これはさかのぼること1年前…。

 2019年を、とてつもない二日酔いでスタートさせてしまった私は、1カ月お酒を控えてみることを決断したのでした。年末の飲み会やパーティーが続き、ついに体が悲鳴をあげていたのです。

 まずは、英国で実施されている公衆衛生キャンペーンの「Dry January(1月の禁酒月間)」を実施してみたら、「リセットボタンを押すように、身体も頭もクレンズ(浄化)できるのではないか?」と大きな期待をかけて挑戦してみたのです。

 また、お酒との付き合い方を見直したかったというのも大きな理由の一つです(私は、アルコール中毒ではありません。ですが、飲酒が許される18歳になってから1杯も飲まなかった週はないと思います)。

 そうして「1カ月くらい大して難しいことはないだろう」という軽い気持ちで、この計画をスタートさせました。しかし実際やってみると、かなり辛かったのは事実です。が、それでも周囲の人たちは苦行のように断酒を試みている中で、私はお酒を飲まないまま丸1年を無事迎えることができたのでした…。

 ここでは、「これほどの長い間、シラフでいられたことによって何が学べたか?」をご紹介したいと思います。

飲酒が私の社交のすべてだった

 それまでの職場以外での、自分の時間の過ごし方を振り返ってみると、ビールを飲みに出かけるか、予定の前に軽く飲むか(しかも、その予定には大抵は「軽く」とは表現してはいけないほどのお酒の量となっていましたが…)のどちらかでした。

 仕事の後や休みの日の行動パターンも、これと同じようなものでした。この習慣を断ち切るのは容易ではありません。「ちょっと飲んでいこう」と言わずに、暇な時間を埋める方法を見つけなければいけませんでしたので…。

 それまで、親友たちとパブ以外の場所で会ったことなどありませんでした。悲しい表情をしたブロンドの美女が安いビールを注いでくれる場所こそが、私たちの溜まり場だったのです。

 なので、カフェでコーヒーを飲むこともなければ、ランチをすることも(パブのランチでない限り)ありませんでした。実際、お酒を飲まなくなったことで意味不明な話をすることはなくなりました。が、常に自分は、「幼少期のころから友人と一緒に、酔っ払いながら育まれたのではないか?」と思わずにはいられないほど、酒に対する欲求にあふれていた状況がしばらく続いていたのです。

 これは悲しい現実ではありましたが、混雑したパブで会わなければならないというルールもありませんでしたので、私は自分を誤魔化すためにも、スポーツ観戦やコンサートなどへ友人を誘うようになりました。

 そしてお酒を飲まなければ、せっかくのイベントが酔っていてよく覚えていないということもありません。何よりも、わざわざ列に並んで何の面白みもないビールを1杯(あるいはまた、並ばなくてすむように2杯)買うために列に並ぶ必要もなくなったわけですから…。
 

ノンアルコールビールは過小評価されている

 しかし、誰が何と言おうと、飲みたくなるときはやってきます。特に、最初のうちは避けられないでしょう。

 「Heineken 0.0」と「Free Damm」は、ノンアルコールの傑作です。「Beck's Blue」は少し苦味があり、「Peroni Libera」は不思議なことに甘口なのです。

 このようなノンアルコールビールのおかげで、その場に溶け込むためにライム入りの炭酸水を注文せずにすむようになりました。もちろん、ソフトドリンクを飲んでもいいのですが、オレンジジュースを5杯も連続で飲んでいられないことは、誰もが想像していただけるかと思います…。そう考えると、いくらでも飲んでも飲めるお酒の異常さが理解してきました。

体重が減り健康な気分になった

 当たり前だと思われるかもしれませんが…。ランニングを再開するモチベーションが上がったことも合わさって、12キロも体重を落とすことができました。「ギネスビール」を飲むのをやめることで余計なカロリーを摂取することがなくなり、睡眠の質が上がり、精神的にも前向きになり、1年間ほとんど体調不良を感じませんでした。

 二日酔いはもはや遠い過去の記憶です。朝起きて、深夜の行動を思い出すときの憂鬱な気分も味わずにすみます。日曜日にソファで一日中ネットフリックスを観て脂っこいピザを注文することはなくなり、月曜日は前ほど憂鬱な日ではなくなりました。
 

人付き合いが上手くなる

 初対面の人と会うとき、お酒で緊張をほぐしていました。しかし今では、お酒がもたらすリラックス効果を待つ代わりに、「初対面というのは、以前自分が恐れていたほど悪いものではない」と、受け入れるようになったのです。

 お酒の力に頼らなくなったことで、社交スキルが上がったというわけです。これは予想もしていなかった、断酒効果と言えます!

teenage bad influence refusal smoking urban youth
igor_kell//Getty Images

理解してくれない人もいる

 家族や友人のほとんどが応援してくれましたが、一部の人はまるでマフィアのボスが差し伸べた手を拒否されたかのように、私がお酒を一緒に飲まないことを個人的に受け取って、腹を立てていたようです。

 「その理由を説明しなければならない」ということが、断酒の一番難しいところだったかもしれません。1年間お酒を飲まないという私の挑戦は、何度も会話のネタになりました。そして、耳がタコになるほどこの説明を聞いた友人たちは、シラフでいることが私の新しいアイデンティティーだと思ったかもしれません。逆に親しくない人たちは、私がアルコール中毒から立ち直ろうとしていると思ったかもしれません。

 どちらも私の思い過ごしかもしれませんが、私が断酒を始めた理由は、そんなドラマチックなものではありません。10年近くも大量のお酒を飲み続けてきたことに、疲れてしまっただけなのですから…。
  

まだ、しばらくは飲むつもりはない

 「新たな習慣を身につけるには30日かかる」と言われているので、1月の断酒に成功した時点で、飲まない習慣が身についたと言えるのでしょう。前述のように、私は本当に丸1年間お酒を飲んでいませんので…。

 そうして自分は、生まれ変わったような気分で現在います。なにせ年末年始、二日酔いで苦しんでいる友人の声を聞いた私は、それにうらやましさなど皆無でした。そして、冷静に去年の自分はこれと同じ立場であったことを思い出します。そこでも同様…いやむしろ、お酒を再び飲む理由など、どこにも見つけることはできなかったのでした…。

これはpollの内容です。詳細はそちらでご確認いただけます。

 
Source / ESQUIRE UK
Translation / Yuka Ogasawara
※この翻訳は抄訳です。