――今、情熱を注いでいることは?

ジョニー・デップ(以下ジョニー):小さい頃から、私の現実逃避は紙と鉛筆でした。それからクレヨンも使うようになって…。とにかくいつも絵を描いていて、そのことで叱られ、学校でも1年生、2年生、3年生、4年生とずっと絵を描き続け、先生に怒鳴られていましたね。ただひたすらフランケンシュタインやドラキュラ、ミイラや狼男を描いていただけなのに。他にも宇宙のモンスターや、妙にダークなものを描いていましたね。

私にとって絵を描くことは人生の一部。ペインティングも同じで、かなり前にはじめましたが、それを展示したりどうこうしようなどとは考えたこともありません。絵を描くことは単純に「自分がやるべきこと」のひとつであって、脳を集中させるためにしていること。ひたすら絵を描き、それを長年続けているだけのことです。絵を描くことで、いまだに何か達成したとは感じませんが、感情を表現するには良い手段です。 

音楽はいつも感情を表現するのにもっとも効果的な方法でした。

――音楽はあなたにとってどういう存在ですか?

ジョニー:自分にとって音楽はいつも、気持ちや感情、思想、生きてきた状況を表現するのに最短で最も効果的な方法でした。もしそうしたことを仕事に活用すれば、30年前に経験したある瞬間を生きることができ、さまざまな記憶を応用することができるのです。なので自分にとって、音楽はいつもものすごく大切なもの。そしていつも、何らかの形であの孤独なブルースのギターへと結びついていました。自分にとっての音楽の美しさとは自動的にロックンロールでありますが、同時にバッハでもあり、モーツァルトでもあるのです。 

johnny depp with long hair and tattoos
JEAN-BAPTISTE MONDINO

――音楽のクリエイションとフレグランス クリエイションを比較するとどうでしょうか?

ジョニー:当時、「ソヴァージュ」の調香師に会ったとき――その人からは今まで出会った誰よりも感銘を受けたと言えるのですが――「うわ、すごい」というか、そこで『香水づくりとは原子レベルまで掘り下げるようなものなのだ』と実感しました。この人たちは、いろいろな特別なことを実現する科学者なのだと…。彼から多くを学んで…本当に素晴らしい体験でした。

――ビューティー ルーティンはありますか?

ジョニー:いわゆる本格的な「ビューティー ルーティン」はないですね(笑)。年齢を重ねると少しくらい知識が増え、物事の仕組みがわかるようになります。車のメンテナンスと同じくらいは、最低限自分の体もケアしたほうが良い、みたいな(笑)。無常な世の煩わしさにもリスペクトを払うべきだってことですね!

johnny depp holding a guitar
JEAN-BAPTISTE MONDINO

――はじめて「ソヴァージュ」の香りをかいだとき、どんな点に惹かれましたか?

ジョニー:最初に「ソヴァージュ」を香ったときのことをよく覚えています。小さなボトルに入った、完成したてのサンプルを手渡されました。ワクワクするような、熟成した高級ワインを香ったときのように、最初は特定しがたいさまざまな香りが匂い立っていました。まるで、太く抜けるベース音のようなウッディーノートを感じたのを覚えています。その調べは、辺りには漂い続けていました。それから他のいろいろな香りが立ちのぼり、フレグランスの個性が現れ、香水の輪郭がはっきりと浮かび上がってきました。 

これはyouTubeの内容です。詳細はそちらでご確認いただけます。
SAUVAGE - The Call of The Blazing Sun of Sauvage Eau de Toilette
SAUVAGE - The Call of The Blazing Sun of Sauvage Eau de Toilette thumnail
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――「ソヴァージュ」の世界のどの価値観がもっとも良く表現されていると感じますか?

ジョニー:地球、動物、自然のシンプルさだと思います。実際に、このフィルムをつくる過程で一番おもしろいと感じたのが…「言葉にできない何かがある」といった感覚です。暗黙の何か、何かが未完成であるといった空気感がありました。それは、スピリットや生き方を表現した興味深い心象イメージや思想なのだと思います。そして、自然な、原始的なリズムの存在。(キャンペーンCMの監督)ジャン=バティスト・モンディーノは1作目でそうしたことを表現したいと考え、それはフレグランスを体現するうえで本当に素晴らしい方法だと思いましたね。 

このフィルムをつくる過程で、一番おもしろいと感じたのが…言葉にできない何かがあるといった感覚です。

johnny depp with long hair and tattoos
JEAN-BAPTISTE MONDINO

ジョニー:自分にとってはいつもと違うタイプの仕事でしたが、とても楽しくやりがいを感じました。ジャン=バティストは、概念的な表現を用いることに全く躊躇(ちゅうちょ)しませんでした。なぜなら、本来観念的なものだとわかっているストーリーを語るためには、ときとしてそうせざるを得ないものだからです。

それは心に浮かぶイメージであって、サブリミナル的なもの。撮影のプロセスでおもしろかったのは、彼の場合、全てがとても深くて、考え抜かれている点。そして、それはいつも必ず適切で、正解なのです。こうした撮影のやり方は決まった方法ではなく、思考とイメージに従っているのでとても自由でした。