アプリケーションを利用し、自分が運動した時間10分につき1ユーロがスポーツ環境改善のために寄付されるアディダス主催の期間限定キャンペーン「MOVE FOR THE PLANET(ムーブ・フォー・ザ・プラネット)」。その認知拡大のため一役買って出た柔道金メダリスト兄妹、阿部一二三・詩さんにインタビュー。ライバル関係、将来のビジョンなどをうかがいました。
エスクァイア:3度目の世界選手権兄妹同時制覇、おめでとうございます。同じ競技でも対戦することはないお二人は、お互いからどう影響を受け合っているのでしょうか?
阿部一二三氏(以下、一二三。敬称略):練習もほぼ一緒にはしないのですが、試合で妹が先に勝ってくるっていうのはすごく刺激になります。誰か別の、仲のいい選手が勝ってくるよりも、妹の勝ちは別ものです。いい意味でのライバル関係――自分の試合でも負けられない、「絶対勝たなければ」と切磋琢磨できます。
エスクァイア:練習でも試合でも、一緒にならずとも切磋琢磨する…とは、どういう心情なのかもう少し具体的に知りたいです。
阿部詩(以下、詩。敬称略):兄が一試合一試合勝ち上がっていくのを見ていると、私も「負けられない」という気持ちが芽生えるということですね。「対戦相手に負けられない」というより、「その試合に負けられない」という感じです。
エスクァイア:お互いに何かケアしてあげる、といったことは何かありますか?
詩:チーム競技ではないので、基本的にカバーし合うという考えはありません。個人競技なので、自分が失敗したら自分で取り返しにいかなければならず、より正確に言うなら、「切磋琢磨」は稽古の中でしか存在しません。自分がきつくなったときに、「あの人が頑張っているから頑張ろう」と思う。柔道で言う切磋琢磨というのは、そういう存在があってこそ成り立つことだと思っています。
一二三:団体戦はまた別ですが、「高め合う」とはそういった刺激の仕合いになります。他の人が努力する姿を見る、ということなのかもしれませんね。妹の試合を見るときもありますが、勝っているという話が耳に入るだけでもとても刺激になります。
エスクァイア:アスリートが競技以外の活動や社会貢献を行うことが、以前よりもはるかに求められている昨今、チャレンジしたいと思っていることや現役後のビジョンがあれば教えてください。
詩:残念ながら、日本の柔道人口は減少傾向にあります。なので、私は引退後に「これだ!」と思える自分の道を見つけて、柔道界を盛り上げるために可能な限り貢献していきたいですね。一つの道場を開くだけでなく、複数の道場を立ち上げて広げていく…。そうしていけたら、私の夢も大きな現実になっていくのでは…と思っています。
一二三:ただ勝負の世界というだけでなく、「柔道自体、素晴らしいもの」ということを広めていきたいですね。今度、自分たちで「ABE CUP 2023 -JUDO School&Friendly Match-」という大会を開催させてもらうのですが、少しでもそういった機会を増やして、柔道の普及のために努力していきたい。今だからこそ、自分たち自身で大会を開催することに意味があると思っています。今後も、そういう取り組みを増やしていきたいですね。
エスクァイア:そういった取り組みを始める過程で学べたことはありますか?
一二三:僕たち兄妹も、やはりこのような場でテレビごしでしか観ることができないような憧れの選手にお会いする機会を得ると、とってもうれしい…ワクワクします。そんな実感を今日再確認できました。柔道は、選手と観客のタッチポイントが少ない競技です。野球やサッカーは試合だけでなく、キャンプなどでも交流がありますよね。そういう機会を、柔道でももっと増やしていくと変わるのでは…と思っています。
詩:選手を会えない存在じゃなくて、会える存在にする。ものすごく頻繁に会える存在である必要はないと思いますけど、少しでも会える確率が上がるようにできれば…。
一二三:僕たちは、海外の試合に出場することが多く、日本での試合には出場する機会があまりありません。だからこそ、国内でちょっとでもイベントで交流できるようにすることが大事だと思っています。
エスクァイア:柔道人口を増やすのに、次世代の子どもたちの存在は重要になってきますか?
一二三:子どもだけではなくて大人の皆さんも、もちろん重要だと思っています。
詩:とは言え、高校生くらいになってから柔道競技を始めようとしても、なかなかハードルが高いものです。小学生…そのくらいの歳から、柔道に触れてもらえたらいいなと思って活動しています。
MOVE FOR THE PLANET(ムーブ・フォー・ザ・プラネット)
2023年6月1日(木)~12日(月)の期間中、ひとりひとりの運動を未来のスポーツ環境を守るアクションへとつなげる、新たな世界規模のサステナビリティムーブメント。「アディダス ランニングアプリ」での事前登録が可能となり、誰でも参加可能。アプリにて設定された全34種類の幅広いアクティビティのいずれかを10分間行うたびに、アディダスが未来のスポーツ環境を守るために1ユーロを寄付(全世界合計上限:150 万ユーロ)。寄付金は、スポーツを通して社会変革を目指すプロジェクト「COMMON GOAL」を介し、世界各地のコミュニティでスポーツを通じた環境保護の意識啓発や活動を促すプロジェクトの支援に充てられる。
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