かつて私(筆者のマヌエレ・メンコーニ)は、「ファッションおけるストーリーテラー(筋の運びのおもしろさで読者をひきつける作家)とは、一体どんな人物だろうか?」と考えたときがありました。 そして、「これまでに、そんな人物に出会ったことはあっただろうか?」とも…。
しかし、その解答はすぐに出ました。それは、「ジョルジオ・アルマーニ氏以外いないだろう!」というもの。彼は私が行った最初のインタビューのときから、私をファッションの魅力の深淵へと誘ってくれたのです。
アルマーニ氏は1975年、当時41歳のときに自身初のブランドである「ジョルジオ アルマーニ」を立ち上げます。今から思えば「遅咲き」とも言える彼のキャリアの一場面でしたが、その後の転機は早々に訪れました。およそ5年後の1980年には、映画『アメリカン・ジゴロ』でリチャード・ギアの衣装を手掛けることとなり、それと同時に「アルマーニ」の名は世界中へと拡大していったのです。
そしてその翌1981年には、当時は“セカンドライン”というカタチで「Emporio Armani(エンポリオ アルマーニ)」をローンチします。そんな「エンポリオ アルマーニ」は2021年で、40周年を迎えるに至ったわけです。
1981年にこのブランドがローンチされた当時は、「この時代の若者の声を如実に反映した、そんな彼らのユニフォーム同然の存在となるだろう」と思っていました。なぜなら、それは単なる服である以前に、ジョルジオ・アルマーニというアーティストの心が具(つぶさ)に宿ったものだと感じていたからです。そして、その服自体がコミュニケーションツールとなり、「当時の若者たちの代表的なシンボルとなるだろう」とも思われていました。
そのとおり「エンポリオ アルマーニ」は、当時の若者たちをその親世代が築き上げた固定観念から、新しい時代へと解放する役割を見事に担いました。ですが、全く予期せぬ結果も導き出していたのです。
80年代初頭はパンク、パニナリ(アメカジ)、ビジネスボーイといった、社会の中心となっている文化的慣習や体制に反する精神を擁する「カウンターカルチャー(対抗文化)」の新たな幕開けの時代でもありました。ですが実際には、このムーブメントは都市部に住むごくわずかの若者だけのものだった…そう私は個人的に思えていたのです。若者のマジョリティの真実は、都市郊外に住む者たちにあったのだと…。
その事実を察知していたかのように、アルマーニ氏も郊外の住む若者たちにも視野に入れていたのです。彼はデザイナーとしてのベーシックな部分を学び、その能力をフルに発揮しました。ですが、そればかりではありません。ビジネス的な視点にも長けた人物だったのです。これこそが氏のブランドが、成功という階段を絶え間なく上り続けている理由とも言えるのです。
ここでは、簡単に“郊外”と述べていますが、その表現は、「アルマーニ」が拠点としているイタリアという国だけに存在する言葉ではありません。世界中に“郊外”はあり、そこでは10代の若者たちが都会への夢を抱きながら過ごしている…それは、世界共通の現象と言えるでしょう。
そんな若者が20歳前後となり、大都市での生活へと旅立つとき、彼らはスーツケースに何を詰め込むでしょうか? 大都会へ行くからといって、パーティーウェアのようなドレッシーなスタイルで行くのも野暮なこと。かと言って、ジーンズにジャケットを合わせ、足元はキャンバスシューズといった日常のスタイルで行くことに引け目を感じる人も、そうそう少なくないでしょう。そこで、翼を広げたイーグルロゴが配された「エンポリオ アルマーニ」のスタイルというわけです。それは「I would like(好ましい)」と「I can(できる)」の間に存在するギャップをカバーする、絶妙なスタイルをわれわれに提供してくれたのです。
誇張しすぎていない、だけどモダンで、時代の息吹を宿している…。新しくアップデートされた本物のスタイルが、そこにあったというわけです。都会へと向かう若者の身体の特徴をカバーしながら、ミラノのブエノスアイレス通りやニューヨークの5番街の群衆の中を流れるように歩くのに、最適なスタイルがそこに展開されていたのです。
また「エンポリオ アルマーニ」は、その素材への飽くなき探求心に関しても、目を見張るものがありました。その妙技と多彩なラインナップによって、上質さと共にアルマーニ独自の素材への情熱がシナジー効果となって、われわれを心から魅了していったことも事実です。
このように「エンポリオ アルマーニ」は、清潔感あふれる上質で都会的なスタイルをイメージさせるだけでなく、同時にブルーとグレーを中心としたミニマルなカラーパレットと共に、ディテールに独自のアクセントを配することによって他ブランドとは大きく一線を画した存在となったのです。
80年代までは、ブランドの顔(広告塔)と言えば自社のバイヤーたちでした。そして彼らは、流通過程で売れ残った商品で利益を得ようなどと考えていませんでした。その後、モデルやトップモデルといった広告塔が登場し、2000年からはそこにセレブたちが参入し始めたのです。
最も有名な顔と言えば、ベッカム夫妻でしょう。その後、カルヴィン・ハリスやクリスティアーノ・ロナウド、ラファエル・ナダル、ミーガン・フォックスなどが並びます。またテニスやサッカー、バスケットボールなどのスポーツ選手とのコラボレーションも行うようになりましたし、最近では東京2020のイタリア選手のユニフォームを製作するなど、さまざまな活動を行っています。
また直近では…ミラノ時間9月23日夜、エンポリオ アルマーニ 2022春夏メンズコレクションがウィメンズとの合同ショーとして開催しました。これはブランド誕生40周年を迎えたアニバーサリーイヤーの祝宴として、アルマーニ/ テアトロを会場としての新作コレクションが発表されたのです。ちなみに日本では、2021年9月24日(金)午前0時に「エンポリオ アルマーニ」公式Instagramで配信、YouTubeにも投稿されています。
また、2015年に「ジョルジオ アルマーニ」がブランド創設40周年を記念して建設されたミラノの文化複合施設「アルマーニ シーロス」では、「The Way We Are」展を開催。また、『エンポリオ アルマーニ マガジン』特別号「THE WAY WE ARE」の発刊やミラノ市内のアイコニックな場所への広告掲出、バスやトラムのラッピングなど、あらゆる角度からエンポリオ アルマーニ40周年を盛り上げています。
そして日本では、ミラノから発信される40周年の合言葉として「THE WAY WE ARE」をタイトルに掲げ、デジタルキャンペーンを展開中。このキャンペーンには、「エンポリオ アルマーニ」のブランド誕生時にはまだ生まれていない、7名の若きセレブリティが登場しています。公開日である2021年9月24日(金)からは、窪塚愛流(俳優)/ MIU (モデル)/ YAMATO(モデル)/ 中島沙希(モデル)の4名による静止画および動画コンテンツが特設サイトにて公開中です。
この特設サイトでは、それぞれの静止画やムービーの中で着用しているエンポリオ アルマーニの最新コレクションアイテムも紹介されています。また同年10月4日(月)からは、南部桃伽(メイクアップアーティスト)/竹内唯人(アーティスト・歌手)/シャララジマ(モデル・文筆家) の名による静止画および動画コンテンツが特設サイトにて公開される予定です。
「エンポリオ アルマーニ」公式サイト
THE WAY WE ARE 特設サイト
Source / ESQUIRE IT