あるとき私(ローレン・クランク)は、ひどい二日酔いのまま飛行機に乗り、アームレストを占領するという大罪を犯すほどの大きな男性2人の間に挟まれ座っていました。身体が痛み、そして汗をかいていたので、飲み物のサービスが始まったときにお腹の調子を整えてくれるミントティーを注文しました。すると右側に座っていたたくましい男性は、氷入りのトマトジュースを注文したのです。

頭痛がするのを我慢し、客室乗務員に目をやりました。氷をすくい、プロの手さばきで缶のタブを開け、コップに赤いドロっとした液体を注ぐのを見ていると、カラカラに乾いていた自分の口に不思議とよだれがあふれてきます。客室乗務員が私の頭上でトマトジュースを手渡した瞬間には、その「羨ましい」という気持ちはピークに達しました。しかも、それまでウォッカなしでトマトジュースを飲んだことなどなかったのに…です。

残りの飛行時間は、その男性がトマトジュースを楽しむのを身体が痛むような思いで見ながら過ごしました。その(驚きと味わいが明るく弾けていると思われる)ひと口ひと口を見ていると、ぬるくなったミントティーなど(というつまらないもの)を選んだ私を嘲笑っているかのように感じられて、その痛みは頭まで達しました。ですが、着陸すると同時にトマトジュースに対する予想外の渇望は、夜の闇に消えてしまったのです。

数週間後また飛行機に乗っていたのですが、飲み物のカートが近づいてくると自分が生まれて初めてトマトジュースを注文しようとしていることに驚きました。しかも、これが実においしかったのです。飛行機で飲むトマトジュースは爽やかで、風味があり、特別でした。氷が溶け始める瞬間までは少し甘く、薄まってきたくらいがちょうどよくなります。甘い炭酸飲料のように喉が乾きませんし、コクがあり、パサパサに乾いたプレッツェルの最高のお供です。トマトジュースなしの飛行機は、もう考えられません。

「人生を変えるような大発見をしたのかもしれない…」と思い、ネットで検索してみると私だけではないことがわかりました。

飛行中のトマトジュース最強説

女性パイロットとして初めて単独大西洋横断飛行を成功させたアメリア・イアハートは、1936年に「トマトジュースが飛行機に乗っているときの大好きな飲み物だ」と話した記録があります。2016年のロサンゼルス・タイムズの論説には、「私のような人を、“マイル・ハイ・トマト・クラブ”のメンバーと呼ぶのだ」と書いてあります。つまりトマトジュースは、飛行機で注文する最も基本的な飲み物ということになります。

ではこれには、心理的な理由があるのでしょうか? 調査によると、気圧と客室内の騒音によって、人は塩っぽさと甘さに対する脳の反応が鈍らされるそうです。しかしながら、トマトジュースの旨味は高度や騒音に影響されないため、他の飲み物に比べて新鮮でコクがあるように感じるのです。

トマトジュース教会に改宗した私は優秀なカルトメンバーらしく、飛行中に飲むトマトジュースの素晴らしさを友人や家族に説こうと試みました。しかし彼らの反応は皆、「おえっ、いやいや、飛行機といったら○○でしょ」と各々が違った飲み物を口にするのでした。

靴下を脱いだり、リクライニングされた前の座席を殴り続けるなど、飛行機内で冷たい目で見られても仕方ない行為はたくさんあります。ですが、飲み物は何を選ぼうと自由なはずですし、批判の対象外となるべきです。遥か上空で国境を超えている最中なのですから、味覚が正常に機能しなくてもおかしくありません。今が何時か?なんて、機内ではよくわかりませんし、何を飲むべきかのルールも存在しないのです。次の飛行機では、ぜひトマトジュースを試してみることを強くおすすめします。とは言え、「まだ勇気がない」と言うあなたは、私の同僚のおすすめめもご覧ください。


Q.飛行機で飲む定番ドリンクは?

「バドワイザーと水」

ビールの製造会社であるアンハイザー・ブッシュのある、セントルイスにいる夫の実家を訪ねるようになってから、搭乗前に空港の怪しいバーでバドワイザーを1杯、そして機内で大きなペットボトルの水を飲むのが欠かせなくなりました。バドワイザーを飲めば飛行機で眠ることができますし、水も飲んでいるので脱水状態にならず、着陸したとき頭痛にならずにすむので完璧です。機内でお腹にガスが溜まるのが心配という人がいますが、飛行機でお腹が張るのは当然です。いずれにせよ、セントルイスまでオナラを我慢するわけにはいかないのですから、この時間を有効に…ビールを楽しんだほうがいいでしょう。—ケリー・スタウト

「りんごジュース(または赤ん坊が飲むようなジュースならなんでも)」

ジュースは赤ん坊の飲み物です。後ろの列に座っているあなた、そう、あなたのことですよ! とは言え、私も飛行機の中は赤ん坊に戻ったような気分になる場所なので、ジュースが飲みたくなるのも納得できます。椅子に縛りつけられ、どこへも行けず、自分を見下ろす意地悪な大人たちに世話を焼いてもらわないといけないのですからまさに、赤ん坊です。飛行機では必ずジュースを飲みます。気分を落ち着かせてくれるからです。それに…シーッ!お昼寝の時間だから静かにしてくだちゃい。—ブレディ・ラングマン

「小さなペットボトルに入った赤ワイン」

飛行機の飲み物は、14列目以降に座っている人にとっての長時間飛行という苦行を、少しでもマシにするためのものです。つまり、お酒…。私はどんな高度にいても、赤ワインを頼むようにしています。まどろっこしいやり取りをする必要もなく、シンプルに注文できるからです。またワインはビールよりも早く酔いが回るので、飲み過ぎてしまう心配もありません。全選択肢の中で赤ワインが、一番シンプルなお酒なのです。小さなペットボトルに入った赤ワインを何でもいいから注いでもらって、ポッドキャストの続きを聞くのが一番です。—ジャスティン・カークランド

「透明な炭酸飲料」

私には、炭酸飲料に関する理論があります。濃い色の炭酸は大きくて、砂糖が多くて、健康に悪い。透明な炭酸は水のように見えるので身体にいい。少しでも蛍光色をしていたら絶対に飲まない。注意しておきますが、科学的根拠に基づいたものではありません。あくまで私の主観的基準ですが、ご自由にお使いください。この理論に則ると、飛行機で選ぶべき飲み物はコーラより健康的で、水よりおいしいスプライトです。せっかくタダで飲めるなら美味しいほうがいいわけですが、砂糖のせいで眠くなることを防ぎたいのなら、コーラではなくスプライトで我慢すべきでしょう。高度1万メートルでは、人工的な柑橘系の風味ほどさっぱりするものはありませんし…(ただし、事実確認はしていません)。—エイドリアン・ウェステンフェルド

「クランベリージュースと飛行機の特別な氷」

飛行機ではいつも、クランベリージュースを飲みます。他の場所では絶対に飲まないのですが、その理由はよくわかりません。小さな缶に入ったクランベリーの人工的な甘さを、なぜか身体が欲するのです。そして、いつも氷も入れてもらいます。飛行機特有の、あの真ん中に大きな穴が空いている厚い氷です。空中で死への恐怖を鎮めようとしているときに、あの甘酸っぱさの組み合わせは実に気分をよくしてくれるのです。—ドム・ネーロ

「たくさんの水」

飛行機で口にすべき唯一のものは、水です。(できれば自分の水を持ち込みましょう)以上。無料で配られるプレッツェルや、ジュースや炭酸水が山積みになったカートは確かに夢があります。が、もっと他の楽しみを見つけてください。この意地悪にも聞こえる意見には理由があります。私はもともと、長距離移動の後はひどい時差ボケに苦しんでいました。国内であれば睡眠パターンが崩れることはありませんが、お腹が張って着陸後も機嫌が悪いこともしばしばありました。しかしながら、機内で水だけを飲むように(それも大量の水です)したら、どちらの問題も起こらなくなったのです。インターネットで検索すれば、私よりも科学的に説明している情報がたくさん見つかるはずです。つまらないと思うかもしれませんが、気分は最高です。—マディソン・ヴァイン

「何も飲まない」

可能であれば、機内では何も飲みません。何か飲むと眠れなくなるからです。それに飛行機でずっと起きているという超人的能力も私は持ち合わせていないので、眠れなくなるという事態を避けなければなりません。また飲み物を頼んだら、トレーを下ろさないといけなくなります。そうなると脚が組めないので、快適に寝ることはできなくなるのです。さらに飲み物を頼んだあとにはら、トイレに行かなくてはならないでしょう。なので唯一の解決策は、完全に乾燥してしまうことを避けるために、持ち込んだマイボトルの水を少しだけ飲んでイスの下にしまっておくことです。もし何か頼めと言われたら、お腹に優しいジンジャーエールを氷なしで飲みます。—サラ・レンス

Source / ESQUIRE US
Translation / Yuka Ogasawara
※この翻訳は抄訳です。