戴冠式を2023年5月に控えるチャールズ国王が、王室の中枢たるバッキンガム宮殿にメスを入れたようです。

多くの犠牲者たちが告発したことによって明らかになった、アメリカの実業家である故ジェフリー・エプスティーンが企てた児童買春組織。拘置所で謎の死(自殺と報道)を遂げたものの、その片腕となっているギレーヌ・マックスウェルへの追及は継続中のこの事件。それに深く関わっていたと言われるアンドルー王子は、ついに王室の“中枢”とも言えるバッキンガム宮殿から追い出されることになったと「ザ・サン」が2023年1月25日付のニュースで伝えています。

内務省は2023年1月、年間300万ポンド(およそ5億円)におよぶ24時間武装警備を王子からはずし、その費用を王室が負担することになったと同紙で明らかにしていました。その後、チャールズ国王は現在改修中のバッキンガム宮殿内にあるアンドルー王子のオフィスを閉鎖。運び出した王子の荷物は元には戻されず、2019年公職から退いた王子のスタッフチームも解体し、住所として使用することも許可しないとのこと。

2023年1月25日(水)には同時に、アンドルー王子が名誉としていたグレナディアガード(近衛歩兵連隊)大佐の地位が、カミラ王妃に贈られたことも発表されました。

同紙は王室関係者による「王室での彼の活動は公式におしまいになります。国王はアンドルー王子が公務に就く王族ではないことを明確にしました。(アンドルー王子の活動は)彼一人でやっていることです」というコメントを引用しています。

これは実質、「アンドリュー王子はチャールズ皇太子によって王室から"追放"されることを意味している」と各紙が伝えています。

the king and queen consort visit scotland
Pool//Getty Images

アンドルー王子の疑惑と示談撤回の動き

被害者から未成年者への性的暴行を米国で訴えられたアンドルー王子は、米国からの捜査協力を長期間拒否。2015年までは王室も容疑を否定していたものの、2019年世論の高まりを受け、王子を公務から外しました。状況打開のため王子がようやくテレビインタビューに応じると、その内容のひどさから評判はさらに悪化。2022年1月には訴え自体を否定するべく、王子が米国で提出していた審理却下請求が正式に無効とされました。その結果、残っていた公職や地位も返上しています。

そうして2022年2月15日(火)、示談は成立。これは、「(刑事から)民事訴訟に移行することを阻止するためのもの」と見られています。

しかし、年をまたいだ今月2023年1月になって、エプスティーンの片腕だったギレーヌ・マックスウェルが、被害者とアンドルー王子が「会った記憶がない」「一緒に映っている写真もフェイク」と獄中インタビューで語ったことから、示談撤回に向けて動き出したと「ザ・サン」紙が報道。「そのための膨大な費用を捻出するため、王子が母エリザベス女王の遺産を含む財産を“法廷入札(legal bid)”にするよう企んでいるようだ」と伝えられたばかりでした。

これを阻止するためだったかどうかは不明ではあるものの、示談を撤回するとなれば、これまであやふやにされていた部分が明らかになるほか、2015年に王子の疑惑を否定するために通常は秘匿しておくべき被害者の実名を、わざわざ記載してまで非難してしまった王室の過去の「過ち」…これが掘り返されるのは必至。

「王室の広報」たる「BBC」とのインタビューにおいてすら、すでに逮捕状が出ていた時点でジェフリー・エプスティーンを娘ベアトリスの誕生に招待していたと図らずも漏らしてしまった王子では、長期にわたる裁判で王室にダメージを与えないと考えるほうが難しいと言えます。

「インディペンデント」紙に対し、「王室への懸念」を示す王子に近い関係者はこうコメントしています。

「ウィンザーのロイヤル・ロッジで“一人ぼっちで”過ごしているため、“世捨て人になりつつある(becoming a recluse)”のではないかと懸念しています」「王室での役割がもうないのに、彼は王室での役割をまだ望めるという幻想に固執してしまっているのです」

犯罪の真相は闇の中とは言え、性犯罪の容疑者を18歳の娘の誕生日に招待するような“感覚”は、彼のお仲間を除き、もはや誰からも退けられるものであることを齢62歳にしてようやく実感することになったと言えるでしょう。