daniel craig moonswatch
Omega//Getty Images

もはや、OMEGA X SWATCH「Speedmaster MOONSWATCH(スピードマスター ムーンスウォッチ)」の存在を知らない人はいないでしょう。これに対して、興味を示さない人もいないはず…。世界的時計メディア「HODINKEE」に言わせれば、「2014年のApple Watchのデビューを除けば、ムーンスウォッチは今世紀に入ってから時計業界が目にした最も注目度の高いリリースと言えるだろう」と称するほどであり、そのファーストルックを紹介した2022年3月24日公開の同メディアの記事では、このメディア14年の歴史の中で既に(2022年12月13日の時点で)2番目に多く閲覧された記事になっていたということ。

ムーンスウォッチとは?

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ダニエル・クレイグの話の前に、「ムーンスウォッチとは何か?」をおさらいしておきましょう。このプロジェクトは発売寸前とも言える2022年3月に、「ニューヨーク・タイムズ」紙の全面広告で「It's time to change your Swatch」、「It's time to change your Omega」というキャッチコピーを交互に掲げることによってヴェールは脱がされます。そして互いのSNSからも、それぞれの変革を讃え合うアンセムかのように発信されました。

そうして2022年3月26日(土)に晴れて「オメガ」と「スウォッチ」のコラボレーショ「スピードマスター ムーンスウォッチ」は発売(英国では218ポンド、アメリカでは260ドル、日本では3万3550円の価格)となり、ニューヨークのタイムズスクエアにあるスウォッチブティックの前には時計愛好家や好奇心旺盛な通行人たちが列をなし、ロンドンのカーナビーストリートでもニューヨークに勝るとも劣らない長蛇の列に。

もちろん日本も同様で、発売予定のスウォッチ原宿店、渋谷店、大阪店の3店舗には購入希望者が店舗付近に殺到することで混乱を来たし、全店舗で発売を延期することとなったことも記憶に新しいはず。その後3月29日に抽選販売となることが発表され、翌30日には抽選終了。その後も通常は品切れ状態が続いているようですが、入荷次第販売しています。

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オメガ×スウォッチの共同ミッションである、「BIOCERAMIC MOONSWATCHコレクション」の全モデルで11種類がラインナップされています。それぞれ宇宙からインスピレーションを得て、それぞれのモデルは惑星や月などにちなんで名づけられています。1段左から「Mission to the Sun」、「Mission to Mercury」、「Mission to Venus」、2段目左から「Mission on Earth」、「Mission to the Moon」、「Mission to Mars」、3段目左から「Mission to Jupiter」、「Mission to Saturn」、「Mission to Uranus」、4段目左から「Mission to Neptune」、「Mission to Pluto」。

そのデザインを改めて確認すると、ベースはオメガ「スピードマスター ムーンウォッチ」であり、そこにスウォッチのDNAを流し込んだ腕時計と言えます。最大の特徴はオメガ「スピードマスター ムーンウォッチ」のステンレススティール製ケースの代わりに、スウォッチだけのイノベイティブなオリジナル素材(ヒマシ油を原料にしたバイオソースマテリアルにセラミックを組み合わせたハイブリッド構成で仕上げた)「BIOCERAMIC(バイオセラミック)」が採用されているところ。

また、「太陽」と地球の衛星である「月」を含め、太陽系をなす9つの「惑星」からなる計11種が遊び心豊かにラインナップされ、非対称的なケースと「ドットオーバー90」と名を馳せるタキメーターの目盛、そして独特のSpeedmasterのサブダイアルといったOmega Speedmaster Moonwatchのキーとなるデザイン要素をコラボさせた魅力あふれるタイムピースとなっています。

もちろん、すべての文字盤にはOMEGA X SWATCHの文字、アイコニックなSpeedmasterのロゴ、そして新しいMoonSwatchのロゴが。さらに隠れた魅力も多数…。これ以上は、手に取った人だけの秘密にしておきましょう(笑)。とにかく、この時計の登場は世界を震撼させました。


いつもはオメガ「シーマスター」の
ダニエル・クレイグが
なぜこの日、
「ムーンスウォッチ」だったのか?

これだけ話題をさらった時計ですが、いまだにこの「ムーンスウォッチ」に否定的な見方をしている人も少なからずいることでしょう。それは…時計というアイテムに対して、シリアスさ&ストイックさを追求する人々です。

そのような人は、例えば「アカデミー賞授賞式の場で、華やかな俳優に賞を贈るといった大役を演じる際に着る誂えたタキシードに釣り合う腕時計ではないのでは?」と、ささやくに違いありません。

しかしながら大丈夫、問題ありません。ダニエル・クレイグがその疑問に対してポジティブな解答をくれました。

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ようやく本題です。去る2023年1月8日…日曜の夜、ニューヨークで開催された2023年度米国映画批評会議賞(NCR=National Board of Review Awards)のきらびやかなステージ上にプレゼンターとして登場したダニエル・クレイグ。自身が主役を演じる映画『ナイブス・アウト:グラス・オニオン』で、カサンドラ・“アンディ”・ブランドとヘレン・ブランドという双子の姉妹を1人2役で見事に演じたジャネール・モネイが助演女優賞を獲得した際に、クレイグは檀上に上がり祝福しました。そのときの彼の腕元には、いつもの時計とは違って「ムーンスウォッチ」が輝きを放っていたのです。

「Ugh. Oh, if I ever meet Jared Leto, I'm gonna whoop his kombucha-brewing ass.(う~ん、もう、ジャレッド・レトの野郎を見かけたら“コンブチャ”まみれのヤツのお尻をぶっ飛ばしてやる」…なんていう救いようのないセリフもアンディはぶちまける本作ですが、Netflixで史上3番目の大ヒットとなっている傑作でもあります。ちなみに劇中、ジャレッド・レトが愛飲する“コンブチャ”の話がギャグのひとつとして登場し、話の展開にひと役買っています。もちろん、架空に飲み物です。

そして、このセリフを聞いているのがクレイグ扮する主役の探偵ブノワ・ブラン。このキャラクターは、彼のキャリアの中で2番目に印象的な存在と言えるでしょう。

これはxの内容です。詳細はそちらでご確認いただけます。

話をNCRに戻せば、ステージに上ったモネイは「うっそー! ジェームズ・ボンドがここにいる!」と冗談交じりに大喜び。クレイグに勝るとも劣らず、ジャネール・モネイの魅力もたまりません。これに異論を挟む人などいないでしょう。ですが、それにも増して気になったのが、クレイグの手首に巻かれていた腕時計が同じオメガのロゴを配しながらも「シーマスター」ではなかったことです。

ダニエル・クレイグと言えば、「オメガ」のアンバサダーとしても世界的に知られています。クレイグがこれまで演じてきたジェームズ・ボンドの腕には、必ずオメガ「シーマスター」が輝きを放っていました。そしてまた、『ナイブス・アウト:グラス・オニオン』の主役であるブノワ・ブランの腕には、クラシカルで端正なデザインのシ⁠ーマスタ⁠ー 1948 マスタ⁠ー クロノメ⁠ータ⁠ーが巻かれていたのです。

ところがこの日のクレイグの左の腕元には、いつもとは違ったニュアンスの輝きを放っていたのです。それの光源に存在するのが、オメガ×スウォッチ「スピードマスター ムーンスウォッチ」。しかも、それは月でも地球でもなく、海王星へのミッションを選んでいたのです。クレイグはそこに、どんなメッセージを込めていたのでしょう?

クレイグの星座と関係がある?
それともクレイグの
あのブルーの瞳と関係が?

そこには、占星術にヒントが隠されているのかもしれません。海王星(ネプチューン)は太陽系における第8惑星ではありますが、西洋占星術での数霊(かずたま)は「7」ということ。「7という数字のもとに生まれたすべての人」を象徴するとも言われています。この説には、勝手ながら納得してしまう人も少なくないでしょう。クレイグと「7」は無関係ではありません(言わずもがな、元007ですから)。

またクレイグの誕生日は3月2日で、星座はうお座です。そして、うお座の守護星は海王星だから…と考えることもできます。が、これらは勝手なこじつけの深読みに過ぎないでしょう。ダニエルのプロフィールにこれまで「リバプールFCの熱烈なサポーター」という項目は何度か見かけていても、「趣味は西洋占星術のファン」などの文字は一度も見たことはありませんから…。

名探偵ブランの名言どおり、「Physical evidence can tell a clear story with a forked tongue(物的証拠は二枚舌で物事を語ることができる)」なのです。そしてここは、映画『コンタクト』(1997年公開)の出てきた14世紀に哲学者の思考原理「オッカムの剃刀」に頼るのがいいかもしれません。それは、「ある事柄を説明するためには、必要以上に多くを仮定するべきでない」とするものです。

つまり、これは単に「クレイグは着用したい時計を着用しただけ」ではなかったのでしょうか。そして、例えば自身のブルーアイズに呼応する氷のようにクールなディープブルーに輝く手持ちの「Mission to Neptune」を着用し、ジャストサイズにフィットしたスーツスタイルに遊び心を加えるチャレンジをしただけではないでしょうか?

ちなみにクレイグ自身、オフにはオメガの「スピードマスター プロフェッショナル」を愛用しているそうですし…。シリアスからコメディも演じるキャリアの幅の広さも、ここで訴えたのかもしれません。…と言え、真実のほどはわかりません。すべてが勝手な推論であることをご了承ください。

なにはともあれ、この「ムーンスウォッチ」はスーツスタイルもクールかつモダンに演出してくれることは理解できたはずです。

Source / Esquire UK
Translation / Kazuki Kimura
※この翻訳は抄訳です。