[目次]

英国新国王チャールズ3世の戴冠式に映り込んだ黒衣の人物の正体は…?

▽阪神が「アレ」して「呪いのカーネル・サンダース」が福の神に転生したという説を唱える人も…

▽実話怪談ブームのなかで、改めて丁寧な調査も必要と気づかされた事態も起きました


英新国王チャールズ3世の
戴冠式に映り込んだ
黒衣の人物の正体は…?

これはyouTubeの内容です。詳細はそちらでご確認いただけます。
Royal fans claim to spot the Grim Reaper among guests at King Charles coronation
Royal fans claim to spot the Grim Reaper among guests at King Charles coronation thumnail
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「ロンドン塔をはじめとして、心霊スポットも多い」と言われるイギリスですが、5月6日にウェストミンスター寺院で執り行われた新国王チャールズ3世の戴冠式にも、不思議な現象が話題になりました。英国の伝統を見せつけるような豪華なパレードと荘厳な儀式は世界中に生配信され、そのカメラワークや演出の巧みさにも賞賛が集まりましたが、一部、奇妙なものが映りこんだというのです。

具体的には戴冠式の直前のシーンで、真っ黒い人影が堂々と横切っていった場面です。映像を見ていた世界中から「あれは何だ?」「死神か?」と騒動になりましたが、何事もなかったかのように戴冠式は進行します。

後日、あの死神のような人影はウェストミンスター寺院で働く従者(バージャー)だと説明されました。着用していた儀礼用のローブが黒かったために、世界をザワつかせたわけです。しかし、あれだけ完璧な段取りと華麗なカメラワークで進行した戴冠式で、うっかり写り込むことは考えにくいでしょう。つまり、バージャーが横切ることも戴冠式の演出だったとは考えられないでしょうか。もちろん、それは不吉な意味合いではなく、タロットの「死神()」から「変革を含む再生を象徴させる」意図ではないか? そんな深読みをしてしまいます。

※「苦境」や「終末」、「解体」など、物事を終わらせることや、根本的な部分から考え直す必要性、価値観からの解放などを意味するカード

阪神が「アレ」して
「呪いのカーネル・サンダース」が福の神に転生したという説を唱える人も…

dotonbori canal, osaka, japan
Nikada//Getty Images

2022年に「予祝」として、ハイタッチや勝利者インタビューを試合前に行った阪神タイガースですが、実際は勝利を引き寄せることなく苦戦を強いられたことはご存じのとおり。2023年はむしろリーグ優勝を「アレ」と伏せた表現に徹し、ペナントレースから日本シリーズまでを制しました。そうして1985年以来、38年ぶりの日本一という大いなる栄光を迎えるには、「黙して語らない秘術」のほうが有効だったようです。

さて、阪神優勝で想起されたのが「カーネル・サンダースの呪い」。これは1985年のリーグ優勝の際、喜びに高ぶった阪神ファンがケンタッキーフライドチキンのカーネル・サンダース人形を道頓堀に投げ込んだことに始まった負のジンクスです。

その年は日本一に輝いた阪神タイガースですが、翌年から連敗や主力選手の故障、球団内部にも不幸が続き成績は低迷。この不振は、「道頓堀に投げ込まれたカーネル・サンダースの呪い」とまで囁かれるようになっていました。

一説には、道頓堀川の戎(えびす)橋というスポットも要因だったとか…。戎は海の向こうからやってきて福をもたらす神ですが、それにちなんだ場所から外国人の人形を落としたことは、「福の神を海へ返すような所業だった」というわけです。よく見れば、えびす様とカーネル・サンダース人形は似ている…ようにも見えます。

2009年には当該人形は引き揚げられ、阪神タイガースも日本一になり、道頓堀・戎の地に外来の福の神の聖性はよみがえったと言えるかもしれません。「この福が、2025年の大阪・関西万博まで続くように」という祈りも始まっています。

実話怪談ブームの中で
改めて丁寧な調査も必要
と気づかされた事態も

2020年頃から実話怪談ブームです。古典怪談や創作怪談との違いは、「友だちの誰かさんから聞いた話なんだけど…」という実話性があるところ。その話自体がホントかどうかはともかく、不思議な体験を聞き集め、語り直すのが実話怪談です。それは出版物やトークイベントのみならず、YouTubeなどの配信メディアも舞台にして語り手と聞き手を広げています。

そんな実話怪談とも呼応して、「呪物」にも注目が集まっています。怖い話を披露しつつ「それがこの呪いの人形です……」「これを手にしてから怪奇現象が……」と現物を提示できることからビジュアル映えもよく、メディア(ムーを含む)での紹介も急増。その呪物もいろいろで、髪が伸びる市松人形などのように関係者(死者)の念や霊が作用しているいわくのものもあれば、呪いの藁(わら)人形など呪術に使う(使った)もの、宗教や祭祀に用いられる(用いられた)呪具までさまざま。物品自体が最初から呪いを帯びているわけではなく、使用者や所有者のエピソードによって呪物となる過程は興味深いものです。

ですが、2023年はその物品に怪談とは別の文脈を抱いている人との衝突や、歴史的な位置づけとのズレが明らかになった事例もいくつかありました。

その一つとして呪物コレクターのはやせやすひろ氏が、「呪いの木札」として語られたものが震災復興にまつわる祈願「被災松の木札」のものだったことが明らかになった事例が印象的でした。物品そのもの、その背景の関係者が実在する場合、個人的な怪奇体験だけで来歴を語っていいのか。丁寧な調査と裏づけによる配慮が必要になることを、メディア側としても再認識した重要な事例と言っていいでしょう。

今後、怪談側には怖がらせるだけでなく、より丁寧な調査によって「いかにしてそれ(提示している現物)が呪をまとったか」を語っていく必要があります。いずれにしても、博物館に収蔵されにくい民間呪具や個人の思いを宿した骨董が、語りとともに受け継がれることは貴重な歴史遺産となるのでしょう。