[目次]

▼ 水断食の研究概要

▼ 脂肪量は減少後から変わらず

▼ 減量に効果的と見られる反面あくまで一例に過ぎない

▼ 長期間の水断食はリスクも。必ず専門家の助言を得ること


アメリカの人気格闘技団体「UFC(Ultimate Fighting Championship)」のダナ・ホワイトCEOや、英国のスポーツイベントプロモーターのエディ・ハーン氏が3日間の水断食(ウォーターファスティング)を行っています…。そんな話はニュースになるほど、食品を摂取せず水だけで行う断食(ファスティング)に関する世間の関心は高まるばかりです。

ですが、過酷すぎる栄養制限に対しては肯定派も否定派もいます。「水断食」はソーシャルメディアを席巻している最新トレンドですが、専門家たちによる細かな研究調査が進められています。先日は、「代謝」に特化した科学専門誌『Nature Metabolism(ネイチャー・メタボリズム*1)』に、「7日間の水断食」に関する最新の研究報告が掲載されました。そこでは減量効果だけでなく、健康改善効果についても論じられています。

水断食の研究概要

12名(女性5名、男性7名)の被験者がボランティアとして参加し、7日間の水断食に挑みました。期間中、口にしていいのは水だけです。断食前、断食中、断食後に採取した3000サンプルの血漿(けっしょう)タンパク質を分析しました。

水断食の分析結果:
脂肪量は減少後から変わらず

水が入ったコップを持つ男性
Tom Merton//Getty Images

断食開始から3日後、身体活動のエネルギー源がグルコース(ブドウ糖)から脂肪へと切り替わったことが分かりました。被験者たちの体重にも平均で5.7kgの減少が確認できました。これは、脂肪量と筋肉量が共に減少したことによるものであると考えられます。

7日間の断食の後、元の食生活に戻して3日後に追跡調査を行いました。それによると、断食によって減少した筋肉量は、ほぼ断食前のレベルに回復。脂肪量は減少後の数値を保っていました。また、体内で生成されるタンパク質の中に7日間の断食の前後で変化が生じるものがあることも分かりました。

断食の過程で変化の見られた、500種ほどのタンパク質の解析も行っています。そうして500種のうち212種類に、健康状態の改善に寄与する可能性が示されたのです。「SWAP70」と名づけられたタンパク質は、断食を通じて関節炎の改善に効果を発揮します。また、「HYOU1」というタンパク質は心臓病に対して良い働きをする可能性があることが示唆されました。

今回の水断食調査の結論:
減量に効果的と見られる反面
あくまで一例に過ぎない

医師
Cameravit//Getty Images

今回の結果は、あくまで水断食の影響に関する研究結果の一例に過ぎません。この分野に関する研究は、まだまだこれからの領域です。

ロンドン大学クイーン・メアリー・カレッジの医療研究所でディレクターを務めるクローディア・ランゲンバーグ氏(*2)は、この実験について次のように述べています。

「断食時に体内で何が起きているのか? 今回はそれを細胞レベルで見られました。誤ったやり方さえしなければ、水断食は減量にも効果的であると考えられます。

継続的断食(※編集注:あらかじめ食事を取れる時間帯を決め、それ以外は何も食べないこと)など、断食を取り入れたダイエット方法はいくつもあります。が、その効果は減量だけでなく、健康そのものに寄与することが分かったと言えるでしょう。今回、このように断食による健康効果のエビデンスは示されましたが、それは絶食状態で3日間を過ごした後の観測結果です。想定よりも、長い時間がかかったということになります」

同じくクイーン・メアリー・カレッジでヘルスデータ部門の指揮を執るマイク・ピーズナー氏(*3)は、次のように補足します。

「断食の健康効果は古くから言われてきますが、今回の実験によって、その科学的根拠が示されることとなりました。断食によって有益な効果を見込める疾患がある一方で、断食では改善されない疾患も数多くあることも確かです。ここで得られた知見が共有されることが、医療の発展につながるものと期待しています」

長期間の水断食はリスクも。
必ず専門家の助言を得ること

ヨガマット片手に水を飲む男性
Kobus Louw//Getty Images

断食の是非については諸説あります。そのため、7日間の断食を推奨することはできません。多くの人々にとっては非現実的な方法であり、また、たとえ減量目的であっても持続可能な手段とは言えないからです。

長期間に及ぶ水断食には、リスクが伴います。実行する際には、専門家のアドバイスを必ず求めてください。断続的断食や短期間の断食のほうが、持続可能かつ安全という考えも依然として有力ですので。

今回紹介した実験結果は、断食3日目を越えた時点で観測された健康効果であったことも留意しておくべきでしょう。ただし、このような研究によって断食の健康効果について理解が深まるのは良いことであると考えています。まだまだ研究過程の領域ということで、当面は健康第一を意識しながら、食事制限の際には医師や栄養管理士のアドバイスに従うことが重要となるでしょう。

【脚注】

*1)Nature Metabolism:Systemic proteome adaptions to 7-day complete caloric restriction in humans

*2)Queen Mary University of London:Professor Claudia Langenberg

*3)Queen Mary University of London:Professor Maik Pietzner

Translation / Kazuki Kimura
Edit / Ryutaro Hayashi
※この翻訳は抄訳です

From: Men's Health UK