ジョコビッチを「馬鹿」とまで罵ったキリオス

「世界で最も権威あるテニス大会」と呼ばれるウィンブルドン選手権。現地時間7月10日、男子シングルス決勝でセルビアのノバク・ジョコビッチが、オーストラリアのニック・キリオスを4―6、6―3、6―4、7―6(タイブレーク:7-3)で破り4連覇を達成しました。ジョコビッチの同大会優勝数はこれで通算7回目。歴代2位タイ。グランドスラム4大大会(英・米・仏・豪)での優勝は21回を記録し、歴代単独2位に躍り出ました。

対戦相手のニック・キリオスは因縁の相手。2019年にジョコビッチがその年のウインブルドンの優勝でグランドスラム16度優勝を果たすと、キリオスはポッドキャストNo Challenges Remainingでそんなジョコビッチに対して、多くの人からの尊敬を集めるロジャー・フェデラーのようになりたがっているとしたうえで「彼は人に好かれたいという願望に病的にとりつかれているように感じる。それが我慢ならないんだ」と発言。

さらに2020年、コロナ禍にジョコビッチ自身が主催するチャリティ大会を強行し、ナイトクラブにも繰り出したのち、結果的に新型コロナウィルス感染症の感染者を複数出した際には、ツイッターで「間抜け(bonehead)」とも批判しています。

また、2021年2月の全豪オープンテニス前、豪テニス協会にジョコビッチが隔離に関する要望書を提出した際にも、「なんでもする馬鹿(tool)」とまで書き込んでいました…。

キリオス
Frey/TPN//Getty Images

全豪出場を巡る入国拒否騒動をきっかけに関係改善、ブロマンスへ

そのため、対戦したことはあるものの、一緒に練習したことも挨拶も交わしたこともなく、しばらくは“犬猿の仲”として知られていた2人。ところが2021年末から2022年1月にかけて起こった全豪出場を巡る入国拒否騒動の際には、同国出身のキリオスが真っ先に「強制は道義的に間違っている。ワクチンを打っていないからプレーできないというのは正しいこととは思えない」と、ジョコビッチを擁護します。この発言に対しジョコビッチのほうは、「ここ数年の彼の僕に対する発言を知っていただけに、予想外だった」と驚きを隠せない様子でした。

さらに入国拒否の問題に対してもキリオスは、「(オーストラリアの)対応は悪い。彼も一人の人間だ。もっといい対応策があるだろう」と再び擁護。この経緯を受けて、この二人の関係性に変化が生まれたのでしょう。ジョコビッチは今大会の準決勝後記者会見で、「キリオスは公に支持を表明してくれた数少ない選手のひとり。あれには本当に感謝している」と説明し、犬猿の仲からの脱却を認めていました。

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練習中の会話について、スポーツジャーナリストのSaša Ozmoによる(上の)ツイートが出た後、彼らは(下の)インスタグラムストーリーズで二人の関係性が新たなレベルへとアップグレードしたことを表明しました。

それは今大会の決勝を前に、インスタグラムのDM上でのやり取りに関して。キリオスが「俺たちって、友だち?」と話しかけると、ジョコビッチが「お酒かご飯に招待してくれたら受けるよ。勝ったほうがおごりね」と返信。すると、その返信に対してキリオスは「了解。ナイトクラブではじけようぜ」とコメントしている様子を画像にまとめ、それをキリオスが投稿したことで話題を呼んでいました。

ニック・キリオス
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Courtesy of Nick Kyrgios via Instagram

優勝セレモニーでは、「君は素晴らしい選手だ」「尊敬する」とジョコビッチが8歳年下のキリオスを称賛。続けて「これまでの僕たちの関係を鑑みると、こんなに褒めるのはちょっと変な感じもするけど…」とはにかむと、ロイヤル・ボックスにいたウィリアム王子も含め会場は拍手喝采。直後に、「これで公式に(僕たちの関係は)ブロマンス(※)だね」と語り、これも笑いを誘っていました。

※男性同士の親密な関係

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Novak Djokovic | Gentlemen's Singles Final Post-Match Interview | Wimbledon 2022
Novak Djokovic | Gentlemen's Singles Final Post-Match Interview | Wimbledon 2022 thumnail
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これに世界中のメディアが注目。例えば「ザ・テレグラフ」は、「'愚かもの'からブロマンスへ:キリオスがジョコビッチとの関係について明かす(From 'bonehead' to bromance: Nick Kyrgios opens up on relationship with Novak Djokovic)」、「ニューヨーク・ポスト」は「ジョコビッチとキリオス過去のビーフを乗り越え“公式にブロマンス”に(Novak Djokovic-Nick Kyrgios ‘officially a bromance’ after past beef)」などと伝えています。

試合に先立つ記者会見ではキリオスも、「俺たちの関係は確実に少しだけブロマンスだ。奇妙なことだけどね」と認めていました。本当に夕食をおごったのかも含め、今後のふたりの動向にはさらに注目が集まりそうです。

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Nick Kyrgios Discusses Novak Djokovic 'Bromance' | Wimbledon 2022
Nick Kyrgios Discusses Novak Djokovic 'Bromance' | Wimbledon 2022 thumnail
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