履き物ならなんでも好きなんですよ。いいなと思うと買わずにはいられない。結果、とんでもない数の靴を収集してしまいましたが、それでも今も毎月けっこうな数の靴を買ってしまいます」と語るのは、2022年秋冬よりスタートしたフランス発の靴ブランド「マルボー」のディレクションを務める靴デザイナーの竹ヶ原敏之介さんだ。

靴のプロが‟買わずにはいられない”いい靴とは、いったいどんな靴だろう。

「有名靴店の高級靴に限らず、街で気になる靴を見かけるとつい足が止まってしまいます。古くから一部の市場に淡々と流通している中に、意外とよくできた靴が埋もれてたりするんです。ブランド物ではないけれど、ロングセラーの靴はラストが秀逸だったり、靴づくりのうえで参考になります」

a black high heeled shoe
Hiroshi Watatani
フランス軍の正装用に支給されていた革靴をベースに、マルボーらしいアレンジが加わった「フレンチサービスマン」。米国のものと比べ小さめに設計された羽根や、よりドレスシューズの印象に近づけた品のあるフォルムがポイントです。ソールはマルボーがかつて軍に納入していたミリタリーブーツのデザインを、現代的に再構築したもの。4万4000円(マルボー/ギャラリー・オブ・オーセンティック TEL 03-5808-7515)

ブランドや価格、製法にとらわれず、‟出来のいい靴”に出合ったら、とりあえず買う。そんな価値観で靴と付き合ってきた中で出合ったのが、フランスの老舗靴メーカーのマルボーだった。

「セルジュ・ゲンズブールとかの影響もあって、もともとフレンチスタイルも好きだったんですけど、靴づくりを始めた頃の90年代のパリには、そんな日本人がイメージするフランス人はいなかった。有名セレクトショップに並ぶ靴はオールデンだったりして。その頃、蚤の市で出合ったのがマルボーでした。

100年以上の歴史を持ち、フランス軍への納入や高級メゾンの生産にも携わってきたマルボーの靴の実直なつくりとフランス靴ならではの雰囲気に引かれて、当時よく履いてました」

以来、マルボーを愛用するうちに製作を依頼したいと思うようになり、コンタクトを取ったが思うように話が進まず…。そうこうするうちにブランドは途絶えてしまったそうだ。

そして2022年秋冬。竹ヶ原さんのディレクションのもと、めでたく新たなブランドとしてマルボーが再始動。数あるラインナップの中でもとりわけ目を引いたのは、ツートンカラーのヴァルカナイズドスニーカー。古くて新しいマルボーで、21世紀のゲンズブールを気取りたい。

綿谷画伯がたどり着いた、
進化した今の
トラッドスタイルがこちら
綿谷画伯
Hiroshi Watatani
シンプルなデザインながら、独特なトウの形状が存在感のある「オックスフォードスニーカー」。ブランドを代表するアイコニックな一足で、仏軍のトレーニングシューズがモチーフ。内羽根式のつくりゆえ、カジュアルなパンツはもちろん、スラックスのようなドレッシーなタイプにもなじむ使い勝手の良さも魅力。3万800円(マルボー/ギャラリー・オブ・オーセンティック TEL 03-5808-7515)

●問い合わせ先/
ギャラリー・オブ・オーセンティック
TEL 03-5808-7515

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メンズクラブ2023年10月号掲載記事の転載です。
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