「私が作ろうとする服は〝余白のある服〟。デザインは過不足ない程度にシンプルでベーシックだけど、ほんの少し時代の雰囲気や気分を盛り込んだ、トラッドとトレンドのどちらにも偏りすぎない、中庸でその人らしさを感じられる服です」

と語るのは、イレーヴのデザイナーの田口令子さん。

田口さんはセレクトショップのデザイナーを経て、2018年よりウィメンズブランド、イレーヴをスタート。モダンベーシックな日常服がお洒落通に評判となり、2022年の春夏からメンズラインもスタートさせた注目のデザイナーだ。

田口さんが言うところの“余白のある服”とは、つまりベーシックでリラックスした服。

綿谷寛
Hiroshi Watatani
イレーヴらしいリラックスしたシルエットを描く、ハウンドトゥースのセットアップ。生地にはニュージーランドウールのギャバジンを採用しており、張りのある質感が立体的なフォルムを生み出します。パンツの形はストンと落ちるワイドストレート。アンフィニッシュの裾は普通に裾上げしてもいいですが、女性ならあえて処理せずに、そのままロールアップしてはくのも田口さんはおすすめとのこと。ジャケット8万2500円、パンツ4万1800円(2点共イレーヴ/イレーヴ TEL 03-5785-6447)

例えば、スウェットは通常は平面のパターンでつくられるが、イレーヴのそれは立体パターンで、シルエットはゆったりしていながら着膨れすることなく大人っぽい仕上がり。また、くすんだように見える白のスウェットは若干赤みを入れて、洗濯してちょっと味が出た感じを表現しているのだとか。

なるほど。シンプルなデザインの極みであるスウェットながら繊細な仕立てかつ上質な素材。加えて、懐かしくも新鮮に映る時代の空気を取り込んだ仕上がりはさすがだ。

このスウェットを一枚加えるだけでいつものボタンダウンシャツやリーバイスの501の着こなしがワンランクアップしそう。これこそまさにトラッド進化ではないか。

もうひとつ。家着の定番でもあるイージーパンツ。「家の中ではいつもコレ!」と言う方も多いのでは。深夜のコンビニへの買い物や朝のゴミ出しのときなどは、イージーパンツにPコートを羽織ってそそくさと… なんてね~。図星でしょ。

ところが田口さんの手にかかると見慣れたイージーパンツにPコートの着こなしもホレ、ご覧のとおり(下イラスト参照)。

日常着のようでいてお洒落着。自然体でいてフワッと漂う今どき感が素敵だ。資源ゴミの日はナチュラルワインの空き瓶を出しそうな雰囲気だ(笑)。

綿谷画伯がたどり着いた、
進化した今の
トラッドスタイルがこちら
綿谷寛
Hiroshi Watatani
軍モノをルーツとするPコートと言えば、頑丈なつくりが売りのラギッドなアウター。ですが、田口さんがデザインしたこの一着は真逆ともいえる柔らかでモダンな面構え。ぱっと見でわかるほどビッグサイズにつくられたジェンダーレスなシルエットが、クラシックなPコートのイメージを良い意味で裏切ってくれます。ダブルフェイスの生地には起毛加工が施され、ふんわりとした軽やかな表情に。10万7800円(すべてイレーヴ/イレーヴ TEL 03-5785-6447)


●問い合わせ先/
イレーヴ
TEL 03-5785-6447
公式サイト

※メンズクラブ2023年1月号掲載記事の転載です。
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