「ヴァシュンロン・コンスタンタン」メゾンの魅力

あえてここで、世界で最も著名なメゾンの魅力を簡単に振り返りましょう。2023年でジャン=マルク・ヴァシュロンによる創業から数えて267年、世界最古のマニュファクチュール「ヴァシュンロン・コンスタンタン」。ウォッチ界のオートクチュールメゾンとでも言うべきレ・キャビノティエ(Les Cabinotiers=優れた時計職人集団)として創業時から一貫して発注を受け、全て手作業でビスポークの時計をつくり続けてきました。いくつもの危機を振り払い、これまで一度も経営権を渡したことも休業もせず伝統を守り抜いてきた、唯一にして無二のメゾンです。

ヴァシュンロン・コンスタンタン レトログラード
Vincent Kronental

レトログラード(retrograde)とは

「後ろに・逆に」を意味する“retro”と“grade”=「歩行」の組み合わせからもわかるように「逆行」を意味します。レトログラード・デイト(日付表示)とは、指針がダイヤルを1周するのではなく、表示の弧に沿って目盛りの始点から終点までを移動し、終点に達すると始点に戻って再び移動を繰り返す日付表示機構。「30」から「1」まで戻るのに時間がかかれば、日付が誤って表示されることになるため、レトログラード針は一瞬でこれを行わなればいけません。これには極めて正確な作動と、厳しい専門技術が求められます。とりわけ精密さを持ち合わせながら、同時に衝撃耐性と耐久性を維持しなければならず、それゆえに貴重なものなのです。

レトログラードを搭載した3つの新作

①トラディショナル・トゥールビヨン・レトログラード・デイト・オープンフェイス

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NAC処理でムーブメントの表面がスレートグレーに仕上げられたキャリバー 2162 R31の構造は、オープンワークによって時計の表と裏の両側から完全に見ることが可能で、その機械的なインパクトに引きつけられます。

ヴァシュロン・コンスタンタンのスタイル&ヘリテージディレクターのクリスチャン・セルモニは、このキャリバーについてこう語っています。「オートオルロジュリーの伝統と、常に求められる革新との間にある明らかな拮抗です。このキャリバーは、永続的な足跡を残すことでしょう」

レトログラード・デイト表示も、伝統的なトゥールビヨンによって引き立てられ、機能的かつモダンでアバンギャルドなスタイルの中に時計製造の伝統が息づいていることがはっきりと見て取れます。

ヴァシュロン・コンスタンタンの「オープンフェイス」タイプの表示には、ダイヤルの一部にオープンワークを用いた1918年の時計から始まる長い歴史があります。これは天文カレンダーを搭載した懐中時計で、当時のデザインとしては革新的なもの。それからおよそ1世紀を経て、ヴァシュロン・コンスタンタンは再びこのオープンワークのダイヤルというコンセプトに目を向け、ミレニアムの幕開けを告げた2002年にリファレンス47247を発表しました。メゾンの247周年にあたり、247本限定でつくられたこの時計は、37mmのプラチナ製ケースにレトログラード・デイトの日付表示と6時位置の曜日表示が備わり、オープンワークによってレトログラード・デイトの機構がたっぷり眺められるようになっています。この時計もヴァシュロン・コンスタンタンの特徴である、オープンフェイスの精神を受け継いでいます。

2000年代初期のリファレンス47245と47247の後継モデルに当たる「トラディショナル・トゥールビヨン・レトログラード・デイト・オープンフェイス」は、ダイヤルのレトログラード表示が部分的にオープンワークになっていますが、これもまた20世紀初頭からのメゾンの特徴です。 

②パトリモニー・レトログラード・デイ/デイト

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プラチナ950製ケースとサーモンカラーダイヤルが特徴の新作、「パトリモニー・レトログラード・デイ/デイト」。メゾンを代表するこの組み合わせとデザイン、2022年以降は年間限定生産でさまざまなコレクションに見られます。その外見に加え、内側には技術を受け継ぐこの2023年限定生産モデルはディテールへの入念な配慮と、ミニマニズムの表現と卓越した技術が一体となっています。

1920年代から1930年代にかけての特殊かつ複雑なレトログラード表示を彷彿とさせるこのモデル、ミニマルなデザインはドイツ「バウハウス」の原則のひとつ“Less is more”をも想起させます。

「パトリモニー・レトログラード・デイ/デイト」を駆動するムーブメントは、自社製の自動巻きキャリバー2460 R31R7/3。振動数は毎時2万8800回、マルタ十字から着想してデザインされたオープンワークの22Kゴールド製ローターが備わっています。パワーリザーブは約40時間というスペックに丁寧な手作業で仕上げられた部品側面やスクリュー、両面にペルラージュ模様が施され、ブリッジはコート・ド・ジュネーブ模様で装飾されたメインプレートなどオートオルロジュリー(高級複雑時計メゾン)の真髄が垣間見られます。

③オーヴァーシーズ・ムーンフェイズ・レトログラード・デイト

オーヴァーシーズ・ムーンフェイズ・レトログラード・デイト

「オーヴァーシーズ」にレトログラード表示が初めて搭載されました。この機能はヴァシュロン・コンスタンタンにおいて絶えず進化を続け、これまで何度も製品に搭載されてきました。

1996年に誕生した「オーヴァーシーズ」コレクション。1977年に発表された、ヴァシュロン・コンスタンタン初のスポーティシックな時計「222」の後継モデル。この新しい「オーヴァーシーズ・ムーンフェイズ・レトログラード・デイト」は、その技術的な特性に時代やスタイルが融合しており、重要なマイルストーンとなるものです。

約40時間のパワーリザーブを備えた自社製自動巻きムーブメント、キャリバー2460 R31L/2が搭載されています。高級腕時計製造と天文学の分野を結びつける古来からの関係を象徴するものとして、ヴァシュンロン・コンスタンタンの伝統の中で開発された高精度ムーンフェイズの機構は122年毎に一度だけ、1日分の誤差修正しか必要ないということ。この複雑な機構と、レトログラードを同時に搭載するための開発に3年を要しています。

またトラベルウォッチとして、さらにラグジュアリースポーティウォッチとして、「オーヴァーシーズ」コレクションのデザインコードやテクニカルコードに完全に即しながら、この精密機構に耐久性と耐衝撃性をもたせるためにも新たなレトログラードが考案されました。

●お問い合わせ先
ヴァシュロン・コンスタンタン 
TEL 0120-63-1755
公式サイト