《目次》

  • 果物の糖質は身体に良い? 悪い?
  • 果物の健康効果を科学的に検証
    ―果物とお菓子に含まれる糖の違いとは?
  • 結論:果物は適量を守り積極的に食べるべき

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糖との激しい戦いが繰り広げられる中、多くの人が頭を悩ませているのが「糖分の多い果物の扱い方」についてではないでしょうか。運動好きにとって果物は頼りにある間食であり(あなたのジャージのポケットに入っているバナナもそう)、外出のときに手軽に携帯もでき、長い距離を走っている最中にも食べられることも魅力ではないでしょうか。

◇2人の栄養士が記事を監修

なので、もしあなたが活発に運動をする人ならなおさらでは? 「果物の糖分は実際、身体に悪いかどうか?」を知っておく必要があると思っているはずです。そこでわれわれは、理学修士で管理栄養士のケリー・ホーガンさんと栄養学食品学アカデミーの広報担当で理学修士、管理栄養士、公認栄養士のトレイ・アームルさんに話をうかがってきました。

◇申し立て(確認すべき通説):
果物の糖質は身体に良い? 悪い?

糖分の過剰摂取は体重の増加や心疾患、2型糖尿病と関連があるのと同時に、果物が糖分の塊であることにも疑いの余地はありません。「Whole 30ダイエット」や「ケトジェニック・ダイエット(=炭水化物を可能な限り避ける食事療法)」といった流行りのダイエットでは、例え果物と言えでも糖分があるものは避けており、これまで「果物をヘルシーな間食」と信じていた私たちにとって、その考えが正しかったのかどうか疑問に思っています。

■「Whole 30ダイエット」とは?
砂糖、穀物、乳製品、豆類、そしてアルコールを30日間絶つことによって、身体をリセットさせるというダイエット法。

◇証拠:果物の健康効果を科学的に検証

「糖」とは次の3つのタイプがあります。

  • フルクトース(果糖)
  • グルコース(ブドウ糖)
  • スクロース(果糖+ブドウ糖)

「スクロース(ショ糖)」は、前の2つが結合したもので、砂糖の成分で構成されています。簡単に言うと、白い「砂糖」になります。糖は炭水化物の一種で、運動をしているときの人間の脳や身体にとっては望ましいエネルギー源です。なぜなら、エネルギーに変換する手間があまりかからないからです。

しかしながら糖分の摂りすぎが、多くの望ましくない結果をもたらすことも研究によって明らかになっています。実際、科学雑誌『プロス・ワン』に掲載された研究によれば、1人の人間が消費する添加糖分が150kcal増えるごとに、2型糖尿病を発症するリスクが1.1%上昇することが報告されています。

また、『JAMAインターナル・メディシン』に掲載された別の研究によると、最も多くの添加糖分を消費する人々––1日に摂取するカロリーの25%以上が添加糖分となるような––が心臓病で亡くなる危険性は、同じく10%以下の人々のほぼ3倍であることも報告されていました。

果物とお菓子に含まれる糖の違いとは?

しかしながら、それが果物の糖分とどのような関係があるのでしょう? イチゴやバナナなど果物の甘さと、炭酸ドリンクやグミキャンディの甘さに何か違いはあるのでしょうか?

どちらにも糖分が含まれていますが、それらが身体に与える影響は異なっています。それぞれの栄養面について見てみましょう。

たとえば炭酸ドリンク1缶には、約140kcalの糖分が含まれているだけになります。健康的なメリットは何もないと言っていいでしょう。果物にも糖分が含まれていますが、こちらには他にもビタミンAやC、葉酸、カリウムといったビタミン類やミネラルのほか、消化器系の健康によい食物繊維も含まれています。炎症を抑えて免疫力を高めてくれる抗酸化物質も含まれているものも多いことは、皆さんも周知のとおりです。

では、炭酸ドリンク1缶とバナナ1本を比べてみましょう。バナナ1本のカロリーは約80~95kcalの中に、筋肉の機能に重要なカリウム、天然の糖分のほか、糖の吸収を遅くする少量のタンパク質が含まれているので血糖値が急上昇することはありません。

「果物に含まれているのは、天然の糖分です。そして果物そのものを食べるのは、スイーツのような甘い食べ物や添加糖分を食べるのとはわけが違います。果物には食物繊維や、ほかの栄養素を吸収するのに役立つ栄養素なども含まれているのです」と、栄養士ホーガンさんは言います。

◇評決:「ビタミンや食物繊維が豊富な果物は、適量を守り積極的に食べるべき」

「確かに、果物には糖分が含まれており、中にはマンゴーのように糖分が非常に多いものもあります。ですが、脳の健康を向上させてくれるブルーベリーを1カップ(あるいは2カップ)食べても、それが体重増加や2型糖尿病の原因になるようなことは考えにくいのです」と、栄養士アームルさんは言っています。

過去の研究も、それを裏づけています。学術誌『ジャーナル・オブ・ダイアビーティス・インベスティゲーション』に掲載された研究結果では、「果物を多く食べるほど2型糖尿病を発症する危険性が低くなる」と結論づけています。

さらに別の学術誌、『ヨーロピアン・ジャーナル・オブ・ニュートリション』に掲載された研究結果では、「果物をたくさん食べることは、肥満、癌(がん)、高血圧心臓病になる危険性を減らすことにつながる」としています。

「『果物を食べことが原因で、体重が増えすぎた』と語るクライアントには、いままでお目にかかったことはありません」と、アームルさんは言います。「それよりも、私たちが十分な量の果物を食べてないことのほうが問題です」とも警鐘を鳴らします。

「とは言え、ドライフルーツやフルーツジュース、スムージーには注意が必要です」と、ホーガンさんは言います。これらはどれもフレッシュな状態の果物よりも糖分が多く、しかも糖分が濃縮されているため、高カロリーになっているものが多いという現状があります。

アメリカ心臓協会(AHA)」によると、「果物の1人前の分量は、握りこぶしくらいの大きさ」とのこと。フレッシュ、フローズン、缶詰なら半カップ、ドライフルーツやフルーツジュースなら1/4カップといったところです。

ここで、「フルーツジュースと同じレベルで、ドライフルーツも少し危険な食べ物なのか?」と思った人も少なくないかもしれません。これもいつどこで食べるかで、有効に活用できます。たとえば長距離のサイクリングなど、運動に出かけるときにいくつか持参しておけば、合理的にグリコーゲンを補給するのに役立ちます。

「ドライフルーツに糖分が多いことは否定できません」と、ホーガンさんは言います。「ですが、それにふさわしい時や場所もあるのです。ハイキングや遠乗りに出かけるときには絶好の間食になってくれるはずです」ということです。

「フルーツジュースに関しては、100%果汁のものがベストと言えるでしょう。なぜなら、果物に含まれる天然の糖分を飲んでいることになるからです。とは言え、やはり本物の果物を食べるほうが理想的です」とのこと。

ホーガンさんが言うには、「ジュースには本物の果物に含まれている食物繊維などが含まれていない可能性があり、また、液体だと糖分やカロリーを過剰に摂取しやすくなってしまう恐れもあります」と注意点も教えてくれました。

「同じようにスムージーも、カロリーと糖分の爆弾になってしまう可能性があります。もしお店でスムージーを注文する場合は、プレーンのギリシャヨーグルトやフルーツ、野菜が入っているもので、可能な限りハチミツやアガベシロップなどの添加糖分が加えられていないものにしたほうがいいでしょう」と、ホーガンさん続けます。

「いちばんのおすすめは、自分でつくることです。それなら、そこで添加する糖分の量もコントロールできるわけです。満腹感を高めたり、筋肉の修復を促進したいと願うなら、全脂肪*のプレーンヨーグルトやピーナッツバター*などプロテイン含有の多いものを加えるほうがおすすめです」と、アームルさんは言っています。

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※ここで「全脂肪で大丈夫?」と思った人も少なくないでしょう。現在、「全脂肪と低脂肪の乳製品の違いはない」、または「全脂肪製品が良くないなどということはない」と結論づけた研究はたくさんあります。実際は、全脂肪乳製品は以下のような病気を改善する可能性が期待できる研究も報告されています。それは「2型糖尿病」であり、「心臓の病気」「メタボリックシンドローム」「高血圧」「結腸直腸がん」などです。
 
The American Journal of Clinical Nutrition』で紹介された研究では、全脂肪乳製品と低脂肪乳製品を摂る人々の間での体重の違いを観察。すると結果は、「全脂肪乳製品を食べる人のグループでは、太りすぎや肥満のリスクが8%低かった」という結果も報告されています。そして、この研究では乳製品からの脂肪摂取量が高いことは、肥満や心臓の病気のリスクが低く、逆に乳製品から摂取する脂肪の量が低いことは、肥満のリスク上昇と関連づけていました
 
また、飽和脂肪酸は“悪の脂肪だ”と判断して避けていると、「糖尿病や心臓の病気を引き起こす可能性を高める」という研究結果も報告されています。さらに、食生活から脂肪をカットしてしまうということは、脂溶性ビタミン(A、D、E)や多くのミネラルをカットしてしまうことになるというリスクも生じるとのこと。
 
※また、「ピーナッツバター」に関して…。FDA(米国食品医薬品局)は、原料の90%以上がピーナッツでできているもののみを「ピーナッツバター」と定義しています。
アメリカンスタイルの「ピーナッツバター」は、ピーナッツをペースト状にして栄養素を余すところなく摂取でき、甘さも控えめのものも多く優秀食材と言えます。ハーバード大学が行った研究では、「適切な量のピーナッツを日常的に摂ることで、生活習慣病による死亡リスクを約20%減少する」という結果も報告されています。
 
ですが、「ピーナッツクリーム」との違いを知っておくといいでしょう。

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というわけで、果物をさまざまなカタチで楽しんでください。特にフレッシュのものがよく、フローズンのものでもその栄養価はあまり変わりません。

そのほかのものについては、もう少し慎重に選んだほうがいいでしょう。スムージーなら、タンパク質や脂肪が含まれていて––これらはどちらも筋肉量の増加や維持に役立ち、満腹感を長持ちさせてくれるでしょうから––再度言わせていただきましすが、ハチミツのような糖分を追加しないにしてください。

では、フルーツジュースやドライフルーツについては?

「恐らく、毎日飲んだり食べたりすることのない限り、ときどき適度に口にする分には問題ないでしょう。特に頻繁に運動をしている人の場合なら、このことを危険視する必要もあまりないと思います」と2人の栄養士は、最後を締めくくってくれました。

Source / Bicycling
Translation / Satoru Imada
※この翻訳は抄訳です。