットボールチーム(マンチェスターユナイテッド)やコメディアン(スティーヴ・クーガンが扮するキャラクター、アラン・パートリッジ)を通して、絆を深めていたのでした…。

 「もし僕らに、『ゲーム・オブ・スローンズ』の中で最も恋しいものは?って聞かれたら…。コスチュームかもしれないね。もう2度と、あのコスチュームを着ることはできないだろうから。あのささやかな生活は、僕の人生から完全消えたんだと思うと感慨深いよ…。そして、最も恋しく感じることが…そこで出会った人々であるということはありません。なぜなら、それは僕が望めばいつでも会えるし、残りの人生をずっと共にすることだってできるのだから…」

 ブラッドリーたちの固い友情があるならば、『ゲーム・オブ・スローンズ』の次に何が来ようとも、前に進むことができるのでしょう。

 そして彼は、セレブとなってもてはやされることへの関心はあまりないようです。既に次の作品がいくつか決まっているようですが、それをゆっくりと進めていくとのこと。今は、自分の人生を大きく変える出来事であったと言える『ゲーム・オブ・スローンズ』という作品を終えたことをしっかりと味わたいようです。

 大人気となった『ゲーム・オブ・スローンズ』を終えた彼は、きっとこの先も、公の場では“サムウェル・ターリー”と呼ばれ続けることしょう。そして、彼に話しかけるファンの数も予想をはるかに超えるほどの数となったに違いありません。

 これらを礎に、ジョン・ブラッドリーは今後、さらなる高みへとステージアップしていくことでしょう。ウェステロスでの泥や雪、血を経験を思い出しながら…。そして、そのときに苦楽をともにしてきたキット・ハリントンのような、現実世界での掛け替えのない親友たちとともに支え合いながら…。


Photograph & Videograph / Tyler Joe
Styling / Kristin Saladino
Set design / Alix Winsby
Grooming / Walton Nunez

From Esquire US
Translation / Shane Saito
※この翻訳は抄訳です。


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