サンフランシスコでのカーチェイスシーン…この映画史に残るシークェンスを飾ってから約50年、1968年公開の映画『ブリット』はミレニアル世代の方はご存じない方も少なくないでしょう。でも、映画好きな方、スティーブ・マックイーン好きな方は年齢に関わらずこの映画は知っているはず。名作ですから。
スティーブ・マックイーンが『ブリット』で乗りこなした愛車マスタング!
この映画で名優スティーブ・マックイーンが駆ったハイランドグリーンのフォード「マスタング」のファストバック」は、意外な場所から見つかりました。
行方不明となり、「廃車された」とも考えられていたこの車ですが、実際はニュージャージー州に住むマスタングファンである保険会社重役のロバート・キエルナン氏が購入していたのでした。キエルナン氏は1974年に、この車を6000ドル(現在の価値で3万ドルほど、約333万円)で購入し、その後は彼の妻がこの車を長年日常的に運転していたということです。
『ヴァニティ・フェア』誌によれば、キエルナン家はこの車でおよそ5万kmの距離を走行したものの、80年台始めには機械的な問題や部品の消耗などにより倉庫行きになってしまったと言っています。
スティーブ・マックイーンはこのモデルにとても入れ込んでおり、何度かキエルナン家から買い戻そうとしたものの…結局は実現しなかったと言います。
ロバート・キエルナン氏の息子であるショーン・キエルナン氏は、マックイーンが1977年にこの自動車を買い戻そうとS・キエルナン氏にコンタクトを取ったときのエピソードを語ってくれました。
「父はその時点で、あの車を3年間所有していました。そんなときに、スティーブから電話があったんです。彼は『車が購入後どうだったか? 何かしら改造などを施したか?』など、いろいろ尋ねた後、『あなたがその自動車にそれほど深い思い入れがあるというわけでないなら、ぜひ売っていただければと思います。代わりに、似たような同種のクルマを差し上げます。もちろん、法外な値段でなければの話ですが…』と提案したそうです。ですが父は、『ありがとうございます。ですが、売りするつもりはありません』と断ったんです」とショーン・キエルナン氏。
その後、ロバート・キエルナン氏は2014年に亡くなりましたが、マックイーンは最後まで、彼のマスタングを手に入れることは叶いませんでした。しかし、実はこのストーリーにはハッピーエンドとも言うべき後日談がありました。
スティーブ・マックイーンの孫娘モリーがマスタングと対面
フォードは最近、『ブリット』マスタングの50周年を記念して、この車のオリジナルのペイントを施した2018年版モデルを披露しました。この車が披露されたデトロイト・モーターショーでは、ショーン・キエルナン氏がマックイーンの孫娘であるモリー・マックイーンと一緒にプレゼンターを務めたのです。
また、キエルナン氏が当時マックイーンのオファーを断ったのは、懸命な判断だったようです。なぜなら、そのオリジナルカーの価値は現在なんと500万ドル(約5億5500万円)にまで上昇していますから。
この価格、たまたま購入できた自動車としては上々ではないでしょうか(笑)。いえいえ、すべては「ムスタング愛」の賜物ですね。
孫娘とマスタングの新たな出会いに、なぜか我々(スティーブ・マックイーンファンたち)が嬉しくなるほどです。天国のスティーブ・マックイーンも必ずや微笑んでいることでしょう。
Source / ESQUIRE UK
Translation / Wataru Nakamura
※この翻訳は抄訳です。