CtoC(消費者から消費者)市場が急成長するまで、売り手と買い手の役割は明確なものでした。しかし、フリマアプリやクラウドファンディングの台頭と共にスニーカーなどの特定の分野で、売り手と買い手が混ざり合う流通市場が出現しはじめました。

スニーカーに異変が起きた

そして、スポーツとの直接的な関係の有無にかかわらず、スポーツフットウェアはファッションアイテムの一部として扱われるようになりました。今では、スポーツシューズ…いわゆるスニーカーが本来の用途であるスポーツに使用されるのは、わずか20%未満と推定されています。その理由は、スニーカーの持つクールなルックスとステータスのシンボルになったという点になります。ブランドは、快適さや革新性を求めて消費者へとアプローチしていますが、その一方で彼らは、その商品の希少性や独占性の高さにバイアスの目を向けているのです。

需要と供給が激しく摩擦することで熱を帯びるのが真のトレンドであり、これを目指してブランドとクリエイターたちはその商品が即座に売り切れる方程式を解くのに必死です。そんなわけで消費者と商品との接点、そしてその流通経路も近年様変わりしたことも事実です。

購入したいという欲求からできる行列、購入の可能性を与える平等さ、そして新しいアプリケーション。彼らは、大きな需要のある商品が歩むべきシステムを変質させていったわけです。それも意図せずに、いつの間にかこう変わってしまったと言っていいでしょう。

ナイキにおけるカニエとの
出合いが好例かもしれない

例えば、2009年にカニエ・ウェスト(2023年からはYe<イェ>に改名)と共に「ナイキ」から新たな手法でリリースされた「NikeYeezy 2 Red October」のプロパー価格は、245ドルでした。しかし、それを5000ドルで購入してくれる人を見つけるのは簡単だったのです。この方程式に対し、素直に納得する方がたくさんいることは不思議なことではなく、とても論理的で理にかなったものと言えるでしょう。

その新たな市場の関係背が、販売価格と購入者が支払う金額との差を拡大し、購入者である消費者が数分後には販売者へとシフトする再販市場が誕生したというわけです。

かつては、その市場は信頼性の低いプロセスから始まりました。ですが最近では、信頼で左右される仲介者といった個人的な販売によって機能するものではなくなり、アプリケーションや新しい形態のストアの出現によって専門化され、信頼性も高めてきているのです。これはまだまだ、スニーカーの転売市場のほんの始まりに過ぎないとも言えます。

for sneaker fans limited production shoes are worth a five day wait
Maja Hitij//Getty Images
スポーツシューズは、わずか20%未満しかスポーツに使用されていない。

販売の場は倉庫から
オンライン上に…

当初、スニーカーの二次流通市場の場所は、基本的には倉庫でした。そこには一般的な製品と限定版が混在しており、その場は稀少性の高い神聖なるスニーカーを間近で見たいと願う訪問者を引きつけるための「おとり」としても機能していました。

SoleStage」、「GOAT」、「Stadium Goods」などのいわゆる委託店は、個人の製品を公開および販売するため、その信頼性を保証し、売り手が合意したお金を支払う代わりに商品を受け取ることを保証する仲介者として重要な役割を果たしていました。これは、ほとんど個人間のプラットフォームだったのです。それらのいくつかは新製品のみの取り扱いで、その他の場合でも同じプラットフォームで購入・使用・再販できるというわけです。

この流通市場の専門化によって、このスニーカーの二次流通市場における人気委託店はもはや、ラグジュアリーブランドグループ企業のLVMHやシューズを中心とした大手アパレル・チェーンFootlockerなどへ投資する百万長者クラスの大企業グループから、そう遠い存在ではなくなったのです。

そこで注目すべきは「StockX」です。ここは株式市場の仕組みを転売市場に応用し、「モノの株式市場」を創出しました。「StockX」の共同設立者ジョシュ・ルーバー(Josh Luber)氏はかつて、2012年に再販市場に関するデータを収集・分析する「Campless」を立ち上げたことに始まります。そしてのちに、NBAチームのクリーブランド・キャバリアーズのオーナーであり、アメリカの億万長者ビジネスマンとして知られるダン・ギルバート(Dan Gilbert)氏が加わったことにより、現在の「StockX」へと進化していったというわけです。

StockXは、
スニーカー界のナスダック?

従来の会社が需要を知らずに価格を設定することが多い一方で、「StockX」は、「Campless」で取得したデータのおかげで、顧客が支払う意思のある金額をほぼ正確に把握できるようになりました。より伝統的な方法と並んで、「StockX」はあるオランダのオークションを提案しています。その主なアイデアは、小売価格を廃止することです。実際に彼らは、オークションやローンチについてさえ話していませんが、IPO(Initial Public Offering〈パブリックオファーフォーセール〉)について話しています。

いくつかの大手スポーツブランドは、プライマリー・マーケット(一次市場)とセカンダリー・マーケット(二次市場)の境界を曖昧にする「StockX」を通じて、すでに商品の発売を試みています。ですが、これまでのところはスペシャルエディションのみで行っています。

「ニューヨーク・タイムズ」紙は、「StockXは『スニーカーヘッドのナスダック』」と表現しています。ただし、他のアフターマーケットストアと同じ問題に直面しています。それは認証の有効性と、データの大量漏洩(ろうえい)です。また、「GOAT」(米国最大の靴店のひとつ)の副社長であるマット・コーエン(Matt Cohen)氏が言うように、彼らのビジネスは「他のブランドが生み出し、創造し、革新するニーズを満たすことにより成り立っている」ということを忘れてはいけないでしょう。

Source / ESQUIRE ES