◇白スニーカーの歴史とトレンドとは?

 今ではアディダス オリジナルスのスタン・スミスが代表格の1つとして挙げられていますが、各ブランドとも白スニーカーに力を入れているようです。

 これまでの白スニーカーの歴史とトレンドを振り返りつつ、人気モデルをご紹介いたします。

「地味なスポーツシューズが、いかにしてリュックを飛び出し、ラグジュアリーファッションの最高峰へと上り詰め、我々の装い方を永久に変えてしまったのか?」

 ファッションレーベルのアレキサンダー・マックイーンが、360ポンドする新作シューズを発表したばかりです。これは、ボッテガ・ヴェネタのクリエイティブ・ディレクター、トーマス・マイヤーが「モダン・ブローグ」と称する同様の作品をやや下回る価格なのです。

 これらはいずれも、同じ市場で英649ポンドの値が付けられたリック・オウエンスのものや、キム・ジョーンズによるルイ・ヴィトンの英680ポンドする新作に比べれば破格といえます。

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 2016年、地味な白スニーカーは、ハイエンドファッションから、ハイストリートスポーツウェアに至るまで、あらゆる価格帯で足掛かりを見出し、チノパンとブレザーを着た多くのプレッピーから、ストリートファッションの子供たち、ロンドンコレクションに向けて準備してスリーピースを着た華やかな人々に至るまで、あらゆるスタイルのサブカルチャーに取り込まれています。

 白スニーカーは、お洒落な男性のワードローブの中で、オックスフォードシューズやダービーシューズと並んで、しっくりなじむ定番となり、どんな場面にも合わせられる、万能な必需品となりました。テニスのアイコンであるスタン・スミスは先ごろ、自分の名を冠したおなじみのスニーカーについて問われると、「今では、テニス以外のあらゆる場面で履かれているね」と応えました。

 しかし、こうしたスニーカーは、いかにして文字通り、ジム用バッグから飛び出してファッションショーのランウェイに上ることになったのでしょうか? そして白スニーカーは、どのように世界を席巻したのか、そして男性が着こなしを変えつつあるのにどう寄与しているのでしょうか?

 もちろん、すべてではないにしろ、スニーカー史の過去およそ8年間で、重大な新作の発売が大きな手柄を上げているといえることでしょう。

 1936年、ドイツオリンピックのために、バスケットボールプレイヤーのチャック・テイラーは、すでに成功を収めていたコンバース・オールスターとのコラボ商品にホワイトモデルを加えました。新製品は機能的な靴を履くプレイヤーだけでなく、祖国では彼らを真似る若い世代のアメリカの少年たちの間でも人気を博すことになりました。

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『アビーロード』のジャケットで、スプリングコートに白スニーカーを履いたジョン・レノン。

 同じ年には、フランス人のゲオルグ・グリメーズが、クレーコートでテニスをするためのホワイトシューズを作ろうと、スプリングコートを設立しました。この靴がコートを降りるのには、さほど時間はかかりませんでした。

 そして『アビーロード』のジャケットのジョン・レノンからカジュアルファッションを好むセルジュ・ゲインズブール、デイビッド・ホックニーまで、ミュージシャンやアーティストの足元を飾ることになりました。ジェームズ・ディーンとスティーブ・マックイーンが白スニーカーを認めると、彼らのプライベートの格好良さが、永遠に刻まれたのでした。

現在の白スニーカーの代表格、スタン・スミスがここで登場!

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Getty Images
白スニーカーを履いたスティーブ・マックイーンが超絶カッコいいです!

 1971年には、アディダスがそれまでに最も成功を収めた新製品となるホワイトテニスシューズを製造しました。この靴は甲にホワイトレザー、ラバーソールを使用しているのが特徴で、アメリカ人テニスプレイヤーにちなんで「スタン・スミス」と名付けられました。1988年までに、アディダスのスタン・スミスは、新記録となる2200万足を売り上げました。サービスを追うためにデザインされたものとすれば、中々のものと言えますね。

 その間、大衆文化は、人々を虜にした白スニーカーの発展を反映し続けました。『ビッグ』のトム・ハンクスや『バック・トゥ・ザ・フューチャー』のマイケル・J・フォックスなど、映画の中でもスター達が白スニーカーを履いて登場しています。

 しかし、スポーツスタイルと快適なシューズがますます好まれるようになってきたのにも関わらず、当時のスニーカーは依然として、ストリートや競技場に根強く留まっていました。スニーカーは技術的にさらに進化して、ブランド志向が高まり、明るい色も登場していましたが(偉大なナイキスウッシュなどの気泡入りなど)、オフィスで履くものとはほとんど考えられず、スーツと合わせるという考えは愚かしいことでした。

 しかし、アスレジャーやスポーツリュクスの台頭が間近に迫り、白スニーカーのファッションオムニプレゼンスへ向けた旅も、終わりに近づいていたのです。

 1997年には、プラダがライバルのハイファッションブランドから軽蔑されながらも、プラダ・スポーツラインを発売しました。その後、彼らはゆっくりとではありますが、着実に追随していきました。お洒落な白スニーカーは、ミラノやニューヨークで開かれたファッションショーでエディターやブロガーたちの足元を飾り始め、彼らはこのアイテムを目の前のランウェイに登場させることで、最後のタブーが侵されるさまを見ていたのです。

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PRADA
2001年に公開された、プラダスポーツキャンペーンのイメージ画像。白はやはりクリーンなイメージで安心します。


スタイリッシュなスニーカー需要を 一足早く認識していたのは、あの人気ブランドであった!

 1998年からは、ランバン、マルジェラ、アクネ、グッチ、ボッテガ・ヴェネタに至るまで、ラグジュアリー市場のあらゆる階層で白スニーカーが登場し始め、ファッション界全体がさらなる自信をもって、テイラリングルックと白スニーカーの組み合わせを採用しました。

 余分なものをそぎ落とした、スタイリッシュなスニーカー需要を早くから認識していたブランドは、コモン・プロジェクツでした。2004年にコモン・プロジェクツを設立したピーター・プーパットとフラビオ・ジローラミは、大人になって好みが変化してみると格好良いミニマルなスニーカーがないと感じていたのです。彼らは「グッチとナイキの間にあるギャップに橋を架ける」ミッションを開始しました。彼らは、今では年間およそ1000万ドルもの収益を上げています。

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コモン・プロジェクツのなかでも大人気のアキレス・ロー・スニーカー。

 プーパットとジローラミは、純白ではなく、色を組み合わせたものを提供しているが、彼らのベーシックホワイトのアキレス・スニーカーは、言うなれば彼らにとっての洗礼です。熱狂的な人気を誇るミニマリスト的デザインとシームレス構造による400ドルのこの靴は、中古市場でも高値を保っています。オンラインファッションマーケット、Grailed.comの設立者、アルン・グプタによると、「あの靴に関しては、非常に高騰している。アキレスなら、履き古していても、ほとんど常に、250ドル上乗せして転売されている」と話しています。

 コモン・プロジェクツは、爆発的な売上を誇るお洒落な白スニーカーを製造する唯一のメーカーではありません。ETQアムステルダムには、多様なソールと幾何学模様、ワックス加工した靴紐を特徴とする、数多くのホワイトとオフホワイトのレザースニーカーがあります。ETQには様々なカラーがあるりますが、ホワイトオプションのDuluxカラーチャートは彼らが市場の求めるものを知っていることを示唆しています。価格は英160ポンドからで、スーパーラグジュアリーブランドより価格を下回っていますが、コンバースやナイキ、アディダスに代わるおスタイリッシュさを提案しているのです。 

スニーカー=カジュアルではない!

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ファッショニスタたちもこぞって白スニーカーで、スタリッシュコーデを実践しています。

 一方、我が国に目を向けると、シューズデザイナーのミスター・ヘアは、ホワイトロウトップスニーカーで、スポーツウエアに対して現代的な解釈を築いてきました。タイニ・テンパーからデイビッド・ギャンディまでの錚々たる面々が、ノッティングヒルを拠点とするデザイナーの製品を身に着けているようです。

 ペダー・グループ会長のピーター・ハリスが今年の初めに、「もはや、スニーカーはカジュアルファッションと認知されていない」と語り、ザ・ビジネス・ファッション誌のインタビューで、「ブシェミやクリスチャン・ルブタンによるハイトップシューズは、彼らの意思表明だ」と語りました。

 「多くの男性にとって、クリーンで仕上がりの良いスニーカーが、今やオフィスで機能している」とミスター・ポーターの購買主任サム・ロバンは同じ記事で述べています。

 「過去4シーズンを遡れば、このオファーはより一層簡明だった。我々のオファーはバレンチノやランバン、マルジェラと同様で、そしてそれ以外では、おそらくコモン・プロジェクツだ。今や市場と需要を一層反映した、より幅広い品を揃えている」と、彼は説明しています。 

 

リラックスへの移行を物語る白スニーカー

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Aflo
マックイーンにように、白スニーカーの似合う大人の男を目指したい。

 スニーカーのトレンドは、メンズウエアの他分野よりも移り変わりが早いと言えます。今年だけでも、トーナルシェード、ランニングニット、レトロが、すでに全盛期を迎えています。次のシーズンまでにどんな商品が登場して、若者や悪名を轟かせるほどに取りつかれた人々の興味を引き付けるのかは、誰にも分からないのです。

 しかし、シンプルでクリーンな白スニーカー(真っ白なキャンバス地にモダンなデザインを施したもの)は、別であると言えます。戦後社会から帽子が消えたことが、ビクトリア時代の閉塞感から抜け出すターニングポイントだったとすれば、白スニーカーの登場はおそらく、よりリラックスした着こなしへの移行、すなわち男性がドレスコードと因習から徐々に自由を取り戻してゆくのと、同一のタイムライン上のひと時であると考えられるでしょう。

 いずれにしろ、いつでもすぐ、どこへでも行けると思わせてくれるものなのです。

Source / ESQUIRE UK
Translation / Spring Hill, MEN'S +
※この翻訳は抄訳です。