出張や旅行の頻度が高く、空港や飛行機内で過ごす頻度が高ければ高い人ほど、旅に関するツールへのこだわりレベルも上がっていくでしょう。例えば、お気に入りの個人的アメニティセットをそろえたり、飛行機の座席やホテルの選択もしかり…。皆さんもそんな経験はありませんか?

時には、望むレベルが上がりすぎてしまうこともあります。そんな中でもスーツケースに関しては、お金をかけた以上の価値は確実に感じるものです。私(筆者:クリスタ・ジョーンズ)はこれまで、機内持ち込み可能なスーツケースをたくさん試してはいつもガッカリさせられてきました。Googleで検索して出てくるECサイトで購入したスーツケースなのですが、満足した試しがありません。すぐに壊れてゴミ箱行きになることも常。でも、このスーツケースとの出合いだけは、これまでにない稀なケースでした。

それが今回ご紹介するスーツケース、私がフライトでいつも目にしながらもなかなか購入する勇気が出なかったブランド、「RIMOWA(リモワ)」のスーツケースです。「オリジナル キャビン」という機内持ち込み用になります。

私がリモワにしたのは、「ステータスシンボルだから」とか「空港でビジネスマンやDJが集まるファーストクラスラウンジに溶け込みたいから」という理由ではありません。高級なものは品質も良いことが多いので、それが本当かどうかこのタイミングで確かめたかったのです。

そうして試してみた結果、このスーツケースが素晴らしさを実感することができたのです。

数あるスーツケースの中で
象徴的かつ歴史的な存在である

リモワのスーツケース
Esquire
公式サイト

ラグジュアリーな旅行の代名詞とも言えるリモワは現在、ルイ・ヴィトン、ディオール、ティファニーといった名だたる高級ブランドを抱えている世界的なグループ LVMHの傘下に入っています。しかしその始まりは、ドイツのケルンに構える家族経営の小さな工場でした。

リモワの創業は1898年。その名は、創業者の息子であるリヒャルト・モルシェック・ヴァレンツァイヘンの名前「Richard Morszeck Warenzeichen」からとったものでした。そんな彼は、1937年に誕生したブランド初のアルミニウム製スーツケースの設計に携わった張本人でもあります。では、なぜ1937年なのか?

リモアが創業当初から手掛けていたのは木製のスーツケースで、それを軽量化したことで人気を博していました。すると1937年、工場が火災に見舞われます。その結果、頑丈なアルミニウム製スーツケースを除くほとんどの在庫を焼失してしまいます。ショッキングな出来事ではありましたが、それと同時に「この先どういうスーツケースを追求していくべきか?」の回答をリモワは得たのです。

その後何年にもわたって、リモワのアルミニウム製スーツケースは進化し続けます。そうしてあの、パッと見てリモワのスーツケースだとわかる特徴的な溝のデザイン「グルーヴ デザイン」が1950年に誕生します。そのデザインは、第一次世界大戦の終わりにドイツで開発された世界初の全金属旅客機、「ユンカース F.13」から着想を得たものだと言われています。

1976年、リモアは再び革新をもたらします。映画クルーや写真家が持ち運ぶ高価な機材を、熱帯多湿地帯から極寒の風景まで、あらゆる種類の厳しい気象条件下でも守ることを目指したトロピカーナ(Tropicana)ケースを開発しました。その歴史は深く、頑丈で壊れにくいものがラグジュアリーなものにブランド化できたことに私は魅了されます。

リモアの歴史は実に深遠であり、私はそれだけでも非常に魅了されてしまいました。さらに…頑丈で破壊に耐えることを誇るモノが、(個人的に繊細かつ儚さも感じさせる)ラグジュアリーな方向へとブランディングされることができたことには、驚異的な魔法のようにも思えるのです。

フォルムと機能の融合

このようにリモワの歴史には興味深いものがあります。ですが、本当にその知名度に相応しい品質なのでしょうか? そこを自分でも確認しました。では、競合他社の製品との違いとはなんでしょうか?

私が持っている他社のアルミニウム製スーツケースは600ドル(約8万円)もしたものだったのですが、それとはまったく比較にならないほど、リモワのほうがもっと軽量で頑丈にできているように感じます。

以前、リモワの機内持ち込むサイズではなく、預け入れサイズの大型スーツケースを持っている人から、「1回の旅行でスーツケースが凹んでしまった」と聞いたことがありました。そうです、アルミニウムなんですから凹みます。ですが、簡単に壊れたり崩れてパーツがバラバラになったりすることなどはありません。凹むことによって衝撃は拡散され、壊れることを防いでいるのです。そうして中に入っている持ち物を、しっかり守ってくれているというわけです。

見た目の美しさという点からは、確かに凹みが気になる人もいるかもしれません。ですがこの特性があるからこそ、アルミニウム製スーツケースは軽量で壊れにくい魅力的なスーツケースたり得るのではないでしょうか。

ちなみに私は、この機内持ち込みサイズのスーツケースをすでに何度か使っていますが、ほとんど傷はありません。実は、この記事に掲載している写真は5回目の旅行後に撮影したもので、その頑丈さを確認していただけるかと思います。特別丁寧に扱っているわけではありませんが、私にとって手入れもとてもしやすく、新品のような状態を保つことができているのです。

機能は最低限

とは言え、リモワのスーツケースは「バッグの隅々にまでポケットが欲しい」というようなタイプの人には向いていないかもしれません。私のように、パフォーマンスとミニマリズムを重視する人には特におすすめです。正直に言ってこのスーツケースは、機能をふんだんに盛り込んだ豪華なつくりを追求したものではありません。実際、機能性は最低限で、それが私の好みでもあるのです。

実際私は、いくつものポケットや隠し収納スペース、何層にも仕切り板があるようなスーツケースは好きではありません。「自分で好きなように収納できる、すっきりとしたコンパートメントのものがよい」と思っています。そのほうが、実は荷造りのスペースが確保できると考えています。

今回試した「オリジナル キャビン(ORIGINAL Cabin)」の内部にあるのは、リモワの特徴である「フレックスディバイダー」という中仕切り板だけで、マジックテープを調整すれば荷物の量に合わせて高さを変えられる大変便利なもの。他のスーツケースと違って、取り外すことができるのも大きなポイントです。

なぜかと言えば、取り外したおかげで収納スペースが広がることもありますし、そもそも中仕切り板が不要な場合もあるからです。この「フレックスディバイダー」と、他に余分なものがないオープンな収納スペースが私のお気に入りです。

また、ホイールとハンドルに関してですが、これはどのスーツケースにもついている機能ですが、リモワのものは別格です。まるでホイールに油を塗ったかのような、華麗な滑りを実感させてくれるのです。ハンドルはトランスファー(乗り換え)で急いでいるときに強く引っ張りながら走っても、壊れそうな気配すら感じません。特許取得済みのデザインのホイールは道の亀裂や割れ目にも対応することができていて、何かに引っかかって足が止まるといったこともないでしょう。

リモワのケースを
手に入れるべき理由

とは言え、リモワのスーツケースが「お財布に優しい価格」でないことは間違いありません。ですが、今の私には納得できるものでした。確かに新しい競合ブランドは安いかもしれませんが、材料とその製作にもお金をかけているように感じられません。これに対してリモワのスーツケースのほとんどは、その80%が手作業でつくられているとのこと。そこには約200もの部品が存在し、約90もの工程そして33人の技術者の存在します。そうして1つのスーツケースを、約1時間半かけてつくり出しているということなのです。

長く使うものに投資するとき、最終的には1つの議論にたどり着くものでしょう。それは、「トップレベルの品質のものを選ばず中級品を選んでしまったが、これで正解なのか?」ということです。

一生モノのスーツケースが欲しいなら、500ドル(約7万円)もかけて5年後買い換える羽目になるようなものを選んでいいのでしょうか? 「一生買い替えなくていいものに、1400ドル(約19万円)出して購入したほうがよい」と思いませんか? リモワの製品には生涯保証が付いてきますし、修理もしてくれますので…。

今度空港に行った際に自分の手元ではなく、横目でリモワのスーツケースを見かけたときには、きっとこの記事の内容を思い出すことでしょう。

Source / ESQUIRE US
Translation / Yuka Ogasawara
※この翻訳は抄訳です。