ロンドン・ファッション・ウィーク期間に本格的ライフスタイル・ショップを開店

王室にも愛されてきた英国ブランド「アニヤ・ハインドマーチ」が、ロンドンの閑静なエリア、チェルシーのスローンストリート沿いにカフェ、レザーアクセサリー、トラベルキットなど複数の店舗を集結させたのが2021年。「アニヤ・ヴィレッジ」と名づけられたこの一角に、2023年9月14日またひとつ仲間が加わりました。その名は「アニヤ・ライフ」。

preview for アニヤ・ハインドマーチのアニヤ ヴィレッジ

アニヤ・ライフとは 

ロンドン・ファッション・ウィーク期間中に開店したこの「アニヤ・ライフ」には、ルームウェアからクッキーセットまで、さまざまなアイテムがそろいます。ビジネス用にも最適な男性用スモールレザーグッズやゲーム、食器やマフラーや手袋などなど、質実剛健な英国職人の技が光る商品たちはユーモアにもあふれ、自分用にもプレゼント用にも手を伸ばしたくなる魅力があります。

隣のカフェでは伝統的なイングリッシュ・ブレックファストが味わえ、ヴィレッジ内にあるビスポーク(オーダーメイド)ショップには、常駐する職人が、特注品受注や名入れ、修理修繕などを行っており、実際にその作業を見ることができます。

anya cafe at london with tables and chairs
Esquire Japan
アニヤ・カフェ

日本とのコラボレーション

その「アニヤ・ハインドマーチ」が9月~10月にかけ期間限定で登場させたのが、明治から続く日本の文具店「伊東屋」とのコラボショップです。

a building with a storefront
Esquire Japan
伊東屋とのコラボショップ(現在は終了)

日本のカルチャーやプロダクトデザインを長年尊敬し続けているというデザイナーのアニヤは、これまでも日本の食品メーカーなどとコラボレーションしてきました。2023年春夏には、あの醤油ブランドと組んでこんなバッグも…。

anya hidmarch soy sauce bag
Esquire Japan


「日本のボールペンは最高!」

そう言う彼女は、日本の文房具への愛が行き過ぎ(?)だからか、ついに銀座の伊東屋と組んで文房具店を誕生させてしまいました。店内にはアニヤとスタッフがキュレートした文具のほか、手ぬぐいや玩具なども並びます。さらに営業時間なども日本語表記にするこだわりよう。それだけでなく、店内のサイネージでは伊東屋とその創業者の歴史を解説する映像も。明治時代に欧州やアフリカ大陸まで足を延ばし見聞を広めた創業者、伊藤勝太郎の写真を見れば、いかに文明開化時代の起業家が海外での体験に対し貪欲だったか、思い返すことができました。

preview for アニヤ・ハインドマーチと文房具の伊東屋がロンドンでコラボショップをオープン

開店から1週間を待たず、取材時すでに万年筆など売り切れ商品も出ており、盛況のうちに終了したと言います。英国での日本文具に対する人気の高さがうかがえました。

a person walking on the sidewalk
Esquire Japan
ビスポーク・ショップ

質実剛健と大衆性の両立

これまで彼女は食品企業からスーパーマーケットまで、あらゆる日本企業とのコラボレーションを手掛けてきました。それは主にポップなデザインとして表出してきましたが、その動機は「日本文化がもつ生活全体の質の高さから」と言います。

「私は日本の暮らし全体に見られる、細微な部分への正確性。そして、そこにこだわりを抱く精神を愛しています」

チェルシーの自宅の2階を工房にし、ハンドメイドのバッグから始めたアニヤ・ハインドマーチが来日時に語っていた通り、ポップなアイテムと並行して、職人たちの技術が注ぎ込まれた英国紳士にふさわしいブリーフケースやレザーアクセサリー、いつの時代も必要とされるトラベルアイテムなどをもう一本の柱として生み出し続けています。

a black box with a clear top
Esquire Japan

伊東屋コラボレートショップのために選び抜かれた文房具同様、彼女が発案してきたカトラリーやストレージ・コレクション(収納用品)もまた、わかりやすい派手さはないものの、毎日の生活を快適に、豊かにするもの。アニヤ・ヴィレッジで朝食を食べ、コーヒーを飲み、工房で職人にバッグの修理をしてもらい、シルクのパジャマとルームシューズ買って、お土産にクッキーセットを包んでもらう…。そんなことをしていると、少しだけアッパー・ミドルクラスの生活を垣間見たような気になれるのですが、改めてファッションが提示するのは、決して服やバッグや靴そのものではなく、それを使って送る生活の仕方なのだと感じさせてくれます。

質実剛健さに裏付けされたポップさ――。相反するように見えるふたつが奇妙に同居する彼女のコレクション自体は、まさに日本文化と通じるとも言えるのではないか…。(集合の範囲を視覚的に図式化した)ベン図の重なる部分にあるアニヤ・ハインドマーチと日本。某ファストファッションとのコラボレーションだけでなく、今後日本でさらにどんな展開を見せていくのか注目したいところです。

アニヤ・ヴィレッジ(Anya Village)

住所:9 Pont Street, London
アクセス:地下鉄Knights Bridge駅から徒歩7分