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Across Time|普遍の名品

スポーツウォッチとドレスウォッチのどちらを選ぶ? そんな論争には、そろそろ終止符を打とう。ひとまず今は、コンプリケーション(複雑機構)についての細かい議論は無視し、“正統性”にまつわる心配も忘れてほしい。そのかわりに、腕時計を新たな手法で捉えてみてはいかがだろうか。

今考えたいのは、その時計が「どの時間」、つまり、過去、現在、未来のいずれに属するのか、ということ。一本の腕時計が体現するその時代に従って、時計を味わい、鑑賞する−−このエレガントな手法を採用し、ここでは「完璧な過去」を感じさせる2本を紹介したい。


色あせないヘリテージを
さらに美しくモダナイズ

BVLGARI BVLGARI
ブルガリ・ブルガリ

a gold and black watch
時計“ブルガリ・ ブルガリ”[YG レザーストラップ ケース径38mm 自動巻き 5気圧防水]206万8000円(ブルガリ/ブルガリ ジャパン TEL 0120-030-142)ローマンコインにインスパイアされた「ブルガリ・ブルガリ」。数十年前の名作がさりげない進化を遂げ、発売された。

腕時計製造において、「過去」は現在に対して情報やインスピレーションを提供するだけの存在ではない。それは宝の山。アーカイブされた作品たちは気まぐれによみがえり、現代に生きる私たちを喜ばせる。

まさにドラッグ・アンド・ドロップの手軽さ。過去の名作を定期的に復刻するという、慣行的な流れがあるのはこのためだ。ただし、すべての復刻が等しく熱狂的に受け入れられるわけではない。実のところ時計業界は、何の興奮も抱かせないニュースリリースであふれている。

シンプルな表現を追求したのは、ブルガリの「ブルガリ・ブルガリ」だ。こちらは、38mmにサイズダウン。日付を表示する機能を取り入れたこともあり、1977年のオリジナルに近づいたようにも見える。特徴的なベゼルの彫りからミニマルな文字盤まで、外観の美しさは変わらない。

しかし、サイズに手を加えたことで全体のプロポーションはわずかに変化し、味わい深いヴィンテージの雰囲気が強まった。ブルガリは、ディテールに施した絶妙な調整により、その卓越した技を見せつけているのだ。

「ブルガリ・ブルガリ」は2つのモデルで展開。ひとつはピンクゴールドのケースにシルバーオパラインダイヤル、もうひとつはイエローゴールドのケースにクラシックなマットブラックダイヤルを合わせた。

公式サイト


ブランド誕生150周年をたたえ
時代をけん引した
名品へのオマージュ

PIAGET POLO 79 
ピアジェ ポロ 79

a gold watch with a black face
時計“ピアジェ ポロ 79”[YG ケース径38mm 5気圧防水 パワーリザーブ44h]1179万2000円[予定価格](ピアジェ/ピアジェ コンタクトセンター TEL 0120-73-1874)1979年に登場した「ピアジェ ポロ」の精神を受け継いだ堂々たる新モデル。

名作がひしめくこの領域で圧倒的な存在感を放つのは、ピアジェの「ポロ 79」だ。イヴ・ピアジェが乗馬に注ぐ愛を名前に込めたオリジナルの「ピアジェ ポロ」は、1979年に発売され、80年代を切り開く新時代の訪れとたたえられた。

全体をゴールドで仕上げ、過酷な環境に耐えるタフネスを備えた「ピアジェ ポロ」は、まさに先駆的タイムピース。こうした特徴から、スポーツシーンはもちろん、ナイトクラブでも違和感なくなじんだ。ピアジェの数ある時計のなかで、名作として揺るぎない存在であり続けるのにも納得だ。

新作「ピアジェ ポロ 79」では、オリジナルの特徴を取り入れながら、さらに純粋な表現を目指し、いくつかのアップデートを加えた。まずは、サイズを38mmにやや拡大。さらに、(オリジナルのクオーツではなく)自社製薄型自動巻きムーブメント「1200P1」を採用。

イエローゴールドの輝きに加え、ケースと文字盤、ブレスレットに施された特徴的なゴドロン装飾が一体感のある華やかさをもたらし、ひとつの金塊から彫り出されたかのような、特別な印象を与えてくれる。

公式サイト

[Staff]
Text / Jamie Tan
Translation / Chisato Yamashita

※『エスクァイア・ザ・ビッグ・ブラック・ブック』SPRING/ SUMMER 2024(2024年4月15日発売)より転載。掲載内容は発売日時点の情報です。価格の変更や売り切れの場合がありますので、最新情報については問い合わせ先よりご確認ください。