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ダニエル・クレイグ、最長期間のボンド俳優に ― クレイグ版ボンドの名シーンを振り返る

『007 カジノ・ロワイヤル』から4528日、クレイグ版ボンドは3代目ボンド、ロジャー・ムーアがボンドだった期間を超えました。

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ジェームズ・ボンド
EON/MGM

 2019年4月中旬、ダニエル・クレイグは3代目ロジャー・ムーアを抜いて、ボンド役を演じた期間の歴代最長記録を打ち立てました。クレイグ版ボンド1作目『007 カジノ・ロワイヤル』が公開された2006年11月16日、彼が英諜報機関MI6から新たにライセンスを受けとったところからスタートし、4528日が過ぎたわけです。 
 
 クレイグ版ボンドは、これまでの歴代ボンドを超える映画の「ジャガーノート(巨大な力)」となりました。「フォーブス」誌によると、クレイグがボンドを演じた4作の合計興行収入は35億ドル(約3920億円)超で、ピアース・ブロスナン、ティモシー・ダルトン、ロジャー・ムーアが演じた7作の合計額に匹敵します。 
 
 しかし、もっと重要なことは、彼はこの冷戦時代の産物であった「007」シリーズを、ここで新たに、スリルあるアクションたっぷりの作品にしたことなのです。そしてボンド役は完全に若返り、国家や自己認識にもまだ反発心があるような、複雑な内面を持つ人物となりました。またその一方、容赦なく相手を叩きのめし、アルプスのヘアピンカーブでスーパーカーを爆走させる時として荒ぶる男となったわけです。 
 
 それでは、そんなクレイグ版ボンドの名シーン ベスト5をご紹介いたします。

『007カジノ・ロワイヤル』― 残忍な階段での格闘シーン

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Casino Royale (2006) Scene: Stairwell Assault.
Casino Royale (2006) Scene: Stairwell Assault. thumnail
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 『007カジノ・ロワイヤル』では、オープニングのモノクロシーンから、このボンドは「パラグライダーでロケットカーに飛び降りるようなことはしなさそうだ」ということを察し、感情剥き出しで人を殴るシーンでは、このシリーズ史上初めてリアルに恐怖心を感じさせるアティチュードを生み出しました。
 
 本作のボンドガールであるヴェスパーから見ると、このボンドはスキーでの逃走劇中にバック転をしたりするような男ではなく、残忍な行為もいとわない、死人の目をした殺し屋なわけです。

 クレイグ版ボンドが向き合うことになるスパイという任務と、自分が壊したものとの間で揺れる内なる葛藤は、ここから始まります。

『007 カジノ・ロワイヤル』― 「名前はボンド、ジェームズ・ボンドだ」

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The name is Bond James Bond - Casino Royale
The name is Bond James Bond - Casino Royale thumnail
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 今となっては『007 カジノ・ロワイヤル』は非常に現実的で、
「これまでのボンドに必要なことだったは、これだったのだ」と当然のように思えることでしょう。そうです、必要だったのは、同じく人気スパイ映画である『ジェイソン・ボーン』のようなリアル感です。 
 
 しかし、シリーズが新たな始まりを迎えた当初、展開をどれほど予想できたか思い出してみてください。クレイグがあのセリフを口にするまで、ずいぶん待たなくてはなりませんでした。

 最後の最後、Mr.ホワイト(イェスパー・クリステンセン)の足を撃ったクレイグが、ライフルを構えながら見下ろすシーンになってやっと、その言葉を放ったわけです。

『007スカイフォール』― 親愛なる神よ、アストンマーティンはお助けください...

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Skyfall climax scene hd 1080p
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 『007 スカイフォール』に登場する悪役ラウル・シルヴァ(ハビエル・バルデム)は、スコットランドにあるボンドの生家「スカイフォール」へとボンドを追ってきます。

 ヘリコプターから家を目がけて機銃掃射し、ボンドのアストンマーティン「DB5」を爆破して喜ぶシルヴァ。ボンドカーを爆破したときのシルヴァの顔には、制御不能な怒りと復讐心が刻まれています。 
 
 「シルヴァよ、そこまですることはないだろう…」と、誰もがそう思ったことでしょう。観る側にとっては、そのアストンマーティンには、約40年に渡り受け継がれてきた愛着があるのですから…。

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『007スカイフォール』― チャペルでのMの死

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Silva’s and M’s death
Silva’s and M’s death thumnail
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 スカイフォールのチャペルでボンドは、シルヴァの攻撃で傷を負ったM(ジュディ・デンチ)を抱きかかえ、キンケイド(アルバート・フィニ―)がそれを悲しそうに見守っています。

 Mが「逃げるにはもう遅いわ」とつぶやいたとき、クレイグの顔に浮かんだ表情は、孤児だったボンドの子ども時代やMとの複雑な関係など、これまでのボンドの生き様のほぼすべてが自然に映し出された…ように観えた方は多かったことでしょう。
 
 そこでボンドは、自身のメンターであるとともに、実の母を失って以来、母親のように最も近い存在だった人「M」を失おうとしていることを理解したわけです。そして、心の温もりと痛みと親しみをできる限り抑えてこう言うのです。

 「あなたが望むなら、私はやる」と…。そしてMが息絶えると、彼はパニックとショックに包まれるのですが、その様子は美しく表現されていました…。

『007 スペクター』― 心理テスト

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Spectre 2015 | Interview Scene super Scene - Best Movie Scene
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 ありがたいことに、近ごろのボンドは、難しい名言などはあまり使いません。が、クレイグは実に皮肉に満ちたウィットに長けています。

 ボンドは半ば定期的のように復帰のための心理テストを受けるのですが、その一つが『007 スペクター』でのシーンであり、もう一つが『007 スカイフォール』での連想ゲームのシーンになります。そして、このシーンにはドライなウィット(「仕事はストレスが多いですか?」と問われ、「ときどき」と答える)と内からにじみ出る防衛本能が織り交ぜられているのです。 
 
 本作のボンドガールであるマドレーヌ・スワン(レア・セドゥ)に対し、両親の死後「誰かから」育てられたと告げた後に、ボンドが喉から声を絞り出すシーンは、この後フランツ・オーベルハウザー(クリストフ・ヴァルツ)との関係に蹴りをつけることになる展開の伏線となっているわかですが、それだけではありません。彼の表層下では、複雑で抑圧された感情がほとばしっていることも感じさせてくれるのです。

 つまりダニエル・クレイグは、それだけの価値を持つボンドであるとです…。


From Esquire UK 
Translation / Keiko Tanaka 
※この翻訳は抄訳です。

ダニエル・クレイグ

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