映画『ラブ・アクチュアリー』(2003年公開)を象徴する曲は、間違いなくマライア・キャリーが歌う「恋人たちのクリスマス(All I Want For Christmas Is You)」でしょう。作中でジョアンナを演じるオリビア・オルソンが、見事にこの曲を歌い上げる名シーンがあります。

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Mariah Carey - All I Want For Christmas Is You (Official Video)
Mariah Carey - All I Want For Christmas Is You (Official Video) thumnail
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 主人公にスポットを当て、それを取り巻く人々という見方で脇役を設定する通常のスタイルではなく、登場人物一人一人にスポットを当てて集団が巻き起こす群像劇として描く、いわゆる「グランド・ホテル方式(1932年公開のアメリカ映画『グランド・ホテル』に由来)」で製作された同作品ですが、そのうちの一人として、ヘロイン中毒から立ち直った中年ロックスターのビリー・マック(ビル・ナイ)が登場します。

 そんな彼が復活を目指すために歌う、過去のヒット曲の歌詞を変えてクリスマス・ソングに仕立てた「Christmas Is All Around」も、印象的な一曲と言っていいでしょう。映画では「クリスマスまで2週間」に入り、「この楽曲がクリスマス・ソングで1位になったら、裸で歌うよ」と豪語します。やがて思わぬカタチでこの曲はヒットし、見事1位を獲得。そこでビリーが約束を果たした結果はいかに? ぜひそれは、映画をご覧になって確かめてください!

 話を実世界へと戻しますと、やはりビリーの歌う「Christmas Is All Around」よりも、マライア・キャリーの「All I Want For Christmas Is You(恋人たちのクリスマス)」のほうが、クリスマス・ソングとしては不動の地位を獲得しています。もちろんワム!の「Last Christmas(ラスト・クリスマス)」もアリですし、ジョン・レノン & ヨーコ・オノの「Happy Christmas(ハッピー・クリスマス)」も…。山下達郎や松任谷由実、その他だって…。それぞれ皆さんなりの不動のクリスマス・ソングがあると思いますが、ここではマライアにさせていただきます。

 そしてこのコロナ禍、人気急上昇中の歌手デュア・リパで言えば、2020年のクリスマス・ソングには「Christmas Is All Around」のほうに軍配を上げました。一番上にある動画がそれで、米NBCのトーク番組「ザ・トゥナイト・ショー・スターリング・ジミー・ファロン」で放送されたひとコマになります。司会のジミー・ファロンとデュア・リパが、マーク(アンドリュー・リンカーン)がジュリエット(キーラ・ナイトレイ)に正直な想いを紙芝居で告白するというドラマチックなシーンを再現するというミニお芝居付きで放送されています。

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 そもそも「Christmas Is All Around」は、1994年公開の映画『フォー・ウェディング』(この作品でもヒュー・グランドが出演していますし、脚本家は同じリチャード・カーティスです。そのカーティスは、『ラブ・アクチュアリー』では監督も兼ねています)ですでに、メイン・テーマ曲として使用されたウェット・ウェット・ウェットの「Love Is All Around」(全英シングルチャートで14週連続1位と当時の記録を更新)のリメイク版です。

 タイトルを「Love」から「Christmas」に変更したことで、この曲はクリスマスの名曲として、公開から17年経った今でも歌われることになったいうわけです(できれば、デュア・リパだけで歌ってほしい…と思っている方も多いことでしょう)。

 では皆さん、そんなビリーが歌う「Christmas Is All Around」を聴くために…いや、それ以上に、さまざまな人たちの物語が交差しながら生きることの美しさに酔いしれるために、この映画『ラブ・アクチュアリー』をこのホリデーシーズンにぜひともご覧になっていください。そこで、「愛の数だけドラマがある」ということをきっと確認できるでしょう。

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Source / ESQUIRE ES