ロシアの通信社「Vesti Yamal」によると、シベリア・ツンドラの荒涼とした地域に突如、約50メートルのクレーターができていたとのこと。これは2020年7月に、他のプロジェクトを進めるためヤマル半島(ロシア連邦・シベリアのヤマロ・ネネツ自治管区)へと向かう記者によって発見、そして同年9月上旬にその映像が公開されたのでした。

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 地元紙の「シベリア・タイムズ」紙によると、科学者は「シベリアの寒地荒原に広がる永久凍土が融ける際にピンゴ(永久凍土内の氷に覆われたドーム状の丘陵地形)に起因してできる、17番目の現象だ」と述べています。

 その最初の発見は、2014年にさかのぼります。当時、ロシア石油ガス研究所副所長でもあるボゴヤブレンスキー氏によれば、人工衛星によって少なくとも7つのクレーターが確認されたと発表しました。そのうちの1つは特に大きく、20個ほどの小さなクレーターに囲まれているとのことでした…。

 そして科学者たちによる仮説によれば、「ピンゴは地表の下に閉じ込められたメタンのポケットであり、地表に丘のように膨らみをつくり出し、その地域の炭素に富む永久凍土層が溶解すると爆発し始める」というものでした。

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 「隕石か?」「ミサイルか?」との憶測も飛び交っていました。ですが、この穴のでき方・構造を調査した結果、「上からの衝撃ではなく、地下からの衝撃によってできたものだ」という見解に。そして最もうなずける原因として、「地球温暖化で融解したメタンハイドレートの爆発」だと現段階では考えられています。

 メタンハイドレートとは「燃える氷」と呼ばれ、北極地方の凍土中に存在するメタンと水からできた氷状の物質になります。シベリアや世界の他の地域の寒地荒原は、温室効果ガスのメタンが豊富な凍土である永久凍土層によって支えられています。日本では日本海側で2003年に、石油・天然ガスを掘削する調査の中で表層型メタンハイドレート発見されています。近未来のエネルギーとして注目されてもいます。

 残念なことに地球温暖化が進行するにしたがって土壌は溶け出し、メタンが大気中へと放出されているのです。メタンは二酸化炭素よりも約30倍も強力な温室効果をもたらすガスであるため、これは地球にとって最悪のニュースと言えます(もちろん、永久凍土も放出する可能性があるためです)。

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 メタンは天然ガスの主成分でもあり、ご存知のように圧力下で発火したり爆発したりする可能性があります。Woodwell Climate Research Centerの北極圏プログラムディレクターであるスー・ナタリ氏は、「クライオペグと呼ばれる永久凍土の凍結していない土壌のポケットには、ガスが蓄積する可能性がある」と米ウェブメディア「GIZMOOD」に話しています。

  2020年、シベリアはとても暑い夏でした。「ナショナルジオグラフィック」によると、ロシア連邦極東のサハ共和国に位置する小さな町ベルホヤンスクは、同年6月20日には史上最高の気温38度を記録したということ…。

 この異常な気温の原因には、「2020年6月にシベリアで起きた、大量の燃料が流出する事故によるものではないか!?」と科学者たちは推測しているようです。

 その事故を起こしたのは、資源大手「ノリリスク・ニッケル」社で、所有する燃料貯蔵施設からディーゼル油2万トンを流出したとのこと。同社は、永久凍土の融解により引き起こされた可能性があるとの見方を示していました。北極圏の温暖化は、世界の他の地域に比べて2倍のペースで進んでいるとも言われています。そして以前から科学者の多くが、「ロシア国土の半分以上を占める永久凍土が融解し、建物やパイプラインの安定性に影響が及ぶリスク」に関して警告していました。

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 このように永久凍土の融解は、北極圏全体のインフラストラクチャー(建物、道路、そして最も重要なことにはパイプライン)が不安定になる可能性は大と言えるのです。これは、北極圏の寒地荒原地帯の居住者にとって大きな心配事です。しかし、そればかりでなく、われわれにも…。

 もうお気づきになったかと思いますが、現状の地球温暖化によって永久凍土の融解が引き起こされるにしたがって、ここでさらなるメタンガスが大気中へと放出される可能性があるのです。

 無色、無臭、高可燃性のメタンガスは、大気中に放出される最も強力な温室効果ガスの1つです(繰り返しになりますが、二酸化炭素の30倍強力と言われています)。このままでは危険なフィードバックループに拍車をかけ、地球温暖化をさらに加速させることが予想できます。

 このため、何が起こっているかを正確に理解することが重要です。ロシアのモスクワにある石油・ガス研究所の研究者であるヴァシーリー・ボゴヤブレンスキー氏は、「チームで徹底的に調査し、その発見を学術誌に発表する計画だ」と話しています。

Source / ESQUIRE IT