開催中の東京2020オリンピック。世界中を沸かせている出場選手たちを見ていると、「彼らはどれほどの富を得ているのだろう?」と考えてしまう方もいるかもしれません。その世界的大会でしのぎを削る彼ら彼女らはメダル獲得を目標に、そこに付随する名誉…そして結果的にはお金を求めて競い合っているのです。
とは言っても、それはいやらしいことではありません。選手たちはそれが仕事であり、正統な成果に見合った報酬を獲得しているのです。それはわれわれのようなビジネスマンと同じフローとも言えるでしょう。そこで結果を出して報酬を得なければ、次の大会のための準備資金がなければ、自分をさらに高めようにも高めることはできなのですから。第一、ビジネスマンの通勤のように、ルーティンな移動を重ねているわけではありません。国をまたぐ移動も頻繁です。その分、運賃も宿泊費も予定かかりますし、(スポーツによりますが)競技用の道具を運搬するための費用だって、日々限界まで酷使する身体のケアだって、私たちと比べ物にならないくらい必須だと思います。
そう、アスリートたちは、日々の鍛錬から得たパフォーマンスを示す大会つまり競技での成績で査定されるというわけです(もちろんそこには、日々の素行および人格も加味されるでしょう)。そうして、より上の成績を示すことで、さらなる向上のための資金を得るのです。
実際、ほとんどの競技選手たちは固定給などもらっていません。その代わりに、さまざまな団体(ときに個人もいるかもしれません)からの報奨金、さらにはスポンサードという支援のカタチで報酬を得ているのです。つまりは、ほとんどが突発的とも言える期間を区切った契約からなる副業のようなものになるのです。そしてそれは、自分の成績や日々の行動によって大きく左右されることも、選手たちは身に沁みて理解しているはずです。
実際は、そんな彼ら彼女らの年間総収入額は十人十色です。つまり、そのほとんどの選手が、以下で紹介するさまざまな団体から報酬を得ています。互いに競い合っているわけですから、成績上位の者も下位の者も存在することになります。さまざまな貢献度という観点から考えれば、成績上位の選手たちには複数の団体からの収入を得ることは予想できるはず。つまり、下位の選手たちは厳しい状況に陥るということは避けられない事実でもあります。
米代表選手たちは、
メダルを獲得することで
大金を得ています
ご想像のとおり代表選手たちは優勝すると、かなりの額の賞金を手にすることができます。数年前に米オリンピック・パラリンピック委員会(USOPC)は、選手の賞金額を大幅に引き上げました。
2021年の現時点では、米オリンピック代表選手は金メダル1個につき3万7500ドル(約410万円)、銀メダル1個につき2万2500ドル(約240万円)、銅メダル1個につき1万5000ドル(約160万円)を獲得できることを明言しています。一方、米パラリンピック代表選手には金メダルで7500ドル(約80万円)、銀メダルで5250ドル(約50万円)、銅メダルを3750ドル(約40万円)が獲得できるということも公式サイト内に明記しています。
米テレビ局CNBCによれば、この賞金額は2016年の夏季大会でアメリカの選手たちが獲得した金額から50%も増加しているとのこと。また選手にとっては、総所得が100万ドル以下であれば賞金も非課税になるということです。
USOPCから、
実績に応じた給付金を
得ることも可能
同じくCNBCによればアメリカの一部選手は、家賃や生活費をまかなうための奨学金を受け取っているとのこと。また、各スポーツの規定によって、その資金を医療費にも充てる場合もあるそうです。しかしながら、その奨学金に関しては、選手の成績や出場する競技によって大きく異なると言います。
例えばスピードスケート男子のミッチェル・ウィットモア選手は、2016-2017シーズンの世界選手権大会の終了時に男子500メートルで4位の成績となりました。その後彼は、トレーニングと生活費の資金を援助として9カ月分の奨学金を獲得したことを述べています。2017年の競技で4位になった後、トレーニング費と生活費として9カ月分の給付金を受け取ったと述べています。ですがさらに、「もしあのとき、タイムが0.5秒速くゴールして3位になっていれば表彰台に登れたし、毎月数百ドル上乗せした金額で収入を得ることができたはずだ」とも語っています。
“メダルボーナス”を出す国もある
一部の国では選手が獲得したメダルの色に応じて、数十万ドルの追加の報奨金が得られる場合があります。お金にまつわる情報を発信するサイト『Money Under 30』によれば、シンガポール代表の金メダリストは正味100万ドル(約1億1000万円)の収入を得るこことできるようです。インドネシア代表の場合は、金メダリストで74万6000ドル(約8200万円)の報酬が支払われると言います。
また、正味の報酬で比べると、シンガポールの銅メダリストはアメリカの金メダリストの4倍以上の収入を得ることになるそうです。しかもこれも、大会後に得られる収入と比べたらわずかな額…ほんの始まりに過ぎません。
ちなみに東京五輪の日本代表におけるメダルボーナスは、スポーツ庁のサイトによればオリンピック代表で金メダル500万円、銀メダル200万円、銅メダル100万円。パラリンピック代表で金メダル300万円、銀メダル200万円、銅メダル100万円ということです。
もちろんエンドースメント契約
(スポンサー契約)で
収入を得る選手たちもいる
当然ながら、選手がオリンピックでメダルを獲得できるのは4年に一度だけですが、この世界的大会の合間には多くの選手が企業と提携し、エンドースメント契約を結んでいます。エンドーズメント(endorsement)とは、企業と著名人との間における自社製品の独占利用を軸とした契約形態のことになります。つまり、「その人気を活用して、当社の商品またはサービスを一般に広めてください。その代わりに、報酬を支払うことで選手生活をサポートします」という考え方です。
例えば、スポーツ情報を発信しているメディア『AS』によると、引退したジャマイカ人陸上のウサイン・ボルト選手は、エンドースメント契約だけで年間3000万ドル(約33億円)以上を稼いでいるそうです。
また、“体操界の女王”と呼ばれるアメリカ女子体操のシモーネ・バイルズ選手も、ウーバーイーツやナイキ、VISAカードなどとの契約により、莫大な額を稼いでいることは間違いありません。ただし、その契約内容は選手によって異なります。
加えて彼らのSNSには、
#adがあふれ出します
古き良きスポンサードコンテンツも、選手にとって大きな収入源となっています。選手のSNSにフォロワーが数百万人いれば、広告主の関心を引くのに十分です。例えばバイルズ選手はこの数週間で、オレオやユナイテッド航空のスポンサードコンテンツを投稿しています。
注目が集まるオリンピック期間中は、スポンサーがいる選手たちのインスタグラムやツイッターには、たくさんの広告が投稿されることが予想できます。
「『TVに出ているから、スポンサーになってください』といった単純なものではありません」と、2006~2018年の4回にわたってオリンピアンとなったアメリカを代表する女子アルペンスキヤーのステイシー・クック選手は『CNBC』に語っています。続けて、「昨年のイベントであなたがもたらした金額を見て検討した結果、来年のあなたにはこれだけの期待値が予想できるので、その予想金額で来年はスポンサードしようと思っています」といった具合に、契約は進んでいくということのようです。
実際は、多くの選手が
生活のために他の仕事を
しなければならない状況です
多くのアスリートは、シモーネ・バイルズ選手やアルペンスキー女子のリンゼイ・ボン選手、スケートボード男子のナイジャ・ヒューストン選手のようにオリンピックばかりでなく各大会でメダリストとなることは至難の業。よって、さらなる名声を築き上げ、それと比例して収入を確保することも同様のこと。
『フォーブス』によると、東京オリンピックに出場しているアメリカ代表選手の約6割は、年収2万5000ドル(約270万円)未満なのだそうです。前出のウィットモア選手は、「オリンピック選手にとって、経済的な問題は余計なプレッシャーをかけている。しかも強力に…」と彼は、先ほどの『CNBC』のインタビューの続きで語っています。
そしてさらに、「皆さんは、われわらが出場し成績を争うレースすべてが、ただのスポーツ競技であることを望んでいるかもしれません。ですが実際は、大きな失敗は当たり前ですが、ちょっとしたミスでほんの少しタイムをロスしただけで、数カ月間食べることすら大変になる可能性も多いに含んでいるんです」と説明しています。
競技を続けていくために必要な資金や支援を集めるべく、クラウドファンディングサイトを利用する選手もいるほどです。「でも、オリンピック代表選手なら違うでしょ?」と思っている方もいるでしょう。ですが、先ほども少し触れたように、残念ながら代表選手ですら、まだまだ十分な金額を獲得していないのが現状なのです。
Source / Women's Health
Translation / Masayo Fukaya
※この翻訳は抄訳です。