ジョー・バイデン氏を新進気鋭のファッショニスタと呼ぶのは、ちょっと無理があるかもしれません。レイバンのアビエーターサングラスを愛用していることで有名な次期大統領ですが、半世紀近い公務の中で、淡いブルーのスーツとクラシックな光沢のあるネクタイというシンプルなスタイルのセンスを培ってきました。

 しかし、第46代米国大統領としての初日となる就任式には、最高峰のデザイナーの服に頼ることになるかもしれません。米『WWD』誌によると、バイデン氏はアメリカーナの象徴とも言える「ラルフ ローレン」に、2021年1月20日の宣誓式の服を用意してもらう可能性が高いそうです。

 バイデン氏の就任式では、オバマ大統領時代の特徴ともなっていた控えめな美的アプローチへの回帰を示し、前回のトランプブランドとも言える派手でギラギラした外観とは対照的なものとなるでしょう(例えば、前ファーストレディであるミシェル・オバマ氏は、『J.クルー』といったアメリカのモールで買えるようなブランドを戦略的に取り入れることを習慣にしていました。ですが、後任の現ファーストレディであるメラニア・トランプ氏は、ヨーロッパの有名ブランドのアイテムを好む傾向にありました)。

 大きなシルエットの「ブリオーニ」のスーツと長すぎる赤のパワータイを好んで着用するトランプ氏。辛辣な風刺画家が、最近の富裕層を表現する際に描きがちな典型的派手テイストを彼は長い間体現してきました。今やトランプ氏は成功したビジネスマンにも、ましてや自由世界の有能なリーダーにも見えません。それどころか、おどけた服を着て実業家の下手な物真似をしているタレントのようにさえ見えません…。

 政界においては、小さなファッションアイテムにも人々はその意味を読み取ろうとします。政治家、特に男性の政治家の場合は、ファッションの流行面の切り口で報道される機会はそう多くないかわりに、終始、そのディテールからメッセージを(半無理やりに)読み取ろうとする場合が多々あるのです。そうして、そんなあまり目立たない部分から、掘り起こすかのように騒ぎが起こる場合もあるというわけです。

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 そんなわけで次期大統領が、「就任式の日にどんな服装で臨むのか?」を楽しみにしている方も少なくないでしょう。しかもここで、「ラルフ ローレンの服を用意する」という話を聞けば…。伝統のアメリカンスタイルを体現した「RRL」(ラルフローレン氏が1993年に設立したブランドで、 ヴィンテージ・カントリー、ミリタリーにラギットなスポーツテイストを融合したブランド)のカタログから抜け出したような…床まで届くヴィンテージ風ムートンに、色あせたブルージーンズで宣誓をしているバイデン氏を姿を想像してしまった方もいるかもしれません。実際そうなれば、テレビ中継の視聴率もかなり高くなることでしょう。

 しかし残念ながら、そんな期待に胸を膨らませている方々はがっかりすることになるでしょう。前任者であるトランプ氏とは違って、バイデン氏は恐らく、指導者として理想像となる伝統的な服装を選ぶことでしょう。つまり就任式の日は、おそらくブルーのスーツを着こなすはずです。

 とは言え、頭の中で服装をムートン&ジーンズのスタイリングに置き換え、妄想をプラスしてテレビ中継を楽しむのもいいかもしれません…。古き良きアメリカの復活を願って。

Source / ESQUIRE US
Translation / Yuka Ogasawara
※この翻訳は抄訳です。