- 2008年、国際自然保護連合(IUCN)は「スマトラトラの亜種であるジャワトラは絶滅した」と宣言しました。
- それから20年近く経ち、島に住む自然保護活動家から「ジャワトラを発見した」と伝えられ、その後の調査で近くのフェンスから毛が採取されました。
- そして今回、その毛がジャワトラのものであることがDNA分析の結果、発表されました。ですが、この毛が確実にジャワトラのものであることを再確認し、「絶滅」状態を覆すためにはさらなる研究が必要です。
ジャワトラ生存の希望の光
気候変動は、地球上の何百万という種を奪っているとされています。しかしながら、その本当の絶滅速度を知ることは不可能と言えます。なぜなら、私たちがそもそも存在すら知らなかった種が、毎日のように絶滅している…と考えられているのですから。
とは言え推定によると、現代の絶滅速度は通常の何百倍、場合によっては何千倍*1だということ。そこから計算して、ほとんどの専門家は「私たちは現在6回目の大量絶滅を経験している」と結論づけているようです。
そのため、「25年前に絶滅したと思われていたある種が、まだ生存している可能性がある」と専門家が発表したのは、厳しい未来が予想される中での一筋の光だったことでしょう。そのニュースは2024年4月2日に、インドネシアの環境学者と動物学者によって発表*2されたものです。
自然保護活動家が島で発見した毛の束に、ジャワトラ(Javan tiger )のDNAが含まれていたということ。ジャワトラは国際自然保護連合(IUCN)によって、2008年に絶滅種とされていました。
もちろん、IUCNがそうしたのには理由があります。絶滅の危機に瀕しているスマトラトラの亜種であるこの大型ネコ科動物は、かつて大スンドラ諸島のジャワ島で繁栄していました。ですが、多くの大型肉食動物がそうであったように、生息地の破壊と人間による殺害(家畜を襲ったトラの殺処分)が最終的な絶滅につながった――そう考えられていました。
ケンブリッジ大学出版局が発行する学術雑誌『Oryx』誌で、2024年3月21日に公開*3されたDNAサンプルに関する論文には、次のように書かれています。
「ボゴリエンス動物博物館に所蔵されている、1930年に収集されたジャワトラ標本の毛と比較されました。その結果、ジャワトラと推定される毛のサンプルは、博物館にあるジャワトラの標本と同じグループに属することが示されました」
以前(2019年8月18日)、西ジャワ州南スカブミの森で活動するた自然保護活動家がジャワトラの目撃情報を報告*4しています。そして一週間後の調査では、足跡、爪痕、そして(幸運にも)近くのフェンスに付着していた毛を発見していました。
そこでその毛を近縁種の標本と照合した結果、「この小さな毛は、確かにジャワトラのものであることが判明した」とこのたび発表されたということになります。
これはジャワトラの存続を証明する、科学的にも有力な証拠と言えます。ですが、これは希望の光に過ぎません。論文では、「ジャワトラが現在も野生で生息しているかどうかは、さらなる遺伝子調査や野外調査によって確認する必要がある」と指摘されています。そこでインドネシア政府関係者は、さらなる調査に乗り出す構えです。自然保護当局のサティヤワン・プディアットモコ氏は、2024年3月26日のロイターの記事で次のように語りました*5。
「この調査によって、『ジャワトラがまだ野生にいるのではないか?』 という憶測を呼び起こしました。私たちは、それに対応するための努力と準備をするつもりです」
この希望の光は、これまでに語られた中でも素晴らしい保護活動の物語のひとつへと成長するかもしれません。
[脚注]
*1:スミソニアン博物館の公式サイトに掲載されている「Extinction Over Time」を参照
*2:科学分野のニュースを集約するニュースサイト「Phys.org」に掲載されている「Hair from tiger thought to be extinct found by conservationist on Java」を参照
*3:ケンブリッジ大学出版局の公式サイトに掲載されている「Is the Javan tiger Panthera tigris sondaica extant? DNA analysis of a recent hair sample」を参照
*4:インドネシアの日刊新聞「The Jakarta Post」の公式サイトに掲載されている「In search of 'extinct' Javan tiger」を参照
*5:ロイターの公式サイトに掲載されている「 Indonesia seeks more proof that Javan tiger may no longer be extinct」を参照
Translation & Edit / Satomi Tanioka
※この翻訳は抄訳です