9の愛すべき珍飛行機、怪飛行機 ― なぜこんな飛行機が誕生することになったのか【Part 2】
この“変てこさ”がいいね、と言ってしまえばそれまでですが、実はその多くは、航空力学理論の立証や発展のためにつくられたものだったのです。
『8の愛すべき珍飛行機、怪飛行機【Part 1】』に続く第2弾、見るからに奇怪な姿をした飛行機の数々をそろえました。
スケールド・コンポジッツ社 ホワイトナイトツー / The Scaled Composites White Knight Two
まるで兄弟で会場を飛ぶ、トビウオのように見えるこの飛行機は、2008年に初飛行を行ったスケールド・コンポジッツ社製「ホワイトナイトツー」です。
ふたつある胴体間に、準軌道(サブオービタル)を飛行する宇宙船を乗せて運ぶために設計されたもので、最大で高度7万フィート(約2万1000メートル)まで上昇することができ、パイロットは右側の胴体に乗って操縦します。
ヴァージン・ギャラックティック社は、宇宙船である「スペースシップツー」を、この「ホワイトナイトツー」で高度5万フィート(約1万5000メートル)まで運ぶことを計画しています。
そこで切り離された「スペースシップツー」はさらに上昇を続け、70マイル(約11万2000メートル)に近い高度の準軌道に到達する見込みです。
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ブローム&フォス BV 141 / Blohm & Voss BV 141
この「BV 141」は、飛行機に求められているのは対称形でないことを示す好例です。
第二次世界大戦の時代に登場したこの驚異のドイツ機は、偵察機として設計され、数機が製造されて実際に飛ばすまではしました。ですが結局、同じく奇妙な姿をした「フォッケウルフ Fw 189」との競争に敗れたため、フル生産には至りませんでした。
ルータン モデル202 ブーメラン / Rutan Model 202 Boomerang
一方、この飛行機が非対称なのには、まったく別の理由があります。
1996年につくられた「ルータン モデル202 ブーメラン」は、ツインエンジンのどちらか一方に不具合が生じた場合でも、依然として制御可能であるように設計された結果がこのカタチだということです。
マクドネル社 XF-85 ゴブリン / McDonnell XF-85 Goblin
この飛行機は、第二次世界大戦が終わってからまだ間もないときに、いわゆる“パラサイト・ファイター”としてつくられました。
つまり、爆撃機「B-36」の爆弾倉から出撃することを目的としていたのです。ホイト・S・ヴァンデンバーグ将軍は、1948年12月の『ポピュラー・メカニクス』米誌上で、この小型戦闘機が新しいアメリカ空軍において、いかに有用であるかを説明していました。
しかし、アメリカ軍は1949年に、この「 XF-85 ゴブリン」及びその他のパラサイト・ファイターの開発計画を白紙撤回し、空中給油法の開発に専念することになったのです。
プレグナント・グッピー(身篭ったグッピーの意) / The Pregnant Guppy
巨大な上に運ぶのが面倒な形状の荷物を、遠くへ移動させなければならないのにユーホール(アメリカの引っ越し用トレーラー)では間に合わない…。
そんなことも要望されるようになる時代が到来しました。
NASAはアポロ計画に必要なロケットの部品を移動させる必要に迫られたため、ボーイング「377」を改造して、この奇妙な姿の飛行機を建造することになりました。
こうして生まれたのが、「プレグナント・グッピー」です。その後、「B-377 スーパーグッピー」へと受け継がれます。
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H-4 ハーキュリーズ 2 “スプルース・グース” / H-4 Hercules 2 "Spruce Goose"
重量200トンの怪物「H-4 ハーキュリーズ 2」の“スプルース・グース”というニックネームは、木製フレームの材料であるスプルース(トウヒ:マツ科の常緑針葉樹)にちなんでつけられました(主に使われていたのは、実はカバノキでしたが)。
この重量級の輸送機は、これまでにつくられた中では、最も大きい固定翼式水上飛行機であり、映画制作者で大実業家のハワード・ヒューズによって建造されました。
つくられたのは1機のみで、現在はオレゴン州にある博物館に展示されています。
グッドイヤー・インフレートプレーン / Goodyear Inflatoplane
絶対に不可能と言われていたインフレータブル(空気で膨らませる)飛行機ですが、1950年代にタイヤと小型飛行船のメーカーであるグッドイヤーが、飛行可能なインフレータブル飛行機の試作機をアメリカ空軍のために製造しました。
悲しいことに、「風船のように破裂する可能性がある飛行機は、軍事的用途は多くない」ということが判明すると、アメリカ軍はこの計画を中止してしまいます。
変てこ飛行機ファンとしては、この「インフレートプレーン」はぜひとも実現させてほしかった1機です。
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夢の実現 —— デ・ラックナー HZ-1 エアロサイクル / And Because You Just Can: de Lackner HZ-1 Aerocycle
操縦者が自らのバランスを取ることで、その方向への推進力へと変えたDe Lackner Helicopters(デ・ラックナー・ヘリコプターズ)の「HZ-1 エアロサイクル」は、単独で偵察飛行ができるようにすることと、ボンド映画の悪役が座るような最高の椅子をつくりたいという、ふたつの夢を追い求めて開発されました。
皆さんの予想通り…数度の墜落事故によって、このアイディアは頓挫しました。そして、夢は生き続けていた…のですが、もはやドローンとカメラ技術の発達によって、操縦士は必要なくなったようです…。
科学的発見のために —— エアロジェリー / For Scientific Discovery: AeroJelly
外見はそれぞれ異なっていても、飛ぶことに関してはほとんどが非常に似た理論的アプローチをとっている…それが飛行機です。
空気より重い飛行機の場合、ほとんどは(ヘリコプターのような)回転ブレードか固定翼によって生じる揚力と、推進力を生むエンジンがベースになっています。
まったく新しい飛行方法を研究者が発明するのは非常に稀なことですが、それを成し遂げたのが、ニューヨーク大学の応用数学者、レイフ・リストロフ氏です。
次のページで、その飛行論理を解説します。
リストロフ氏がつくり出した自然に安定する飛行装置、エアロジェリーは人間の手のひらよりやや大きいくらいのサイズで、4枚の羽根ではばたく姿は、まるでクラゲが空中を漂ってかのようです。
「私の研究室では航空力学と、羽根のはばたきによる飛行の研究に関心があった」と、リストロフ氏は語っています。
「フィードバック制御を使わずに、安定するようなものを設計しようと思った」とのこと…。またエアロジェリーは、ただ風変わりで珍しいだけのものというだけではなく、「私と同僚たちを、フレキシブルな羽根のはばたきの背後にある物理学の解明に駆り立ててくれる」と、リストロフ氏は語っています。
「これはまったく未知の領域なんだ」とも言うリストロフ氏。フレキシブルな羽根ははばたくたびにカタチを変えるため、不思議な空気力学的特性を示すのだとか…。
「羽根のはばたきによって生じる空気の渦が、羽根の動きに影響を与え、また、羽根同士も互いに影響を与える。非常に興味深いんだ」とのことです。
さらに続きを、下の動画でご覧ください。
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Source / Popular Mechanics
Translation / Satoru Imada
※この翻訳は抄訳です。