イングランド銀行は、「現行の故エリザベス女王の肖像が印刷された紙幣と、新たに造幣されるチャールズ新国王の肖像画印刷された紙幣双方が、しばらく同時に流通する」と発表しました。チャールズ国王の肖像をあしらった通貨は2024年半ばまで流通しないと予想されますが、イングランド銀行は現地時間2022年9月26日に、年末までに紙幣に印刷されるチャールズ国王の肖像画が発表されると述べています。

イングランド銀行の声明によると、チャールズ国王の肖像画は5ポンド札、10ポンド札、20ポンドと50ポンド札に、現行の故エリザベス女王の肖像画と置き換える形で印刷され、それ以外のデザインの変更は行われないと明らかにしています。

つまり、故エリザベス女王の肖像画付きの通貨が一夜にして消えることはありません。英王室の指示、すなわち「君主の交代による環境と財政におけるインパクトを最小限に抑える」ため、「故エリザベス女王の肖像画付きの紙幣は、摩耗もしくは破損が生じたときにのみ流通から取り除かれる」と、イングランド銀行は述べています。チャールズ新国王の肖像画付きの紙幣は、「紙幣全体の需要の増加と摩耗した紙幣を置き換える形で新たに造幣される予定だ」と「ニューヨーク・タイムズ(New York Times)」は伝えています。 

チャールズ国王
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硬貨はどうなる? 

同様の変化が英国のコインにも起こる予定です。英国王立造幣局によって同日2022年9月26日に発表した声明では、「チャールズ新国王の肖像画が入った硬貨の製造と流通までに少なくとも数カ月かかる」と言っています。また、この硬貨の移行も徐々に行われる予定です。そして故エリザベス女王の肖像画が入った硬貨も、チャールズ国王の肖像画が入った硬貨と共に流通し続けます。故エリザベス女王の肖像画が入った硬貨は現在300億枚近くあり、前述の紙幣と同様損傷した場合か硬貨の需要が高まったときのみ交換されます。英国王立造幣局の最高責任者であるアン・ジェソップ氏は、「今後何年間にもわたって、故エリザベス女王の肖像画が入った硬貨とチャールズ国王の肖像画が入った硬貨が双方が同時に流通します」と述べています。 

英国ポンド
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硬貨に描かれる予定のチャールズ国王の肖像画の詳細は、いまだ明らかになっていないものの、この過程には君主の高位顧問団である枢密院(すうみついん)による許可が欠かせません。現在、流通している故エリザベス女王の肖像画が入った硬貨では、女王は右を向いています。17世紀、チャールズ2世が統治していた時代から、エドワード8世時代を除いて君主たちは反対の左側を向いていました。英国王立造幣局は、チャールズ国王の肖像画が左右どちらに向くかもいまだ明らかにしていません。

エリザベス女王の逝去に伴い、肖像画変更を検討せざるをえなくなるのは硬貨だけではありません。切手、郵便受けなどから、ケチャップのボトルなど日用品に至るまで使用されているわけですが、君主の肖像があまりにも氾濫する状態には疑問の声が上がっています。