◇臀部の筋肉を鍛える重要性

 ある成人男性…コーリー・オルソンさんは27歳の頃、190cmの身長で体重は113kgの体格だったそうですが、感覚的には、その年齢の2倍は年老いていると自分のことを感じていたそうです。

 目覚めたときから仕事に向かう途中まで、常に腰に痛みを感じていたそうです。それは毎日職場で8時間デスクに座っているときも、仕事の後に毎週やっている趣味のソフトボールの試合でバッターボックスに立っていても痛かったそうです。また、ジムでバーベルを見るだけで、背筋が震えあがっていたそうです。

 彼は定期的に運動もして、いつだってスポーツをしていました。ですが、腰の痛みは常にあった彼は、あるとき、「何かが根本的に間違っているのではないか」と考え直したそうです。

 業を煮やして(平静であった心の動きが、怒りで激しくなり)、フィットネストレーナーにアドバイスを求めたところ、ある問題を指摘されたそうです。それは、オルソンさんの臀筋群(でんきんぐん=臀部の筋肉)の弱さだったのです。

 この事例は、オルソンさんだけに当てはまることではないでしょう。

◇臀筋(でんきん)の筋力が低下するとどうなる?

 アメリカ人の男性の多くは、グルートアムネシア(glute amnesia=臀筋群が麻痺し、筋力が低下する状態)という症候群が存在するほど、お尻を弱らせてしまう方が多いようです。これは身体の中でもっと大きく代謝的にアクティブな筋肉群を、座ってばかりの生活によって、柔らかなクッションのように変えてしまうから…ということ。

 ニューヨークのスポーツ医学のジョーダン・メツル博士によると、「どのようなスポーツや運動、筋トレを日々やっていたとしても、持久力、パワー、痛みの予防には臀筋の強度が不可欠なのです」とのこと。

 そうしてオルソンさんは、臀筋群を中心としたトレーニングを始めます。すると4カ月後には、背中の痛みはほとんどなくなったそうです。

 「他にも、次々と多くのポジティブな効果もありました。より身体が柔らかくなり、姿勢も改善し、筋肉も増加しました。階段を登ることからソフトボールをすることまで、すべてが改善されたのです」と、彼は教えてくれました。


◆怪我を防ぐために臀筋を鍛える

 お尻は、「仙骨(せんこつ=脊椎の下部に位置する大きな三角形の骨)」、「骨盤(こつばん=大腿骨と脊柱の間で身体を支える役割)」、「大腿骨(だいたいこつ=足の付け根からひざまでの太ももの骨)」などのいくつかのポイントに沿って、胴体と脚の間の大殿筋、中殿筋、および小殿筋という3つの異なる筋肉で構成されています。

・3つの臀部の筋肉群

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Courtesy of Sebastian Kaulitzki
画像は、中殿筋(黄色の部分)、小殿筋(緑の部分)、大殿筋(赤の部分)です。


中殿筋と小殿筋について

 この2つの筋肉は、脚を横に上げたときに大殿筋をアシストします。また、脚がまっすぐ伸ばしたときには太ももを外側に、腰を曲げているときには内側に回転します。

  • 鍵となる筋トレ: ベンチ サイド レッグレイズ

・大殿筋について

胴体をまっすぐになるよう支えてくれています。

  • 鍵となる筋トレ: シングル レッグ ヒップレイズ  

 臀筋群によって直立して歩くことも、お尻をあらゆる方向に動かしたり回したり、それに足を回転させることも可能にしてくれているのです。

 「弱いお尻では、腰、膝、ハムストリングス、臀部に大きな負担をかけてしまい、痛めてしまう可能性を高めてしまうのです」と、メツル博士は教えてくれました。

 博士は特に、これまで腰痛やアキレス腱炎症など、臀部の筋力低下が原因である可能性の状態にある多くの男性患者を見てきているのです。


◆より多くの馬力をつけるために臀筋を鍛える

 プロスポーツのスカウトたちは、お尻に注目しています。

 その理由とは、スピードと強さを必要とするすべての運動において、強いお尻が不可欠となるからです。メツル博士は、「お尻をエンジンのように考えて欲しい」と言っています。お尻は身体を前に進まさせたり、その他の筋肉群との相互作用によって、より大きな強さとスピートを繰り出しているということになります。

 好きな運動をしていても、充分に発達していないお尻で行っていては、芝刈機のエンジンで普通のクルマを走らせようとしているようなものというわけです。

頻繁に臀部筋を直接トレーニングしましょう!

 「リフティングでもジャンプでも、全力疾走、またはバスケットボールのシュートであっても、お尻を伸ばすことによってもたらされる爆発的な『押し出す』パワーを引き出すためには、臀部筋がその鍵となるわけです」と、メツル博士は説明します。

 この力はテニスのスマッシュや、ゴルフボールのインパクト、ジャンプの反発力や、重いデッドリフトを引き上げるパワーのためだけではありません。他にも、ハイキングやランニング、または雪かきをするときにも、より多くの持久力も与えてくれるそうです。 

◆臀筋を鍛えるトレーニングを入れる

 CSCS(認定ストレングス&コンディショニングスペシャリスト)であり、スポーツ科学者のブレット・コントレラス博士によると、一番の間違いは、お気に入りの運動やスクワットやランジのようなトレーニングだけで、「自分の臀部筋が鍛えられている」と思い込んでしまうことだそうです。

 「全体的な強さとパフォーマンスを本質的に向上させるには、怪我を抑え、タイトなパンツへの憧れの見方を変え、頻繁に臀部筋を直接トレーニングする必要があるのです」とのこと。

◇ 臀筋を鍛えた効果と脂肪燃焼

 先ほどのオルソンさんのように、ニューヨーク市に住む25歳の法学生であるタイラー・フィオリロさんも、臀部筋の働きを自身の体験を通して理解できるようになりました。

 彼がルーティンでやっているレッグプレスに、臀部筋をターゲットにした"ヒップスラスト"と抵抗バンドを使用した"スタンディング・キックバック"の筋トレを追加したところ、彼のパフォーマンスは劇的に向上したそうです。

 「2つとも非常に小さな動きなのですが、数カ月後にはスクワットとデッドリフトの私の目標を約23キロも上回ることができました」と、フィオリロさんは教えてくれました。

 フィオリロさんは臀部強化の運動を追加して、トレーニングのプログラムを再構築したところ、パンツを買い直さなければならなくなったそうです。なぜなら、7kg近くも体重が減ったからです。

 臀部筋は、身体の中で一番大きな筋肉です。そのため臀部筋を鍛えることは、カロリー燃焼に大きな効果があるわけです。「臀部筋を鍛えるトレーニングを始めた男性たちから、いつもそのことを聞かされています。彼らは女性から褒められるようになるとともに、体格についての自信も出てくるわけです」と、コントレラス博士は教えてくれました。 

◆お尻(臀筋)を鍛えるために自分自身のパワーを生かす【筋トレのやり方】

 コントレラス博士も、主にお尻の付け根からコントロールされるヒップヒンジ(股関節を蝶番のように動かすことを意味します)は、ジャンプやデッドリフティングからゴルフボールを打つ動作に至るまで、すべてに運動に関係すると言っております。

 それでは、身体にパワーを発生させる筋トレのやり方をご説明しましょう。

1. ヒンジ(蝶番)― 殿筋を鍛える筋トレ

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Courtesy of +ISM

 お尻を後ろに引くと、ハムストリングスと臀部筋の周囲の筋肉と腱が活性化して伸びます。このことにより、科学者が「受動的弾性張力(passive elastic tension)」と呼ぶものが引き起こります。

 この力は、引き伸ばしたゴムバンドに蓄積されるエネルギーと同じものとお考えください。力を溜め込んで、本当に目一杯伸びていることを感じましょう。

2. エクスプロード(爆発させる)― 殿筋を鍛える筋トレ

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 お尻を前に戻すと、その緊張が利用されエネルギーが解放され、お尻が伸びる連鎖反応が起こります。 エクステンション(伸張)の終わりに近づいたら、完全に前に突き出していることを確認してください。

 そうすることによってお尻がロックアウトされ、臀部筋がより燃焼されるわけです。

Source / Men’s Health US
Translation / Kazuhiro Uchida 
※この翻訳は抄訳です。