「メルセデスAMG」が本拠地であるドイツ南部の街・アファルターバッハで生産するオリジナルカー「GT」の2代目モデルが、日本への上陸を果たしました。先陣を切って導入されたモデルは、メルセデスAMG「GT63 4MATIC+クーペ」。本国ドイツではすでに「GT55」「GT43」というモデルも発表済みなので、今後は日本にも追加導入される可能性があります。

現在のメルセデス・ベンツ車は、ラインナップが実に多彩です。

基軸ブランドはあくまでメルセデス・ベンツですが、よりスポーツ性を高めたハイパフォーマンスモデルはメルセデスAMGが担います。メルセデスの後に「EQ」が付けばBEV(バッテリー式電気自動車)モデルとなり、メルセデス・マイバッハならウルトララグジュアリーに分類されます。

メルセデスamg「gt63 4matic+ クーペ」
MERCEDES-BENZ AG - GLOBAL COMMUNICATIONS MERCEDES-BENZ CARS & VANS

多くの車好きが夢を投影する
メルセデスAMGブランド

ここでは、メルセデスAMGのラインナップをもう少し細かく見てみましょう。最も手軽にAMGならではのテイストを味わうなら、メルセデス・ベンツにオプションのAMGスタイリングパッケージを装着すればOK。前後のバンパーやホイールなどがAMGデザインの専用品となり、精悍(せいかん)な印象に変わります。

そこからさらにもう1段ステップアップし、よりスポーティさを求めるなら、高性能パワートレインを搭載した「メルセデスAMG」+「モデル名」の車になります。既存のメルセデス・ベンツの車体をベースに、必要に応じた構造変更やサスペンション、ブレーキなどの機能部品をアップグレードしたモデルになります。特別にデザインされた内外装となりますので、まさにエクスクルーシブな1台と言えるでしょう。

メルセデスamg「gt63 4matic+ クーペ」
MERCEDES-BENZ AG - GLOBAL COMMUNICATIONS MERCEDES-BENZ CARS & VANS
メルセデスamg「gt63 4matic+ クーペ」
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「AMG」はもともと、メルセデス・ベンツのモータースポーツ用エンジンを開発する部署に在籍していたハンス・ヴェルナー・アウフレヒト氏とエアハルト・メルヒャー氏が1967年に興したエンジンチューニングを主業務とした会社です。ちなみにAMGという3文字は、アウフレヒト氏(Aufrecht)のA、メルヒャー氏(Melcher)のMで、Gは創業者2人の故郷グローサシュパッハ(Grossaspach)に由来します。

メルセデスamg「gt63 4matic+ クーペ」
Mercedes-Benz AG - Global Communications Mercedes-Benz Cars & Vans, photo by Deniz Calagan on behalf of Mercedes-Benz AG
メルセデスamg「gt63 4matic+ クーペ」
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1971年のスパ24時間レース*で、並みいるワークス勢を押しのけて総合2位とクラス優勝を獲得し、彼らの名声は一気に高まりました。AMGが成長軌道に乗ると、同社の高性能エンジンを搭載し各部を強化した完成車を求めるユーザーが詰めかけます。こうした経緯を経て1999年にメルセデス・ベンツの傘下に入り、今日のメルセデスAMGが誕生しました。

メルセデスAMGの特徴として、「ワンマン・ワンエンジン」というものがあります。これは、一人のマイスターが1基のエンジンを最初から最後までくみ上げるというAMGならではのスタイルで、創業期から貫かれている伝統です。その証しとして、完成したエンジンには担当したマイスターのサインプレートが備わります。

※ベルギーのスパ・フランコルシャンサーキットで行われる24時間耐久レース。全長7.004kmは世界最長で、過酷な戦いの場となる。公式では「スパ24時間 (24 Hours of Spa)」と称していますが、1997年までは「フランコルシャン24時間 (24 Heures de Francorchamps)」が正式名称だった。スパ24時間公式サイトを参照

これまでの伝統とは異なり
「GT」はAMGの独自開発

さて、冒頭に触れた“オリジナルカー”の意味ですが、今回メルセデスAMGに導入された「GT」には、ベース車両となるモデルがメルセデス・ベンツのラインナップの中にありません。シャシーや内外装のデザインもメルセデスAMGだけの特別版。つまり、「GT」は同社が完全独自に開発したスポーツモデルとなります。

メルセデスamg「gt63 4matic+ クーペ」
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メルセデスamg「gt63 4matic+ クーペ」
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「AMG」の視点に立てば、エンジンからシャシーまで独自開発の「GT」は新たな次元への挑戦であり、最も濃厚なDNAを宿すモデルと言えるでしょう。今回の2代目「GT」では市場のニーズに応え、従来のレイアウトを捨てて四輪駆動化に対応。ホイールベースを70mm延長し2700mmとし、後席スペースを確保すると同時に安定した走りを実現しています。

車体構造の中心となるのはアルミスペースフレームですが、適材適所でスチール、マグネシウム、CFRP(複合素材)を採用しています。空力面も抜かりなく、フロントのフラップとリヤのスポイラーは速度域に応じて可動式となっています。先代モデルと比べてフロアの面積が増えているので、安定性は向上しているでしょうか。

「GT63」と「GT55」は、4LのV8ツインターボエンジンを搭載し、前者が最高出力430kWで最大トルクが800Nm。後者が最高出力350kWで最大トルクは700Nmを発生します。「GT43」は2L直4ターボエンジンで最高出力310kW、最大トルクは500Nmですが10kWのスタータージェネレータを備えます(欧州仕様)。

時代とともに、車に求められる性能は変わります。しかし、ステアリングを握る人間の本能は変わりません。ロングノーズ&ショートデッキのスタイルでパワートレインのレイアウトはオーソドックスなスポーツカーそのもの。高性能を競う世界ですが意外とクラシックの王道を歩む「メルセデスAMG GT」なのです。

メルセデスamg「gt63 4matic+ クーペ」
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