【 INDEX 】

米国サンディエゴのにぎやかな通りに面したガラス張りのフィットネスジムの中では、ファッションモデルがバーベルを使った「ヒップスラスト(お尻を引き締めて足の付け根に乗せたバーベルを押し上げる筋トレ)」のエクササイズをやっています。

一方、ブラジル柔術の格闘家がうなり声をあげながら、約143kgものウエイトを付けたバーベルを持ったままでボックススクワット(椅子に座るようにひざを曲げて行うスクワット)をしている姿も見えます。

どちらもジムに来る目的は同じ、お尻です。彼らはひたすら、自分のお尻を鍛えることだけを目標としているのです。

臀筋の筋トレが重要な理由とは?

43歳のプロトレーナーであるコントレラス氏は、臀筋の偉大なるパワーをあらゆる人に伝えることをライフワークとしています。そして、自分のあらゆる知識を新著『グルート・ラボ:肉体強化トレーニングの理論と実践』に注ぎ込みました。

「臀筋のトレーニングは、実に多くの動作のカギを握っているのです」と、彼は訴えます。「そこは、パワーを発揮するための原動力なのです」とのこと。

【理由1】ケガのリスクを軽減 ― 鍛え上げた臀部筋の役割と機能

引き締まったお尻になれば、ジーンズをかっこよくはきこなせるのはもちろんです。が、お尻にはそれ以外にもっと重要な役割と機能があります。

臀部筋をよく鍛えて軽快に動かせるようになると、ひざやお尻、背中のケガのリスクを軽減しながら予防も期待できるのです。さらに、ジムのトレーニングでもスポーツをする場合でも、その力は発揮されます。五輪の短距離走選手からアイスホッケー選手まで、トップアスリートたちは常にほぼ例外なく、力強いお尻の持ち主であることはご存知でしょう。

【理由2】力強い大臀筋は骨盤を安定 ― デスクワークの人こそ、お尻の筋トレが大切

大臀筋、中臀筋、小臀筋で構成されいる臀部の筋肉をトレーニングすることは、デスクワークや座ってばかりの生活をしている人にとって、いっそう重要なことと言えるでしょう。

一日中座っ放しでいると、お尻の屈筋(関節を曲げる働きをする筋肉)が固くなり、臀部筋が弱っていきます。すると股関節を開くための基本動作である「ヒップエクステンション」と呼ばれる動きが難しくなってしまうのです。

力強い大臀筋は骨盤を安定させるほか、脊柱を支え、背中や腰の痛みを軽減する効果も期待できます。

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Sebastian Kaulitzki
画像は、中臀筋(黄色の部分)、小臀筋(緑の部分)、大臀筋(赤の部分)です。

「大臀筋(大殿筋)はスイスアーミーナイフのように何層にも重なった仕組みになっています」と、コントレラス氏は言います。それではこれから紹介するトレーニングで大臀筋を強化しましょう。

【初級編】基礎トレーニング|お尻を鍛えて美尻になろう

臀部筋を動かして行うヒップエクステンションは、人間にとって欠かすことのできない重要な動きです。毎日座ったままで臀部筋を動かさずにいると、身体はどうやって動かせばいいのかを忘れてしまうのです。そこで臀部筋を目覚めさせてやれば、以下の3つの基礎運動スキルを上達させることができます。

【1】ランニング

ヒップエクステンションをすると、走るときに地面を思いきり蹴ることができるようになるほか、歩幅が伸びるので一歩踏み出すたびに少し遠くまで進めるようになるでしょう。「お尻の小さな短距離走者など見たことがありますか?」と、コントレラス氏は問いかけます。答えはもちろん、「ノー」ですよね。

【2】ジャンプ

高くジャンプしたいのなら、臀部筋を伸ばす必要があります。瞬発力のある力強い臀部筋が足首およびひざと反応することによって、高くジャンプできるのです。この原動力となるのが、強力な臀部筋の収縮です。

【3】ウエイトトレーニング

スクワットや「デッドリフト(床上のバーベルを両手で腰まで持ち上げて直立する競技)」の最後の動作は、骨盤が完全なニュートラルポジション(骨盤が前傾でも後傾でもなく、本来の正常な位置にある状態)になる姿勢をとります。

もし、この姿勢がうまくとれないのなら、臀部筋を思いきり強く引き締めてみましょう。

【中級編】臀部筋を効果的に鍛えるためのトレーニング2種目

通常のトレーニングメニューに加えて、ここで紹介するエクササイズを週に3回ほど行えば臀部筋を強化し、ヒップアップ効果が期待できます。

  • 「パルス ゴブレット スクワット」の効果的なやり方
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PETE SUCHESKI
「パルス ゴブレット スクワット」

これはダンベルを胸の高さに持ち、約2.5kgのバーベルプレートをかかとの下に置いて行うスクワットです。

最初に太ももが床と平行になるまでしゃがんだ姿勢をとり、さらに腰を落としたあと、太ももと床が平行になる最初の姿勢より、少しだけ上の位置まで戻したら1レップ終了です。

要するに、完全にしゃがみこむフルスクワットの下半分のみの動きを行うのです。これを20レップ続けます。

  • 「ベンチヒップ アブダクション」の効果的なやり方
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「ベンチヒップ アブダクション」

ベンチの上でひじを支えにして右半身を下にした横向きの姿勢をとり、両足をベンチから浮かせます。

次に右足を曲げます。そして左足をまっすぐ伸ばしたまま、左側のお尻が緊張するのを感じるまで下ろしていきます。そして、できる限り高く左足を上げましょう。

これで1レップです。12レップ繰り返したら反対側も同様に行います。

お尻を効果的に鍛える|プロトレーナー解説

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「グルート・ラボ」を設立したトレーナーのブレット・コントレラス氏。

ようこそ、コントレラス氏がトレーナーをするジム「グルート・ラボ 」へ! 別名「お尻(臀筋)の研究所」とも言いましょうか。

なにせ170平米ほどのワンルームのこのジムには、トレーニングマシンがぎっしりと並び、その様子は熱心なジム愛好家でさえ目がくらむほどです。

「ブーティ・ビルダー」と呼ばれる黒くて巨大な機械、ふくらはぎに当てるパッドの付いた奇妙な機械、フック付きのウエイト、腰に巻くベルトまで、ここにはありとあらゆる種類のトレーニング道具があります。ちなみにベルトは、腰に巻いて臀筋群(お尻の筋肉)を引き締めると同時に足を開くというトレーニング用です。実際にやってみるとすごくハードなはずです。

トレーニング室内には(いま流行りの)大音響の音楽も流れていませんし、「カールトレーニング(立った姿勢で、逆手に持ったバーベルやダンベルをひじを固定したまま前腕だけで、太ももから胸の高さまで上げ下げする運動)」や、「ベンチプレス(ダンベルを持ちベンチに仰向けになりダンベルを胸の横にゆっくり下ろす運動)」をする人は1人もいません。

ここにある唯一のベンチと言えば、中心部のごく狭い範囲に詰め物の入ったタイプがあり、スクワットラックに固定されています。そこではアシスタント・トレーナーがほかのモデルに、「ボックススクワット」を指導しています。ちなみにいま(取材をした当日)ジムには、モデルが4人来ています。一方、スタッフが3人がかりでトレーニングマシンを必死に組み立てています。

この「グルート・ラボ」を設立したブレット・コントレラス氏と筆者を含めて、ここにいる誰もが目指しているのは、お尻の筋肉群の増強なのです。

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同氏は全米エクササイズ & コンディショニング協会(NSCA)の特別認定を受けたストレングス&コンディショニングスペシャリスト(C.S.C.S.*D)であり、かつ博士号を有するプロトレーナーです。

身長1m 90cm、体重110kgでがっしりとした体格のコントレラス氏は、この原動力を駆使して一大帝国を築いています。インスタグラムのフォロワーは74万人を超え、彼のオンライン筋トレプログラム「BootybyBret」は月間4500人もの閲覧者数を誇ります。彼は数々の大臀筋トレーニングマシンも独自に販売していて、ひざに巻いて使うレジスタンスバンドも大臀筋のトレーニング専用につくられています。

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お尻の筋トレ体験談

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BJI / BLUE JEAN IMAGES GETTY IMAGES

ドアのベルが鳴り、身体にぴったりフィットしたスポーツタイツを身につけたモデルが入ってきました。コントレラス氏のところにやってきた彼女に、彼は3種類のトレーニングをするようにと指示をします。彼女はすでにやり方を知っているらしく、すぐに身体を動かし始めました。

一方でわたし(筆者)は、ジムに来てわずか数分後、ブーティ・トレーニングの名づけ親であるコントレラス氏の指導のもと、ヒップスラスト用マシンのベンチで背中の上部を支えて仰向けになっていました。

そして、お尻と足を床にしっかりと押しつけた姿勢をとると、なんと約135kgのバーベルが腰の上に置かれたのです。

するとコントレラス氏から、「臀部筋を思いきり引き締めるように」と指示されました。これはお尻とバーベルを上に上げて、胴体をまっすぐに保つ動作になります。「必ずできますから」と言いながら、わたしの頭の位置を調整してくれるコントレラス氏の言葉を信じてお尻を引き締めると、バーベルが浮き上がり、上下運動を10回繰り返すことができました。

「ほらね、お尻の筋肉は思ったより強いんですよ」と、コントレラス氏はにっこりと語ってくれました。

Source / Men's Health US
Translation / Shizue Muramatsu
※この翻訳は抄訳です。