Esquire編集部(以下、編集部):プライベートにおいて、一番楽しいと思えることはありますか? 

キリアン・マーフィー(以下、マーフィー):私が楽しいと思えることは唯一、エクササイズとしてのランニングですね。以前は1万メートルレースやハーフ・マラソンに出場していましたが、今は頭をクリアにするためだけに走っています。 


編集部:あなたのランニングにおけるTIPSを教えてください。 

マーフィー:まず、ランニングを楽しむことを学ぶ必要があると私は思います。私は音楽を聴きながら走ることはありませんが、それは頭をクリアにしなくてはならないと思っているからです。相棒は犬、いつも一緒に走っていますよ。  


編集部:かつてミュージシャンを目指していたことを小耳に挟みました。  

マーフィー:私は、一度挫折したミュージシャンと言えますね。私は役者の道に進む前は、音楽をやりたいとずっと思っていました。若い頃にはバンドを組んでいて、レコード会社から契約のオファーをもらったこともありました。もっとも酷い条件のオファーでしたし、私の弟はまだ16歳でしたので、結局、そのオファーは断りました。この件について、両親は「お前たちの人生を破滅させる可能性がある」と言っていましたね。 

編集部:無人島に持っていきたい(音楽)1枚は?  

マーフィー:私には答えられません、その質問は難しすぎます! 最近、私はコークであった音楽フェスティバルで共同キュレーターを務めました。このフェスには、ザ・ナショナルやボン・アイバーが出演していました。私は彼らのことが大好きです。 
 

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編集部:キリアンにとって理想的な休暇とは?  

マーフィー:私にとって理想的な休暇とは、家内や子供たちと一緒にウエスト・コークで過ごすという時間です。アイルランドの西海岸であれば、どこにいってもハズレはありません。美しいビーチや素晴らしい酒場もあり、そして、とても素晴らしい人々がいるからです。ニューヨークはおそらく、私の好きな都市です。ですが、それでも休暇で行くことはないでしょう。  


編集部:俳優を演じる上での休暇の取りかたとは? 

マーフィー:ある役を演じた後には、深い圧縮期間とでもいうべき時間をとります。休みをとることは大事だと思います。4カ月もトミー(トミー・シェルビー、BBCのテレビドラマ『ピーキー・ブラインダーズ』の登場人物)役を演じていると、あの役にどっぷり浸かってしまい、自分というものが消えてしまうのです。そんな役を演じた後で、いきなり別の仕事をこなすということは難しいことでしょう。役者というのは大変な仕事であり、また、そうであるはずです。だから、私は愚痴をこぼす役者が嫌いです。  


編集部:最新作『ダンケルク』では英国軍人役を熱演していましたね。  

マーフィー:『ダンケルク』の撮影はびっくりするような経験でした。マーク・ライランスは実に愛すべき男です。彼はゴージャスなエネルギーと存在感の持ち主で、同時に最高の役者であることはいうまでもありません。彼は現在もっとも優れた俳優だと思います。  


編集部:普段、どのような服を好まれていますか?

マーフィー:私は作りの良い、シルエットのきれいな洋服を着るのが好きですが、けっして熱心なファッション・マニアではありません。自分が好きなものは手に入れるでしょうが、それで自己主張することはありません。私にとってファッションアイテムは、何年も着た後、自分自身がその服に刷り込まれてこそ、初めて自分の一部になります。私はジャケットでもブーツでもなんでも、イヤになるほど何度も身につける人間です。私は自然に着古されたものが大好きなのです。特に体格が良いわけではないので、ドラマ『ピーキー・ブラインダーズ』の最初の頃には、トミーを人から一目置かれる人間、権威と能力をもった人間であるように見せることに専念していました。あの髪型もそんな工夫のひとつでした。もちろん、ギャング映画の名作と呼ばれるものはすべて観ています。しかし、『ピーキー・ブラインダーズ』は、とても英国的な話ですから、我々には米国のギャング映画を真似するつもりなど毛頭ありませんでした。 
 

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編集部:人生でいちばん良い年齢は何歳くらいだと思いますか?  

マーフィー:誰でもその時が、いちばんいい年齢だと思います。みんなそう言うのではないでしょうか。私は中年になった自分が本当に好きです。40歳を迎えたときにもパニックになったりはしませんでしたし、21歳の頃に比べると今のほうがはるかに多くの常識をわきまえています。  


編集部:若い頃に先輩役者から得たものなどありましたか?  

マーフィー:私が若い頃、役者として劇場の舞台に立ちはじめた当時の話ですが、ある晩、楽屋で私が脱いだ衣装を椅子の上に置くのを見た先輩俳優が、「衣装は壁に掛けておくものだ。衣装はかならず壁にかけるんだ」とつぶやいていました。私に向けたアドバイスというわけではありませんでしたが、それ以来、私はあの言葉を忘れたことはありません。舞台に立つのは確かに自分たちですが、その影では実に多くの人たちが働いている。いろいろな立場で作品作りに参加している。そんな裏方の人たちも、舞台の上を歩き回る役者たちと同じくらい重要ですから…。 


編集部:本を良く読まれるとのことですが、今ハマっている本はありますか?  

マーフィー:本はたくさん読みますが、ただし小説以外のものは読みません。いまは、ジョン・バンビルが書いた『ミセス・オズモンド』を読んでいるところです。この作品はヘンリー・ジェームスの『ある婦人の肖像』の続編にあたるもので、実に素晴らしい。バンビルにヘンリー・ジェームスが乗り移ったかのようで、とても面白い作品ですよ。私はずっと“偉大な米国の小説”が大好きです。最近では、ジョン・アップダイクの『走れウサギ』シリーズをいっきに読破しました。アップダイクは類いまれな物書きです。彼の作品を読むと、いまみんながテレビでやろうとしていることを、彼が何十年も前にやっていたことがわかります。あの作品の読者は「ウサギ」というあの主人公と一緒に、20歳前後から65歳頃までいろんな経験をします。そして、それは頭がおかしくなるほど面白いものです。

 今回、あらゆる質問に答えてくれたアイルランドを代表する俳優のキリアン・マーフィー。そんな彼のこれまでのキャリアが、一目で分かる画像を集めてみましたので、ご注目ください!

キリアン・マーフィー作品集

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©2017 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. ALL RIGHTS RESERVED.

 オスカーノミネート候補作として高い評価を得ている、『ダンケルク』(2017年7月全米公開)に出演したキリアン・マーフィー。 

 役名こそありませんでしたが、「海」でのシーンの注目キャラクターである英国軍人を熱演しました。やっとの思いで戦場「ダンケルク」から海に逃げたばかりだったのに、ドーソン船長(マーク・ライランス)に救出され、また再び「ダンケルク」に向かうことになってしまいます。 

 静かなキャラクターと思いきや、怒るときにはしっかりと声を荒げる演技に、驚いた皆さんもきっと多いはずです。

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©AFLO

 「ダークナイト」シリーズ3部作の1作目『バットマン ビギンズ』(2005年公開)で、悪役スケアクロウことジョナサン・クレインを演じたキリアン・マーフィー。 

 
 常にスーツとシャープなメガネを着用しているクレインの職業は精神科医。レンズの奥に輝くエメラルドグリーンの眼球がどこか不気味なのです。 

 クレインはマフィアと繋がっていることもあり、スケアクロウに変貌してバットマンと対峙し続けます。スケアクロウは特殊ガスを使った攻撃を用いながら、バットマンを防護と幻覚による恐怖心を煽ったのでした。 

 『バットマン ビギンズ』で敗戦するスケアクロウですが、実は3部作すべて出演しており、各作品で彼の姿を目にすることができるのです。

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©AFLO

 巨匠ロン・ハワードが手がけた『白鯨との闘い』(2015年公開)では、航海士マシュー・ジョイ役を演じたキリアン・マーフィー。 

 主人公オーウェン・チェイス(クリス・ヘムズワース)が信頼する右腕として、仲間たちと航海するのでありました。荒波、そして大雨などを経験した彼らの目の前にある一匹の白鯨が現れることで、彼らの運命が変わりつつあるのでした。 

 本作では、魅力溢れるキリアンのスタイリングに注目してみてください。きっと、参考にしてみたくなるでしょう。

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©Rook Films Freefire Ltd/The British Film Institute/Channel Four Television Corporation 2016

 これまでご紹介した『ダンケルク』、『バットマン ビギンズ』、『白鯨との闘い』は大作映画として知られていますが、キリアンは大作映画以外でも活躍していることを皆さんご存じでしょうか? 

 今春に公開された『フリー・ファイヤー』(2017年4月公開)はギャング映画であり、本作でキリアンはクールなギャングを演じています。ブリー・ラーソンやアーミー・ハマーなど人気俳優たちとともに敵組織に銃を向ける仕草はとてもクールです。 

 ヒゲ姿が似合うチョイ悪なキリアンの姿が気になる方に、オススメしたい作品です。

From ESQUIRE UK 原文(English)
Translation / Hayashi Sakawa
※この翻訳は抄訳です。