2024年5月5日(日)、アメリカ・フロリダ州のマイアミ・インターナショナル・オートドロームにて開催された第6戦のマイアミGP決勝レースにて、マクラーレンに所属するランド・ノリスがキャリアにおけるF1初優勝を飾ります。ちなみにマクラーレンにとっては、2021年第14戦イタリアGP以来の美酒となります。

ランド・ノリス、
悲願の初優勝を祝して

当日5番グリッドからスタートしたのち、ひとつポジションを落としながらもピットストップの時期を遅らせてトップに。その後、アクシデントによるセーフティカーが出動されましたがこれが功を奏し、この際にタイヤ交換を済ませることができ、トップでコースに復帰。リスタート後も後続のマックス・フェルスタッペン(レッドブル)らを全く寄せつけず、最終的に2位とのギャップを7.612秒まで築いてトップにてチェッカーを受けることに…。

イギリス・ブリストル出身の現在24歳のノリスにとって、このマイアミGPは2019年にマクラーレンでF1デビューして以来110戦目にあたるグランプリ…。まさに悲願の初優勝を果たしました。

これはyouTubeの内容です。詳細はそちらでご確認いただけます。
The Winning Moment | Lando Norris' Miami GP Victory #ForeverForward
The Winning Moment | Lando Norris' Miami GP Victory #ForeverForward thumnail
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スタート時の路面温度は47℃と、タイヤの温度管理が難しいコンディションの中でノリスの優れたタイヤマネジメント能力によって、マシンに投入されたアップデートも活かしながら最速のレースペースで勝利を手にしました(セーフティカーの味方もありましたが…)。

そんな悲願の初優勝を果たしたノリスを祝し、2023年7月にエスクァイア USで公開されたインタビュー記事で語ったレース前のルーティン、ファッションの好みなどを振り返ってみましょう。


F1ドライバーの素顔に迫る:ランド・ノリスが語るオフの日とパーソナルスタイル

英国出身のF1ドライバー、ランド・ノリスとのビデオチャットがつながると、どうやらそこは車の運転席のよう…まさに、完璧なロケーションです。とは言え、あの特注のマクラーレンでもなければ、グランプリのサーキットでもありません。なんと、オフの日にランド・ノリスが取材に応じてくれることになったのです。ハンドルを握る彼に聞きたいことなんて、山ほどあります。

世界最高峰のフォーミュラーカーのレースを戦うノリスですが、その実像はかなりクールな23歳(2023年7月の時点)の若者です。「僕のクローゼットの中身? パーカだらけですよ」とノリスはおどけます。

「うまく説明はできないんですが、着心地がいいのと、あと目立たずに済みますからね。だから、普段はパーカばかり。特にこだわりはないんですよね」

ランド・ノリス(f1ドライバー)
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2023年にモータースポーツチームの雄であり、スーパーカーメーカーであるマクラーレン創立60年を祝し、国際的なトラベル・ライフスタイルブランドであるTUMIとのコラボコレクションを発表。その際、ノリスはそのキャンペーンの顔として、「旅」と「レース」という彼の最も愛する二つのアイテムをさりげなくもスタイリッシュに表現していました。

「僕にとって全ての始まりと言えば、マクラーレンです。それにTUMIと言えば、マクラーレンのパートナーです。その強固なパートナーシップを、何かもっとパーソナルなものとして表現したいと思ったんです」とノリス。

「デザインとか、クリエイティブなことが大好きなんです。僕自身は特にファッショナブルな人間ではありませんが、ファッションに興味がないわけではありません。だから今回はチャンスだと思って、いろいろ盛り込んでみたんです」

ランド・ノリス(f1ドライバー)
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ところでノリスには、知る人ぞ知る、「第3の世界」とでも呼ぶべき領域があります。レースと旅の、その向こう側にある、いわば「ノリス・ワールド」とでも呼ぶべき領域。

F1ドライバーから直接その舞台裏について聞ける機会など、めったにありません。靴へのこだわりや、レース前に欠かさない習慣、フォーミュラーカーのシートに座ることの意味について、ノリスに語ってもらいました。それでは行ってみましょう。

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ノリスが大切にする三つの世界とは?

僕のスタイルについて言えば、そこには三つの異なる側面があると思っています。まずは「快適さ」です。旅先でとにかく重要なのは、快適であることですよね。なので、ファッションにこだわるというより、そのまま横になれる服装を選ぶことが多いです。

F1ドライバーは旅から旅の生活ですから、見た目を気にし過ぎるのも面倒です。自分らしく、なるべく気楽に旅したい。最高のパフォーマンスを目指さなければなりませんから、睡眠がとにかく重要です。だから、快適であることが僕にとってはなにより大切なのです。

ランド・ノリス(f1ドライバー)
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もちろんレースは仕事です。マクラーレンの一員としてサーキットに向かう際には、着るものだって指示されます。いつでも好きな格好をできるというわけではありません。でも、友人たちとの旅行はまた別です。特に、おしゃれを意識しているとは言いませんが、靴にはこだわりがありますね。

大抵10足から12足ほど、履き心地の良い靴を荷物に入れるようにしています。「持ち過ぎじゃね?」って笑われますよ(笑)。仕事の世界、快適な世界、楽しい世界、僕はこの三つの異なる世界を生きています。クラシックな装いに合わせるなら、ゼニアのスニーカーです。「トリプルステッチ」はおそらく全色持っていますね。仕事の現場でも、それ以外の場所でも文句なしです。

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美意識と冒険心

レースの現場にTUMIのバッグやスーツケースを持ち込むことで、大好きな旅とレースを同時に楽しめるのはすてきなことです。TUMIの人々との仕事もまた、素晴らしい経験です。レーサーとしてのスタイルやパフォーマンス、そして美意識にはカーボンファイバーなどの軽量素材がよく合いますし、そこが何より気に入っています。

ランド・ノリス(f1ドライバー)
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自分なりの創造性と遊び心を盛り込むのも楽しいですよ。手を加えるのは大好きで、使いながら気づいた点など、バッグの改良に役立ててもらえるのがうれしいです。そうして仕上がったバッグやケースに、とても満足しています。

譲れないこだわり

レースに挑む前に、必ず二つのことを徹底します。

レースの週末には絶対に同じ食事、同じ飲み物と決めています。食の好みは変わらないので、メニューは自(おの)ずと決まります。気になる人がいるかもしれないので打ち明けますが、「テリヤキチキンライス」と「水」です。

それから、日曜日のレース前にはチームのメカニック全員と拳を合わせるのが習慣になっています。とにかく、これをしないと始まりません。そのための時間は、無理をしてでも確保するようにしています。他のドライバーはやらないでしょうね。でも僕は、とにかくチームプレーヤーであることを大切にしたいんです。

ランド・ノリス(f1ドライバー)
wearegrip

ピットストップはチームワークの賜物(たまもの)ですし、レース中はチームが一丸となって万全の管理体制を敷くわけです。というわけで、以上二つがランド・ノリスがレース前には欠かせない習慣になります。

どちらかでも欠けると、精神的にちょっとパニックになり、どうしたらいいかわからなくなってしまうこともあるほどです。

アティテュード

僕の性格ですか? 地に足の着いた、普通の人間だと思っています。立場とか役割は関係ありません。人間として最も重要なのは、「優しさ」と「敬意」です。他の人々を見る際には、そのアティテュードの持ち主かどうかが気になります。相手を好きになるかならないかは、そこに大きく関わってきますし…。優しさと敬意とを備えた人とは仲良くなれますし、良い関係性が生まれます。

誇るべき瞬間

自分の立場は、とてつもない幸運のうえに成り立っています。そのことを、常に忘れないようにしています。そして同時に、ものすごく難しいチャレンジに打ち克つことを目指しています。つまり、表彰台に立つことですね。

ランド・ノリス(f1ドライバー)
TUMI

まだF1での優勝経験はありませんから、次の目標は表彰台のセンターです。そこに立てる人間は、世界中に何人もいません。自分がその可能性のある数少ない人間の一人であることを自覚し、努力と時間を惜しまず、目標のためにあらゆる犠牲を厭(いと)わない覚悟で挑んでいます。それが僕にとっての幸せであり、誇りです(そして、2024年5月5日に実現しました…)。

Source / Esquire US
Translation / Kazuki Kimura
Edit / Ryutaro Hayashi
※この翻訳は抄訳です