• 日本企業「スカイドライブ(SkyDrive)」社が、豊田テストフィールドで1人乗りのプロトタイプ電動垂直離着陸機(空飛ぶクルマ)のテストを完了しました。
  • この空飛ぶクルマ「SD-03」は、駐車場2台分ほどのスペースに着陸できるもので、製品版では2人乗り(片方はパイロット席)になる見込みです。
  • このプロジェクトは自動車メーカーの「トヨタ」が支援しており、2023年までに空飛ぶクルマによるサービス開始を目指しています。

 頭上を騒々しく飛ぶドローンを見て、「あれを巨大化して人間を乗せられないだろうか?」と思ったことはありませんか? そして、そのドローンが見事にクラッシュする様子を見て、「なるほど、だからすぐにはできないのか…」と納得したことでしょう。とは言え、ドローンの発展形である電動垂直離着陸機(electric vertical takeoff and landing vehicles, eVTOL)こそが、空飛ぶクルマ(タクシーとも呼んでいます)を実現する最も有望な技術だと思えるのは確かなことです。

 2020年8月25日のこと、日本企業スカイドライブが愛知県の豊田テストフィールドでこの技術の有人飛行試験に成功しました。つまり、私たちはSF映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』や『フィフス・エレメント』のような世界へと、ここで一歩近づいたというわけです。

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Sony Pictures
映画『フィフス・エレメント』での空飛ぶクルマ(明らかにボディはタクシーのデザインです)のシーン。SF映画で予言されたいくつかの架空の発明品の中で、いまだ実現の可能性が遠い存在の空飛ぶクルマ…。ですが、この映画の時代設定は2214年。そのころには、間違いなく実現していると言えるニュースではないでしょうか!?

 スカイドライブの「SD-03」は、これまでにないタクシーを実現するためのデモ機です。この試作機は投影面積(車幅と車軸間の距離の積)約3.65平方メートルと小型であり、駐車場2台分ほどのスペースに着陸も可能。異なる方向に回転する4組のローターによって離着陸し、各ローターはモーターで稼働します。

 スカイドライブによれば、4カ所のローターと8個のモーターを採用することで、一部で異常が発生した場合にも他のローターやモーターがバックアップの役割を果たすといいます。自動車サイズの物体が裏庭でバーベキューをする市民の頭上から落ちてくるような事態は、規制当局が最も心配することでしょう。なので、このような安全性の高さは当局の懸念解消に役立つことでしょう。

これはyouTubeの内容です。詳細はそちらでご確認いただけます。
World Debut SkyDrive Manned Flight Test with SD-03 in August 2020 Full Version
World Debut SkyDrive Manned Flight Test with SD-03 in August 2020 Full Version thumnail
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 エスクァイア・デジタルはまだ「SD-03」の開発中であった2019年に、スカイドライブの代表取締役を務める福澤知浩氏にインタビューを行いました。当時、「まだ進歩が足りていない」と語っていた福澤氏ですが、わずか1年間の間に技術の向上が行われたことが明らかになりました。

 そんな福澤氏はこのテストの結果を受けて、次のようにコメントしています。

2018年のスカイドライブ設立以降、メンバー一同技術開発に励み、今年の頭から有人飛行試験を続けて参りましたが、今回、有人飛行の様子を多くの方と共有できる機会を設けられたことを大変うれしく思います。次の大きなマイルストーンは、2023年度の空飛ぶクルマの実用化です。我々は日常的な移動に空が活用され、移動にさらなる便利と楽しさを提供したいと考えます

 実際に製品化にこぎつけた場合、「SD-03」は2人乗りとなり、片方はパイロット席となる見込みであるとのこと。試作機は1人乗りで、トヨタの約1万平方メートルのテストフィールド(ネットで囲まれています)で高度約2メートルまで浮上し、4分間ほど飛行しました。つまり、まだ一歩を踏み出したばかりというわけです。

 試作機のデザインにはヘッドライトやテールライトも組み込まれており、これらは通常の位置だけでなく、地上から見る人が「SD-03」の進路を把握できるよう、ボディー下方にも搭載されています。

 スカイドライブは2020年末までにはトヨタのテストフィールドを卒業する予定で、2023年までに東京で空飛ぶクルマのサービス開始を目指しています。

これはpollの内容です。詳細はそちらでご確認いただけます。

 非現実的な計画に思えるかもしれませんが、トヨタは空飛ぶクルマを人々の日常に送り込もうと力を尽くしています。

 スカイドライブは愛知県の豊田R&Dセンターに拠点を置いています。トヨタは2020年初めに、別のeVTOL企業である「ジョビー・アビエーション(Joby Aviation)」にも3億9300万ドル(約420億円)の投資を行っています。

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Joby Aviation
ジョビー・アビエーション(Joby Aviation)が開発した4人乗りの垂直離着陸型の飛行体「eVTOL」。

 未来の輸送手段の方向性に関するトヨタの予測が正しければ、「オフロード」(道がなくても走行可能)という言葉はこれまでとまったく違う意味を持つことになるでしょう。

 今後もスカイドライブのさらなる技術から目が離せません。日本発の「空飛ぶクルマ」の今後の発展を、ぜひ応援しましょう。

Source /Car and Driver
Translation / Wataru Nakamura
※この翻訳は抄訳です