2021年1月20日(現地時間)に行われた米大統領就任式で、ジョー・バイデン氏は正式に第46代大統領に就任しました。宣誓式でバイデン氏は予想どおり、「ラルフ ローレン」のネイビーブルーのスーツを着こなしています。それもスーツ、ネクタイ、コート、そしてマスクに至るまで、すべて「ラルフ ローレン」で完璧にそろえていました。

「信頼・自信・安定」を
意味するカラーと共に

 バイデン氏の隣に寄り添うジル夫人は、ニューヨークのデザイナーAlexandra O'Neill(アレクサンドラ・オニール)氏によるブランド「Markarian(マルカリアン)」の青いアンサンブルで、バイデン氏のネクタイとリンクさせた色合いでした。もちろんこの色はバイデン陣営のカラーであり、この日から与党となった民主党のカラーでもあります。そしてオニール氏によると、この色は「信頼・自信・安定を意味する」と説明しており、今後のバイデン陣営による民主主義国家としての繁栄の意味が強くこめられていることがうかがわれます。

joe biden marks his inauguration with full day of events
Chip Somodevilla//Getty Images

 また、歴代大統領であるバラク・オバマ氏やビル・クリントン氏、共和党のジョージ・W・ブッシュ氏までも、バイデン氏にならってブルーのネクタイを着用していました。アメリカという国が、ここで再び「連帯感」に最注力していこうとしているモメンタムが非常に感じられる就任式となりました。

washington, dc   january 20 former us president barack obama arrives to the inauguration of us president elect joe biden on the west front of the us capitol on january 20, 2021 in washington, dc  during today's inauguration ceremony joe biden becomes the 46th president of the united states photo by alex wonggetty images
Alex Wong//Getty Images

 エイブラハム・リンカーン元大統領時代から、歴代大統領に好まれていた服のブランドは「ブルックス ブラザーズ」でした。むしろ「ラルフ ローレン」を着こなすのは、これまでは女性ばかりと言っていいでしょう。ナンシー・レーガン氏、ヒラリ―・クリントン氏、ミシェル・オバマ氏など、歴代ファーストレディのワードローブとして登場することが通例でした。

 しかしながら…ここでバイデン氏は、自ら着こなす服を「ラルフ ローレン」に決定しました。ですが、違和感など全く感じられません。

 イタリアの「ブリオーニ」のスーツを好んだドナルド・トランプ前大統領とは異なって、そもそもバイデン大統領は、長年にわたって「ラルフ ローレン」の愛好者だったことも有名です。実際に公の場である、新型コロナワクチンを接種したときの場面でも、ポニーのロゴが象徴的に刺しゅうされたポロシャツを着用していました。

 ここで改めて、「なぜこのブランドを選んだのか?」を考えるに…、古き良きアメリカを代表する(そして世界中から愛され、世界中から敬愛されるリーダーがけん引する)このファッションハウスをこの名誉ある日に選び、そして世界に発信することによって、アメリカの誇りを国民全体とともに再確認しながら、その価値を取り戻そうという意気込みが強調されたのです。

 ラルフ・ローレン氏自身も、アメリカの歴史を大切にすることで知られています。1998年には、クリントン夫妻と協力してアメリカ国歌「星条旗」のモチーフとなったオリジナルの星条旗を保存するための寄付金を募りました。そこで自らも、スミソニアン(Smithsonian)博物館に、1300万ドルを寄付しています。そして2014年には、これらの慈善活動を含め、ファッション界に与えた影響とその功績を称えてジェームズ・スミスソン・バイセンテニアル・メダルを受賞しているのです。さらに数々のオリンピックで、アメリカ代表選手団の公式ウェアを担当したことでも有名です。

コロナ禍においても迅速に
行動したラルフ ローレン

 また、バイデンチームの急務である新型コロナウイルスによるパンデミックの収束(その先の終息)のためにも、「ラルフ ローレン」はいち早く動いています。パンデミックの最前線にいる医療従事者向けに、25万枚のマスクと2万5000枚の防護服の生産にとりかかっているのです。

 バイデン氏のネイビーブルーのスーツは、実に「何の変哲もない」と言えるほどシンプルな2ボタンスーツですが、そのつくりは実に丁寧で、熟練した職人が魂をこめて仕立てたことが素直に想像できるニュアンスを就任式で醸していました。

 バイデン氏のさまざまな振る舞いに対して、決して目立つことなく、だけど自信をみなぎらせ、それでいて優しく…。そんな様子が、バイデン大統領の身体が動くたびに寄り添うように包み込むシルエットから見て取れました。またバイデン氏自らも、政治家としての48年間のキャリアと共に、クラシックなスタイルの魅力を学び、そしてそれを培い、服との付き合い方までも磨き上げてきたのでしょう。

 バイデン氏がこのネイビーブルーのスーツと同じくらい、(信頼・自信・安定に満ちた)真っ青なアメリカであり続けることを願いましょう。

 そして最後に、ラルフ ローレン側の振る舞いについて触れさせていただきます。

これはxの内容です。詳細はそちらでご確認いただけます。

 新たなアメリカの旅立ちに、世界中がワクワクと心躍らせながら注目する就任式において、バイデン大統領およびセカンドジェントルマンであるエムホフ氏の服装に選ばれたラルフ ローレンですが…。自らはそのことに対し、公式ウェブサイトや各SNSのプラットフォームでは未だ触れていません(日本時間2021年1月22日18時までで)。

 この就任式に際してのPostと思えるのは、「"Now is the time to come together with love and understanding." - Ralph Lauren」というキャプションで投稿された上のひとつのみ。このことからも、ラルフ ローレンというブランドの奥深さが伝わってくるのではないでしょうか…。今こそ、愛と理解を持って集結すべきときです。

Source / TOWN&COUNTRY US