さまざまなクルマや悪役の隠れ家などが映る予告編からは、明確にその物語の展開を読み取ることができません。ですが最新の『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』は、往年のボンド映画の数々がつくり上げた歴史をリスペクトしながらも、自らもシリーズとして新たな一歩を踏み出す歴史的な作品になろうとしていることは予想できます。

ダニエル・クレイグは自らの物語の完全なる終わりを告げる初めての007となるだけではなく、シリーズとして初のアメリカ人監督キャリー・フクナガが起用された作品でもあるのです。そうしてフクナガは、『007 ワールド・イズ・ノット・イナフ』(1999年)以降の「007」シリーズの脚本を手がけていることで知られるニール・パーヴィスと共に、さらにフィービー・ウォーラー=ブリッジ、ロバート・ウェイドを加えた陣営により、共同で脚本を手がけました。

エンタメメディア「Digital Spy(デジタルスパイ)」のインタビューの中でフクナガは、初のアメリカ人監督であることについて、「光栄なことですが、失敗すれば自分が『007』シリーズで最初で最後のアメリカ人監督になってしまうかもしれませんね」とジョークを飛ばしながら、こう続けます。

「イギリスで映画をつくるのは初めてではなかったので、ここで働くことにカルチャーショックを受けることはありませんでした。ですが、自分が撮影現場で数少ないアメリカ人の一人だったのことは明らかでした」と語ります。

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映画『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』最新予告
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2018年3月、この25作目の「007」シリーズの監督に就任したのはダニー・ボイルでした。ですが同年8月には、「創作上の意見の相違」によって監督から降板。それに代わって監督に起用されたのがキャリー・フクナガでした。しかし裏方の才能あるスタッフたちの何人かは、引き続き製作チームに残ったと言います。とは言えフクナガは、『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』のストーリーについては「全くゼロからスタートした」と語っています。

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本作でジェームズ・ボンド役を降板するダニエル・クレイグと、新ボンドガール役を演じるアナ・デ・アルマス。

『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』に関して驚くべきことは、複数の予告編が公開されながら2年近くに及ぶ公開延期があったにもかかわらず、私たちはいまだにこの作品の全貌をつかめていないということでしょう。フクナガは公開日が近づく現在においても、この状況を変えることは望んでいないようです。とは言え、いくつかのヒントを提供してくれました。

「セットデザインや世界観については、往年のボンド映画から多くの着想を得ていて、使用しているクルマや一部のアクションのスタイル、キャラクター、言い回しなどは過去のボンド映画を彷彿(ほうふつ)とさせる演出をしています」とフクナガは説明するも、「私たちがボンド映画をつくっていく中で、このシリーズの世界観を壊そうと思った瞬間など一度もありませんでした。この最新作は、これまでの一連の作品が構築してきたシリーズの歴史を染みこませた…そう、シリーズの一員なることを意識した作品と言えます」と語っています。

また、フクナガは「変化の多い時代において、登場するキャラクターたちを現代に適合させるためには、多くの難しい局面もありました…」とし、「中でもキャラクターを描く上で最も難しかったのは、寡黙なボンドに何を言わせるかという点でした。彼のセリフを書くのは、とても難しかったです」と語っています。フクナガとクレイグは、ボンドのキャラクターについてしばしば長々と議論したと言います。そして、「現代において、彼のような男は発するセリフを考えることはほとんど不可能なことだね」、といったやりとりもあったそうです。

「その理由の1つには、他の多くのキャラクターは映画の中で、ボンドを模倣(もほう)したとしても、最後にはそれをジョークとして笑いにすることもできるのです。ですがボンド自身となると、その“ボンドらしさ”に対して、より真摯に取り組んでいかなければならないのですから…」と、フクナガは話します。

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フクナガが「007」シリーズに何をもたらしたかは、間もなくわかることでしょう。とは言え、私たちが公開を待っていたこの2年間、フクナガは手をこまねいて待っていたわけではありませんでした。この作品の秘密を守りながら、次なるプロジェクトに邁進していたのです。

『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』について、すでに数多くのファンの仮説やプロットに関する憶測が出ていた中、フクナガ自身はこれらにほとんど関心を持たなかったと言います。

「本作は、秘密主義の点ではかなり厳格でした。実際、映画の中には、本当に面白いネタがいくつも転がっていますよ。それを感じたのか、実際ファンたちがオンライン上でさまざまな憶測を発していましたね。でも私自身、それに関してそれほど追求もしていませんでした」と言います。そして、「公開を待っている間、私も他のプロジェクトに進めなくてはならなかったですし、手を組んで親指を回しながら大人しく待っている時間なんてありませんでした。新たなプロジェクトが複数進行していたので…」と、フクナガは締めくくっています。

そんな『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』は2021年10月1日から、いよいよ日本での劇場公開がスタートします。

Source /Digital Spy
Translation / Wataru Nakamura
※この翻訳は抄訳です