テスラ社のCEOイーロン・マスク氏が2018年10月、テスラ取締役会の会長職の任を解かれました。また、2018年夏にあったタイの洞窟での少年救出に関して、レスキュー隊のメンバーを児童性愛者と呼んで訴えられていた最中に、「テスラキーラ(Teslaquila)」と称するテキーラをつくる決定を下し、そしてさらに、「リュウゼツランの蒸留酒」並びに「青リュウゼツランからつくる蒸留酒」の特許取得申請を提出していました。そううえ彼は、「テスラキーラをまもなく発売する」という約束までをし、ボトルのイメージ写真をオンラインで公開していたのです。 
 
 スコッチの場合、「水と大麦はスコットランドで蒸留したものでなければならない」とされ、少なくとも「3年間熟成させたもの」でなければ、スコッチと呼べないという取り決めがあります。

 またバーボンの場合も、「原料の最低51%はトウモロコシを使うこと」や「新しいオークの樽に入れて熟成させること」などと、取り決めがあります。

 これらと同様に、テキーラにも従わなければならない作り方のルールがあるのです。

 具体的には、「メキシコの特定の州で蒸留されたもの」であること、原料中の「青リュウゼツランの割合が51%以上」であることとなっています。こうしたルールは厳しく適用されています。 
 
 言い換えると、これは「テキーラ」という言葉を無闇に使うと、必ず誰かに気づかれるということになります。そこで抜け目ないマスク氏のことです、「テスラキーラ」という言葉をつくったのも、まさにそうしたことを鑑みてのことであり、「テスラキーラ」がテキーラに似ているのはあまりにも明らかで、実際にメキシコのテキーラ生産者たちはそのことに気がついたわけです…当り前ですが。 
 
「(テスラが)テスラキーラをテキーラとして実現させたければ、認可を受けたテキーラ・メーカーと手を組まなければならない。また、一定の基準を遵守し、メキシコの産業知財研究所に承認を求めなくてはならない」と、メキシコのテキーラ規制審議会(Tequila Regulatory Council)は声明の中でそう述べています。

「さもなければ、テキーラの出所の種類を許可なく使用することになる」とするテキーラ規制審議会では、「この一件を注視している」と「ロイター」は報じています。 
 
 テキーラ規制審議会によれば、テキーラは「保護された言葉」なのだそう。 
 
 国として守らなくてはならない「テキーラの伝統」を有するメキシコと、ビジョンを持ち、ルールに対しては無遠慮な態度をとり、しかも時間を少々持て余している大富豪のマスク氏…。この両者の対決は、この先いったいどうなるでしょうか? 
 

From: Esquire UK
Translation / Hayashi Sakawa
※この翻訳は抄訳です。