厳しい雪道や凍結した道を自動車で、安全に走行するために必要となる相棒が「スタッドレスタイヤ」です。ご存知のとおり、どんなに高性能なクルマでも、路面と触れているのはタイヤなのですから…。それだけに、しっかりとしたタイヤを選ぶことはとても重要となります。
これまで、オートバックスやイエローハットなどに代表されるカー用品チェーンで購入するのが一般的でした。ですが、比較的安く手に入れられることもあり、最近ではAmazonなどのネット通販を利用する人も増加中です。
そこでこのページでは、寒い地域の冬に必須のスタッドレスタイヤの選び方と、おすすめの商品をご紹介します。さらに、ネット通販での購入やタイヤの取り付け方法などのよくある質問にもお答えしていますので、ぜひ最後までチェックしてみてください。
スタッドレスタイヤとは?
クルマを所有して初めて寒い時期を迎えるなど、スタッドレスタイヤについてあまり詳しくないという方も少なくないでしょう。まずは、スタッドレスタイヤについて解説します。
雪道・凍結路を走るための冬専用タイヤ
スタッドレスタイヤは、雪道や凍結路を走るための自動車用スノータイヤの一種となります。夏用タイヤ(冬用のタイヤを除く、通常時に装着しているタイヤのこと。サマータイヤと呼ばれることも)に比べて、柔らかい特殊なゴムを使用することでグリップ力を高めています。
1980年代までは、タイヤの表面にスパイクと呼ばれる、金属などでつくられた滑り止めのための鋲(びょう)を打ったタイヤが主流でしたが、 削れたアスファルトによる健康被害が発生したことで禁止となり、スタッドレスタイヤが台頭してきました。
寿命は一般的に3~4年。溝が残っていても買い直すのが安全
スタッドレスタイヤは、柔らかなゴムで雪や氷をとらえて走ることでスリップを防ぎ、雪道や凍結した道を走行する際の安全性を高めます。そのため、ゴムが固くなってしまうと、溝が残っていても本来の性能が発揮できません。安全のため、すり減っていなくても、寿命とされる3~4年で新品へ交換する必要があります。
スタッドレスタイヤの選び方
それでは、自分のクルマのためにスタッドレスタイヤを装着したい場合、どのように選べばよいのでしょうか。ここでは、スタッドレスタイヤの選び方を見ていきましょう。
愛車のタイヤサイズをチェックして同じサイズのものを選ぶ
自動車のタイヤには、さまざまなサイズがあります。同じ車種でもクルマのグレードによって、タイヤサイズが異なるので注意が必要です。まずはスタッドレスタイヤを装着したいクルマに現在装着されているタイヤを実際に見て、サイズを確認しましょう。
タイヤサイズの見方とは?
タイヤの側面には、さまざまな数字やアルファベットが記されており、それがタイヤのサイズを知る手がかりとなります。基本的には、以下のようになります。
【例:205/55R16】
- 205=タイヤの幅(mm)
- 55=タイヤの扁平率(へんぺいりつ)(%)
- 16=タイヤの直径(in・インチ)
基本的には、夏用のタイヤと同じサイズのものを選ぶことをおすすめします。
ただし、カーショップなどで相談した場合、雪道でのグリップ力を向上させるために細目のタイヤをすすめられるケースもあります。その場合は、ショップの方とよく相談しましょう。
初めての購入ならホイールセットで買うのもおすすめ
始めてスタッドレスタイヤを購入する場合、スタッドレスタイヤを装着するためのホイールが一緒になった「ホイールセット」を選ぶことがおすすめとなります。そうすれば冬が終わったときに、ホイールごと外してスタッドレスタイヤを保管できますので。
ホイールを選ぶ際は、ネジ穴の数や間隔をはじめ、チェックする項目が多岐にわたります。そのため、ホイールセットで購入される場合は、ディーラーやカーショップ(イエローハットやオートバックスなど)で相談することをおすすめします。
凍結路を頻繁に走るなら、日本で開発されたタイヤがおすすめ
極寒の北欧では、タイヤに釘を打ったスパイクタイヤが認められていますが、日本では認められていません。しかも日本の雪は湿っぽく、クルマに踏まれて溶けた雪が夜に再び凍結し、それが再びクルマに踏まれることでツルツルの「ミラーバーン」になりがちです。
このように、日本の(とくに秋田県・青森県・北海道などの)冬は世界的にも特殊なタイヤ事情とされています。そのため凍結路を頻繁に走るなら、日本のタイヤメーカーの製品か、日本でスタッドレスタイヤの研究をしているミシュランや、日本専用設計のグッドイヤーの製品をおすすめします。
圧雪路がメインなら、海外メーカー製品も検討候補に入れる
雪を踏み固めた「圧雪路(あっせつろ)」、もしくは、雪の隙間からアスファルトが見えているような道を走るのがメインというような凍結路を走らないのであれば、国産メーカーだけでなく、海外メーカーの製品から選んでも問題ないでしょう。
特に欧州メーカーのスタッドレスタイヤは、国産メーカーの製品に比べて高速性能が良いタイヤが多いと言われています。「普段あまり雪は降らないので、高速道路での安定性を重視したい」という方におすすめです。
おすすめのスタッドレスタイヤ7選
ここでは、スタッドレスタイヤのおすすめ製品をご紹介します。サイズはご自身のクルマに合ったものをリンク先からお探してください。
ブリヂストン BLIZZAK VRX2
スタッドレスタイヤのシェアNo.1を誇る、ブリヂストンの最新作です。親水性の素材でタイヤをコーティングすることで、氷の表面の水膜を除去して、氷とタイヤを今まで以上に密着。しっかり止まり、しっかり曲がる新時代の性能を実現しています。
ミシュラン X-ICE SNOW
スタッドレスタイヤの開発拠点を日本に置いている、ミシュランタイヤの最新作です。独自のポリマーを配合することで従来品よりしなやかで、しかも経年で固くなりにくいゴムを実現。長い期間優れた氷上性能を保ちます。SUV用の「X-ICE SNOW SUV」もあります。
グッドイヤー ICE NAVI 7
アメリカ最大手のタイヤメーカーであるグッドイヤーは、日本専用にスタッドレスタイヤを開発しています。極小シリカゴムの採用で、氷上の細かな凸凹に密着する柔軟性を実現。それと同時にタイヤの発熱を抑え、ドライ路面での走行性能・経済性も両立しています。
ダンロップ WINTER MAXX 03
日本におけるダンロップタイヤは、住友ゴムが製造する国産タイヤ。こちらは、氷上性能を追求することで、従来品よりブレーキ性能を22%も向上させた最新作です。新開発の「ナノ凹凸ゴム」が氷の上の水膜を素早く除去し、凍結路での安全性を高めます。
ヨコハマ iceGUARD 6
ヨコハマタイヤのスタッドレス「iceGUARD」シリーズの最新作は、経年劣化しにくいゴム素材と、従来品から33%改善したという静粛性が特徴です。走る・曲がる・止まるの基本を抑えつつ、経済性と快適性も重視したい欲張りな方におすすめのタイヤです。
コンチネンタル VikingContact 7
低温下でもゴムの柔軟性を維持する、“菜種オイル”を配合した新開発の「ノルディック・コンパウンド」を採用。プレミアムな冬用タイヤです。コンチネンタル独自の雨で濡れた路面でのグリップ性能と、相反する氷上での両立にこだわっています。
ピレリ WINTER ICE ASIMMETRICO PLUS
イタリアのピレリが、アジア・パシフィック地域専用商品として販売している製品がこちら。ツルツルの凍結路はあまり得意ではないものの、冬用タイヤとは思えないほど、乾いた路面での走行性能に優れています。たまにしか雪の降らない地域の方におすすめです。
スタッドレスタイヤのQ&A
ここからは、スタッドレスタイヤに関するよくある疑問にお答えします。
スタッドレスタイヤの交換時期はいつがベスト?
夏用タイヤより、ゴムの柔らかいスタッドレスタイヤは高温が苦手。そのため、気温や路面の温度が高い時期は使わないようにしましょう。地域にもよりますが、スタッドレスタイヤへの交換は10月~11月、夏用タイヤに戻すのは3月~4月が良いでしょう。
ネットで買ったタイヤはどのように装着すべきか?
Amazonをはじめ、ネット通販でタイヤを購入するケースが増えています。となると、「購入したはいいけれど、自分では装着できないし…」と不安になる型も多いはず。
しかしご安心を。タイヤのネット通販が普及するに伴って、持ち込みのタイヤをリーズナブルな工賃で装着してくれるカーショップや整備工場が増えています。
「タイヤ 持ち込み」などのワードで検索すると、さまざまなショップが出てくるので、料金をしっかりと見比べて選ぶと良いでしょう。
スタッドレスタイヤの空気圧はどうすべきか?
タイヤのサイズが同じであれば、夏用のタイヤと同じ空気圧でOKです。
ほんとんどの国産車が、運転席のドアを空けた車体側のエッジ付近に指定の空気圧を知らせるシールが貼られています。指定の空気圧を守って、安全に使いましょう。
スタッドレスタイヤの保管方法は?
スタッドレスタイヤをカーショップなどで外してもらったら、汚れをよく落としてしっかりと乾燥させましょう。その後、雨風と直射日光が当たらない場所に保管するのがベストです。ガレージの中や、屋外ならカバーを掛けておくと良いでしょう。
使わないスタッドレスタイヤの預かりサービスがあるの?
あります。ネットで「スタッドレスタイヤ 保管サービス」などと検索してみると、大手カーショップやタイヤ店などで行っているサービスが見つかるはずです。温度管理の行き届いた場所で保管してくれるサービスの利用は、考えてみる価値があるでしょう。
おすすめのスタッドレスタイヤメーカー
最後に、スタッドレスタイヤを生産している有名タイヤメーカーの特徴をご紹介しましょう。
ブリヂストン/Bridgestone(日本)
日本が誇る、世界シェアNo.1のタイヤメーカーです。中でもスタッドレスタイヤの日本における評判は絶大。「北海道札幌市のタクシーの73.1%がブリジストンのスタッドレスを履いている」とメーカー自らが言うほどの圧倒的なシェアと、プロからの厚い信頼を得ています。
ミシュラン/Michelin(フランス)
1980年代に日本で初めてスタッドレスタイヤを販売したのが、世界シェア第2位のミシュランタイヤです。フランスのメーカーながら、スタッドレスタイヤの開発を北海道で行っており、日本のメーカー以上に日本の雪道を研究し尽くしている世界の名門です。
コンチネンタル/Continental(ドイツ)
速度無制限区間がある高速道路「アウトバーン」で鍛えられた、ドイツの高性能タイヤメーカーです。コンチネンタルのスタッドレスは、欧州で開発された世界共通スペック。いわゆるミラーバーン性能は一歩譲るものの、夏用タイヤに匹敵する走行性能が魅力です。
グッドイヤー/Goodyear(アメリカ)
アメリカの歴史あるタイヤメーカーで、2019年の世界シェアは第4位。スタッドレスタイヤ「ICE NAVI」シリーズは、日本用に設計され、日本で生産される、国産タイヤです。一時、住友ゴムと提携していましたが、現在はアメリカ資本に戻っています。
ダンロップ/Dunlop(日本・住友ゴム)
ダンロップそのものはイギリス発祥のメーカーですが、日本では住友ゴム製のタイヤのブランド名となっています。やや地味な印象があるものの、世界シェアは5位で、夏用、冬用ともに、バランスのよいタイヤづくりに定評があります。
ピレリ(イタリア)
100年を超える長い歴史を持つ、イタリアのタイヤメーカー。2020年現在、F1のタイヤを独占供給しています。現在は中国化工集団の傘下となっています。スタッドレスタイヤは中国と日本をターゲットに開発しており、生産は中国の工場で行われています。
ヨコハマ/Yokohama(日本・横浜ゴム)
横浜ゴムは、日本第3位のタイヤメーカーです。同社のスタッドレス「ice GUARD」は、他の日本メーカーと同じく、氷上性能に重点を置いた開発をしており、また経年劣化が少ないことでも知られています。
まとめ
普段の運転中は、あまり意識することがないかもしれないタイヤですが、人の命を預かる重要なパーツとして、膨大な費用をかけて研究されています。特にスタッドレスタイヤの性能の向上はめざましく、少し興味を持つだけで選ぶことが楽しくなります。
自動車は生活必需品であると同時に、使い方を間違えると凶器にもなりえます。特にスタッドレスタイヤはクルマの「止める・曲がる」に非常に重要なパーツなので、しっかりと納得のものを選んで、正しく使いましょう。