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多くの気づきを与えてくれる、LGBTQ+の人々を描いた名作映画25本
ジェンダーやセクシュアリティの多様性を祝福し、LGBTQ+の権利尊重を訴える6月…通称「Pride Month(プライド月間)」を機に、愛あふれるコメディから実話をもとにした人間ドラマ、そしてドキュメンタリーまでおすすめ作品をまとめました。
私たちを夢中にさせ、学びや肩を押してくれる映画。時には笑い、時には涙し、言葉にならないほどエモーショナルになることもあります。ですが何よりも重要なのは、例えるなら「これまで伝えられてこなかったLGBTQ+の物語を世に知らしめる」といったように、これまで世間で無視されてきた声や体験を世界中の人たちへ映画という媒介を通して届けることができる力を持っていることではないでしょうか。
そこで、映画『プリシラ』(1994年)のように革新的な名作から、カルトな人気を誇る現代の傑作『君の名前で僕を呼んで』(2017年)まで、さまざまな角度からLGBTQ+にスポットを当てた作品をご紹介します。
『The World To Come(原題)』(2020年)
ジム・シェパードによる同名小説が原作の『The World To Come』は、19世紀を舞台にした禁断の愛の物語。人気作『ブロークバック・マウンテン』(後述)のように、隣人である2組の夫婦に焦点を当てています。
出演はヴァネッサ・カービー、キャサリン・ウォーターストン、クリストファー・アボット、ケイシー・アフレックなど。世間から離れた田舎暮らしをおくる中で、ヴァネッサ演じるタリーとキャサリン演じるアビゲイルは恋に落ちます。
2020年のベネチア国際映画祭でプレミア上映され、LGBTQをテーマにした映画の最高賞となるクィア獅子賞を受賞しており、日本公開が待たれています。
『トランスジェンダーとハリウッド: 過去、現在、そして』(2020年)
ハリウッドで大活躍中のラヴァーン・コックスをはじめ、トランスジェンダーの俳優や映画関係者、歴史家などに話を聞くドキュメンタリー映画です。
TV&映画業界においてトランスコミュニティがどう描かれてきたか、そして、彼らの物語がアメリカ文化や個人にどんな影響を与えているかを掘り下げ、解説しています。
『フランクおじさん』(2020年)
1970年代を舞台に、地元を離れNYに移ったティーンエイジャーのベス(ソフィア・リリス)。彼女は、叔父フランク(ポール・ベタニー)と再会するも、実は彼はゲイで、パートナーのウォーリー(ピーター・マクディシ)と暮らしていたのです。
そこへフランクの父が亡くなったという知らせが入り、ベスを連れて実家に戻った彼でしたが、過去と向き合うことになり…。
スティーブ・ザーンやジュディ・グリアなど、脇を固めるキャストも魅力的です。
『Love, サイモン 17歳の告白』(2018年)
多くの映画は、クィア(L、G、B、Tのカテゴリーには当てはまらない、性的指向や性自認が非典型な方全般)の物語を伝える際に、異性愛者の役者を起用して批判を浴びてきました。ですが、主要スタジオが初めて手がけたこのティーン・ゲイ・ロマンスでは、クィア俳優のキーナン・ロンズデールが主要キャラクターに抜擢され、ゲイを公表しているグレッグ・バーランティが監督を務めています。
ベッキー・アルバータリの小説『サイモンvs人類平等化計画』がベースとなっており、ゲイであることを隠している17歳の少年サイモンが主人公の物語です。
例え温かい家庭であっても、カミングアウトをすることは簡単なことではない…「人生をガラリと変えかねない」ということを描いています。
『アレックス・ストレンジラブ』(2018年)
すべてを手にしているように見える高校生アレックス・トゥルーラブが主人公の、Netflixオリジナル映画。学級委員長であり、成績優秀で、素敵な彼女もいるアレックス。ですが、公にカミングアウトしているオープンリーゲイのエリオットと知り合ったことで、彼の世界は一変していきます。
「自分はいったい誰と初体験をしたいのか?」など、悩み多き思春期のセクシュアリティや自己の追求を、チャーミングかつ正直に伝えています。
『君の名前で僕を呼んで』(2017年)
名だたる映画祭や映画賞で注目を集め、主演のティモシー・シャラメも世界的センセーションを巻き起こした『君の名前で僕を呼んで(原題:Call Me By Your Name)』。
アンドレ・アシマンによる同名小説が原作で、ティモシーはイタリアで夏休みを過ごす10代の少年エリオを、大学院生オリヴァーをアーミー・ハマーがそれぞれ演じています。
オリヴァーは、大学教授であるエリオの父の助手を務めるためにひと夏の間、エリオの家族と一緒に暮らすことになります。
初めは少し距離のあるエリオとオリヴァーでしたが、次第に惹かれ合うように…。しかし、オリヴァーが去る日は迫っており、そんな中で新たに気づいたセクシュアリティに折り合いをつけようとするのでした…。
『ブルックリンの片隅で』(2017年)
監督のイライザ・ヒットマンが、サンダンス映画祭で米国ドラマ映画部門の最優秀監督賞を受賞した心に訴える1本です。
家庭から逃げるように不良の友人たちとつるみ、ガールフレンドをつくりながらも、オンラインでゲイの中年男性と交流することでバランスをとっている青年フランキー(ハリス・ディキンソン)の物語。
決して明るい話ではないものの、“男らしさ”について生々しくエモーショナルに描き、性的指向や性同一性を公表しない「クローゼット」についても描いています。
『ゴッズ・オウン・カントリー』(2017年)
ルーマニア移民とヨークシャーの農民の愛を描く、イギリス映画『ゴッズ・オウン・カントリー』。ヨークシャーの農場を管理するジョニー(ジョシュ・オコナー)は、毎晩の酒と行きずりのセックスで孤独を紛らせていましたが、移民労働者のゲオルゲ(アレック・セカレアヌ)が農場にやって来たことで人生が一変します。
単なるカミングアウト・ストーリーではなく、孤独や外国人ヘイトの問題にもフォーカスしており、2人の男性が保守的な“男らしさ”について悩み、迷う姿が随所に散りばめられています。
『ナチュラルウーマン』(2017年)
ゴールデン・グローブ賞にノミネートされ、アカデミー賞外国語映画賞を受賞したチリ発映画『ナチュラルウーマン』。年上のパートナーを亡くしたことで訪れるいくつもの困難に、強く立ち向かうトランス女性マリーナ(ダニエラ・ベガ)を追っています。
トランスジェンダーであることが理由で、パートナーの葬儀にも来るなと言われ、彼とシェアしていたアパートからも追い出されてしまいますが、マリーナはそんなトランスフォビアな彼の家族と元妻に立ち向かっていきます。
目を伏せたくなる場面もあるものの、2018年に『タイム』誌の「最も影響力のある100人」に選ばれたダニエラの、痛烈で力強い演技には目を見張るものがあります。
『ムーンライト』(2016年)
原案は、戯曲『In Moonlight Black Boys Look Blue』(原題)。マイアミ育ちのアフリカ系アメリカ人シャロンの、幼少期から成人期までの自分探しの道と成長を描いています。
この壮大な新世代の映画は、アメリカでゲイの黒人男性として生きていくことの複雑さや、難しさを丁寧に描写しています。
アカデミー賞で8部門にノミネート、作品賞を含む3冠を達成するなど、この年最も話題にのぼった作品となりました。
『キャロル』(2015年)
ケイト・ブランシェットとルーニー・マーラが主演する『キャロル』は、同性愛が罪とされていた1950年代のNYを舞台に、女性2人の愛を描いた物語です。
ハリウッドのメジャースタジオがレズビアンの愛を真正面から描くのは稀なことでしたが、本作はその後のLGBTQ+映画の基準となり、特にケイトの素晴らしい演技で世界的に称賛を集めました。
百貨店で働きながらカメラマンを目指すテレーズ(ルーニー)はある日、愛のない結婚生活に苦しみ、離婚問題の渦中にいる女性客キャロル(ケイト)に強く惹かれていきます…。
『アイ・アム・マイケル』(2015年)
セクシャリティと信仰の狭間で揺れ動く、元同性愛者の活動家マイケル・グラッツェの人生を描いた、実話にもとづいた映画『アイ・アム・マイケル』。
ザカリー・クイント演じるボーイフレンドとゲイマガジンを発行し、LGBTの若者に性的アイデンティティを受け入れるようにアドバイスしていたマイケル(ジェームズ・フランコ)。しかし、疑念やパラノイア(妄想を始終持ち続ける精神病)に悩まされる中、信仰を再発見し、“本当の自分”を追い求めるべくゲイのライフスタイルを否定していくのでした…。
批評家からは賛否両論が寄せられましたが、複雑な問題を描くリスクと向き合っており、主演のジェームズ・フランコも素晴らしい演技を見せています。
『タンジェリン』(2015年)
演技経験のない2人のトランスジェンダー女性(マイア・テイラーとキタナ・キキ・ロドリゲス)を起用し、LAで働く2人のトランスジェンダー娼婦の生活を描く作品です。
ダークで下品、でもシャープな作風が非常に高い評価を得て、GLAADメディア賞の最優秀映画賞を受賞しています。
トランスジェンダーの生活やセックスワーカーの生々しい描写が印象的で、全編iPhoneで撮影されたことも大きな話題になりました。
『パレードへようこそ』(2014年)
この映画はゴールデン・グローブ賞にノミネートされ、英国アカデミー賞も受賞しています。
LGBTの活動家グループが、ウェールズにある小さな鉱山の町を訪れます。そして、社会に取り残された2つのコミュニティが互いに支え合うキャンペーン「LGSM(炭坑夫支援レズビアン&ゲイ会)を立ち上げ、困難を乗り越えて大成功を収めるまでをたどります。
ドミニク・ウェスト、イメルダ・スタウントン、アンドリュー・スコット、ビル・ナイら名優が共演しており、笑って泣けて心に残るハートウォーミングコメディです。
『アデル、ブルーは熱い色』(2013年)
カンヌ国際映画祭では最高賞パルムドールに輝き、英国アカデミー賞やゴールデン・グローブ賞にもノミネートされたフランス映画『アデル、ブルーは熱い色』。
主人公の高校生アデル(アデル・エグザルコプロス)は、エマ(レア・セドゥ)というブルーの髪の年上の美大生と出会い、そして恋に落ちます。アデルとレアが披露する傑出した演技のほか、この映画で最も魅力的なのは、ただの初恋ではなく破滅的で激変する、すべてを捧げるような愛の描写…。若い女性が自身のセクシュアリティを知る過程が、美しく描かれています。
『キッズ・オールライト』(2010年)
同性カップルの子育てを描き、高く評価されたファミリーコメディ。
アネット・ベニング演じるニックと、ジュリアン・ムーア演じるジュールスのレズビアンカップルは、匿名の精子提供を受けてそれぞれが子を出産。2人の子を授かりますが、成長した子ども2人は、自分たちの父親に会いたいと考えるようになります…。
レズビアンの関係を全面に出さず、あくまでも物語の要素のひとつとしたことで他の作品とも差別化された1本です。
『ミルク』(2008年)
公職に選出されたアメリカ初のオープンリーゲイとして知られるハーヴェイ・ミルクを、俳優のショーン・ペンが見事に演じ、アカデミー賞主演男優賞に輝いています。
ゲイのための活動から市会議員への当選から1978年の悲劇の暗殺まで、彼の革命的な人生に迫ります。
1970年代、サンフランシスコには大きなLGBTコミュニティがありましたが、カリフォルニア州の他の地域はまだまだそこに追いついていない状況でした。ホモフォビアが蔓延する中、ミルクはその壁を壊し、LGBTQ+コミュニティが権利を得るために尽力していく様子が描かれています。
『ブロークバック・マウンテン』(2005年)
LGBTQ+映画の代表作に数えられる1本。1960年代に出会ったイニス(ヒース・レジャー)とジャック(ジェイク・ギレンホール)という2人のカウボーイが、ひっそりと禁じられた愛を育む姿を描いています。
当時アメリカでは同性愛者であることを公言することが非常に難しいことであったものの、2人の愛に多くの人々の心が動かされ、ゴールデン・グローブ賞や英米アカデミー賞など数々の賞レースを席巻しました。
『ボーイズ・ドント・クライ』(1999年)
1990年代初頭、ネブラスカ州でトランスジェンダーの男性が殺害された実際の事件を描き、世界に衝撃を与えた『ボーイズ・ドント・クライ』。愛を見つけたことで命を奪われてしまった主人公ブランドン・ティーナを、ヒラリー・スワンクが演じています。
ブランドンはラナ(クロエ・セヴィニー)という女性と出会い恋に落ちますが、彼がトランスジェンダーであることを受け入れられない人たちもいて…。
本作でヒラリーはアカデミー賞主演女優賞を受賞し、クロエは助演女優賞にノミネートされています。
残酷な内容ではあるものの、トランスジェンダーの歴史における非常に重要な瞬間を描き、さらに米国のヘイトクライム法に対するロビー活動を増やすきっかけともなりました。