• 英国のボリス・ジョンソン首相は、ガソリン車やディーゼル車の2035年に販売禁止とする計画を発表。
  • これは、英国のこれまでの計画を5年前倒しするものです。また、販売禁止となる自動車には新たにハイブリッド車も含まれ、ピュアEV(100%電気自動車)のみが販売可能になる見込みです。
  • 2019年の英国の乗用車販売台数は230万台で、このうちピュアEVは3万7850台のみでした。

 英国は2020年1月31日(現地時間)をもって、EUから正式に離脱しました。各EU加盟国との関係をはじめ、英国政府はこれからあらゆる課題に追われることが予想されます。そんな中、もちろん国民も新たな生活を用いられることが予想されており、野菜や果物が値上がりすることが挙げられています。

 そしてジョンソン英国首相は2020年2月4日、議長国を務める「国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)」の関連イベントにて、COP26が「英国と世界にとって気候変動への対策を強化する重要な機会になる」と述べながら、英国が掲げる2050年までの温室効果ガス(GHG)の純排出ゼロ目標のように各国も、純排出ゼロに向けた目標を掲げるよう呼び掛けました。

 欧州のいくつかの国と同じように、英国もガソリン車およびディーゼル車の販売を2040年までに段階的に禁止することをはすでに約束していました。しかしここでは、その時期をさらに5年前倒しすること、そして、販売禁止対象にはハイブリッド車も加わることも発表したのです…。そして、これが実際に法制化された際には、英国は内燃機関の時代を公式に終わらせる最初の大国となる見込みです。

 従来の2040年を期限とする目標では、プラグインハイブリッド車の販売はそれ以降も許可される予定でした。ですが、この新たな計画では、この車種も販売禁止対象に含まれることになります。実現するとなれば、諸外国が計画する規制よりもはるかに厳格なものとなるのです。

 今回の動きは、2050年までの二酸化炭素のネット排出量ゼロを目標とする英国政府の施策の一環。予想される通り、このアイデアについては賛成意見ばかりではありません。

 英国の自動車関連業界団体である「自動車工業会(Society of Motor Manufacturers and Traders、SMMT)」は、新たな期限までに「国内に十分な充電インフラを整えられるのか?」と疑問視しています。同団体のマイク・ホーズ会長は、「ゴールポストを動かした」という英国らしい表現で政府を非難しました。

 米国に比べれば、はるかに規模は小さいものの、英国の自動車市場は欧州でも最大の市場の1つであり、2019年1年の乗用車登録台数は230万台に上ります。英国政府の統計によれば、このうちピュアEVは3万7850台のみだったのです。

充電インフラの課題

 「多くのEVをどこで充電するのか?」という問題は、確かにあります。EV充電ステーション情報を提供する「Zapmap」によれば、英国には1万800か所のEV充電ステーションと3万400個のEV充電器があるものの、「多くの地域で充電インフラは貧弱だ」と言います。

 英国には、現在3600万台の自動車および小型商用車(バンおよびトラック)があり、平均使用年数は7.7年です。このため、既存の内燃機関の使用へのさらなる規制なしでも、この国は2040年までに増加するEVを支えるための十分なインフラを構築する必要があるわけです。

 多くの批評家は、ジョンソン首相が示す自動車規制への熱意の込め方に比べ、他の分野におけるCO2排出規制にはあまり目を向けない英国の姿勢に対し、常に疑問視していました。英国人は空の旅が大好きで、ロンドンの空港を発着する旅客便の数は世界のどの都市をも上回ります。さらに、英国は鉄道の電動化については欧州諸国に大きく遅れを取っており、電動化されている旅客鉄道網の割合はフランスの55%、ドイツの60%に対し、英国ではまだ40%に過ぎないのです。

 
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 もう1つの複雑な要素としては、英国が欧州連合(EU)を離脱したことがあります。このことによって、英国と欧州のその他の国との間に自動車関税をもたらす可能性があ浮上しているのです。英国で現在生産されているEVの量産モデルは、MINI初の量産型電気自動車となる「MINI エレクトリック」(英国以外での正式名は「MINIクーパーSE」)と日産の「リーフ」だけです。

 また、英国の高級車メーカーは世界でも指折りのパワフルで贅沢な内燃動車を生産しており、マクラーレン(全車でV8エンジンを搭載)やロールスロイス(全車でV12エンジンを搭載)、アストンマーティン(V8あるいはV12エンジンを搭載)などが、この国に本社を置いています。

 ベントレーも最近、「ベンテイガ」のプラグインハイブリッドモデル「ベンテイガ ハイブリッド」を発売したばかり。ですが、このジョンソン首相の計画が実現すれば、このモデルも大きな成功を収めることはないでしょう。そんな中、アストンマーティンは自社のピュアEVの「ラゴンダ」の開発を、2025年以降まで遅らせることを発表していました…。

 ちなみに欧州のいくつかの国はすでに、より高い目標を掲げています。

 従来のガソリン車の販売禁止に関してノルウェーは、2025年には禁止することを目標にしています。またスウェーデン、アイスランド、デンマーク、オランダでは2030年の禁止を目指しているのです。それと比較して、英国はどうなのでしょうか?

 ちなみに英国の中でも、法制度・教育制度および裁判制度はイングランドおよびウェールズならびに北アイルランドとは独立したものとなっているスコットランドでは、英国の他のカントリーよりもやや早い、2032年の禁止を目標に掲げています。



Source /Popular Mechanics
Translation / Wataru Nakamura
※この翻訳は抄訳です。