2020年7月21日(火)、83歳のチャン・ワンジ(萬吉)さんと彼の妻である84歳のシウウー(秀娥)さんは、わずか18回目のInstagramの投稿で、5万人フォロワーを獲得したことを報告しました。彼らのアカウント@WantShowAsYoung のフィードを覗いてみると、その2日後の投稿では10万人のお祝いをしており、それから2週間近く経った同年8月4日のこの記事の随筆時点で、彼らのアカウントには61万人以上のファンがいます。

 まさに飛ぶ鳥を落とす勢いでファンを増やしているこのアカウントの持ち主は、台湾中部にあるランドリー「萬秀洗衣店」のオーナーである張 萬吉&許 秀娥(チャン・ワンジー&シュー・シウウー)夫婦です(台湾では、結婚しても夫婦は別姓というのが原則です)。二人は70年もの間、この店を営んできました。

 Instagramを始めたきっかけは、「パンデミックによって意気消沈気味の皆さんに対し、少しでも元気になってもらうために」と、孫のリーフ・チャンさんから提案でスタートしたそうです。「このランドリーショップで持ち主から忘れ去られた各種の服を着用して、ポーズを決める写真を撮影してみたらどうか?」とリーフさんはアイデアを出したそうです。

facebookView full post on Facebook

 すると驚くべきことに、彼らのアカウントはすぐに「ニューヨークタイムズ」紙のスタイルページやアメリカのニュース番組「BBC」などにも取り上げられ、注目を集めていった…というわけです。

  張 萬吉&許 秀娥夫妻のアカウントが注目される理由は、「そのスタイルにもある」と言えるでしょう。スカイブルーのコンバースにグラフィックTシャツ、そしてプラスチック製のプレイボーイ風サングラスを合わせたルックは、ビースティボーイズの『ポールズ・ブティック』(1989年7月リリース)を彷彿とさせます。

 そしてそこに、現在再び流れが来ているベージュのスーツの袖をまくり、最先端のポーズで臨むスタイルは、まさに最先端のスタイルそのもの…。また、バケツ型の帽子にネオンカラーのフーデッドパーカの着こなしは、もはや忘れられた洗濯物ではなく、まるで「Off-White(オフホワイト)」の2020年春夏コレクションから飛び出してきたかのようにも思えるのです。

 この夫婦の孫であり、彼らの専任スタイリストでもあるリーフさんは、「おじいちゃんとおばあちゃんは、(パンデミックによって)何もできなかった」と「ニューヨークタイムズ」紙に話しています。そして、「毎日退屈そうにしている姿を見て、もっと楽しく明るい生活にしてあげたかったんです」とのこと。

 実際に世界各国で、ロックダウンや外出自粛そしてWFH(在宅勤務)などによって、ドレスアップする機会は減っているのは事実です。先日、英「ガーディアン」紙は「ズームシャツ(オンライン会議ですぐに使えるよう、机の後ろに置いて会議の際にすぐに使えるようにしているきれいなシャツやブラウスのこと)」という単語を、オンライン辞書サイト「Urban Dictionary(アーバン ディクショナリー)」に登録するほど、仕事のためのドレスアップを極力短時間にすることは世界レベルで一般化しつつあるのです。

 パンデミックにより店を開けることができない、 張 萬吉&許 秀娥夫妻はもちろん外に出る際は、最新の注意を払いながら生活しています。ですが現在は、これまでと全く違う生活を楽しんでいるのは@WantShowAsYoungを観るだけで一目瞭然です。

 「孫のリーフは、本当に独創的な子です」と、祖母のシウウーさんは「ニューヨークタイムズ」紙に話しています。また、「彼の豊かな想像力によって、私たちはこんなにも幸せな気分になれました。そしてその幸せを、他の人々にも共有することもできるようになりました」と続けます。

 2020年は苦難と憂鬱(ゆううつ)、そして東西の緊張など、ネガティブなニュースばかりで半分以上が過ぎてしまいました。そして、このパンデミックは寝て覚めたら解決しているような問題でもないことは、誰もが知っていることです。そんな状況の中でも日常の中に楽しみを見つけ、ポジティブな姿勢で臨むことの大切さを張 萬吉&許 秀娥夫妻は再確認させてくれたのです。

 このように、この「萬秀的洗衣店|WANT SHOW as young」(@WantShowAsYoung)のアカウントが、なぜここまで注目を集めているのかは、もはや説明するまでもありません。そしてこのInstagramには、以下のコメントのようにハッピーな言葉で埋めつくされています…。

「おじいちゃんとおばあちゃんが、忘れられた服にまた息を吹き込むのを観るのも素晴らしいことですが、何かを楽しむのに年齢制限はないということを証明してくれています。大切なのは、インスピレーションですね🌟」

「このアカウントを見つけられてラッキーです!」

 しかしながら当の張 萬吉&許 秀娥夫妻は、この突然の世界的な注目にかなり当惑しているようです。ですが、二人は本職のランドリーを辞めることなく、これからも続けてくそうです。そして、このチャンスを生かすかのように、いつも投稿の最後にはこう記しています。「🔔Please remember to pick up you clothes ❤️(忘れずに服を受け取ってください)」と…。

Source / ESQUIRE UK