私たちはあらゆる場面で、自らの健康について考えることでしょう。スーパーで食品を購入しようというときには、「オーガニックにしようか?」「農薬は大丈夫かな?」「添加物は入っているのか?」などの基準でセレクトするようになった人も少なくないはず。ファッションに関しても、この季節になるとオーガニックコットン素材のウェアを探したり…。

さらにストリートやメディアでは、健康向上をコンセプトにした商品の広告が目立ち、SNSを中心としたオンライン上でも多くのインフルエンサーによって健康食品やダイエット法のレビューを投稿しては、それに関連する商品購入のレコメンドをしていたりしています。

身体ばかりでなく、
心の健康も忘れずに

もはや多くの人が、「ウェルネス(よりよく生きようとする生活態度)なしに生活することなど考えられない…」と言えるほどの時代になったのです。ですがその一方で、私たちが心の健康…“メンタルヘルス”の重要性については十分に対応していないのではないでしょうか? それは現在の課題とも言えます。

メンタルヘルスの重要性

非営利団体「Mental Health America(メンタルヘルス・アメリカ)」が発表した調査結果によると、「アメリカでは成人の19.86%(約5000万人)が精神疾患の診断を受けており、そのうち4.91%は重度と診断されている」ということ。また、「不安障害に苦しんでいる人は、人口の18.1%(成人はおよそ4000万人)」と報告しています。

それにもかかわらず、「Anxiety and Depression Association of America(ADAA:アメリカうつ不安障害協会)」によると、最も治療しやすい症状のひとつだという不安障害の治療を受けている人は、このうちのわずか36.9%ということなのです。

現在、オンラインまたはその他の公の場で、自身のメンタルヘルスの問題についてオープンに語る政治家やスポーツ選手、俳優やミュージシャンといった芸能人が増えている中、依然としてこのような状況にあることは憂慮すべきことと言えるでしょう。

セレーナ・ゴメスがこの問題に対峙

こうした中、メンタルヘルスの問題に苦しんでいることを明かしているセレブのひとりであるセレーナ・ゴメスは、この問題への取り組みをさらに前に進めようとしています。

セレーナは母親マンディ・ティーフィー、女性向けメディア『The Newsette』の創業者ダニエラ・ピアソンと共に、メンタルヘルスについてオープンに話し合うことができるメディア・エコシステム「WONDERMIND(ワンダーマインド)」を創設したことを明らかにしました。

そこではユーザーたちが、メンタルヘルスのついてオープンに話し合える場となります。さらに医療の専門家からさまざまな症状などについて学び、実際にサポートを受けることができる仕組みづくりを目指すということ。

ちなみに「エコシステム」とは、本来は「生態系」という意味になりますが、ビジネス分野では互いに独立した企業や事業、製品、サービスなどが相互に依存しあって一つのビジネス環境を構成している事業形態を、この生物における生態系になぞらえてこう呼んでいます。

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「私たちは実際の会話と同じように、誰にでもフレンドリーに会話を続けたいと思っているはずです」と、前出のセレーナの母マンディ・ティーフィーズは話します。さらに、 「私たち創業者の3名も、自身、精神疾患を抱えて生きている者たちです。つまりは、明確な答えも持っていないのです。だからこそ私たちは、多くの人たちと一緒に話し合うことが必要だと感じているのです」とも言います。

今後の「ワンダーマインド」

「ワンダーマインド」は、まずはニュースレターの発行を開始するということ。登録したユーザー向けて、無料で定期的に情報を発信。個人の体験や(わかりやすく、威嚇的でない言葉を使用して)医療関連の記事を紹介したり、メンタルヘルスに関する質問への回答を提供したりする計画とのことです。その後は、さまざまな症状に悩む人たちをサポートするため、ポッドキャスト番組の配信や認知行動療法・弁証法的行動療法に役立つ製品の販売などの開始を予定しています。

「誰もが頼ることができる誠実で安全な、快適な場をつくることを目指しています」と、セレーナ・ゴメスは語っています。

セレーナ自身もこれまで、双極性障害と診断されたことや全身性エリテマトーデスなどの身体的な病気を要因とした不安障害やうつの症状に苦しんできました。そして、そのことを公表もしています。

セレーナのようなセレブリティがそうした苦しみをオープンに発信していることは、多くの人たちに刺激を与えているに違いありません。この「ワンダーマインド」の共同創設者であるダニエラもその一人であり、「セレーナの勇敢さが、私が抱えている強迫性障害(OCD)と、それに伴う不安に立ち向かう気持ちを呼び起こしてくれた」と話しています。

セレーナの母マンディもまた、16歳くらいの頃から長い間、メンタルヘルスの問題に苦しんできた1人。Netflixのドラマ『13の理由』のエグゼクティブ・プロデューサーを務めるマンディは、シーズン2の撮影に入る直前に誤診と誤った薬を処方されていたこと、そして更年期が重なったことが原因で発作を起こしたり、ひどい不眠症に悩まされたりするようになっていたということ。

その後、トラウマと注意欠陥・多動性障害(ADHD)と診断されたマンディは、「ワンダーマインド」を立ち上げようと考えた理由のひとつについて、「20代の頃、助けを求めるのがどれほど難しかったかを覚えている」と述べています。

ダニエラはこの新たなビジネスについて、「治療の代わりになるものを提供したいわけではありません」と強調しています。そして、「すべての人に、身体の健康のために気を遣うのと同じように、心の健康の促進にも取り組んでほしいのです」と説明しています。起業の主な理由は、「『メンタルヘルスに問題を持つことが不名誉のしるし』とされる状況と戦うこと」ということ。

そしてセレーナは、「ひとりではないということを忘れないこと、それがとても重要です。ユーザーたち(それぞれ)に関心をもってもらい、話を聴いてもらい、自分の感情が妥当なものであると理解するためのコミュニティーをつくりたかったのです」と語ります。

Source / Harper’s BAZAAR
※この翻訳は抄訳です。
※データや研究結果はすべてオリジナル記事からの引用です。

From: Harper's BAZAAR JP