ジープ(Jeep)ブランドを象徴するモデルと言えば、本格派クロスカントリーSUVの「Wrangler(ラングラー)」もその一つです。

ジープの起源は、1940年に米国陸軍が要請した受注入札に応じた3社が共同開発し1941年に発表された四輪駆動の小型トラック。多用途に使えて、どんな路面状況でも走破可能な「軽偵察車両」にあります。

ジープ ラングラー
Jeep
ブランド名の由来は諸説あるものの、この「多目的=General Purpose」の頭文字「GP(ジーピー)」が「ジープ」に変化したとする説が広く流布されるところです(※このページで掲載している画像は全て米国仕様となります)。
ジープ ラングラー
Jeep
ブランド名の由来は他にも、ウィリス・オーバーランド社(米国陸軍の開発要請に応じた3社の内の1社)のテストドライバーだったアービン・ハウスマン氏がコミック「ポパイ」から登場キャラクターの「ユージン・ザ・ジープ」の名を引用し、関係者に「ジープ」と紹介したとする説も。とにかく、そのエピソードに事欠きません。

「ラングラー」という車名自体は、1987年に誕生したYJ型から採用されています。現行モデルは2018年に誕生した第4世代のJL型です。その第4世代のデビューから5年を経過した2023年には、2024年モデルからマイナーチェンジ型へ移行することが本国アメリカで発表され、昨年9月からデリバリーも開始されています。日本国内では正式発表前ですが、多くの専門家は「春から夏にかけて発表されるのではないか?」と予想しています。

米国では新たに発表されている「2024年モデル」は、一見あまり変化のないように見受けられるかもしれません。ですが、ジープの象徴である「7スロットグリル(※編集注:7つの開口部を持つフロントのグリル)」が2023年発売の「ルビコン誕生20周年記念限定車」と同じデザインとなり、一段と精悍(せいかん)な印象にしあがっています。

ジープ ラングラー
Jeep
フロントはよりシャープな印象に。
ジープ ラングラー
Jeep
ジープ ラングラー
Jeep
リアに装着したスペアタイヤの位置を30mm下げることで、後方の視認性を向上しています。
ジープ ラングラー
Jeep
ホイールは新デザインに。
ジープ ラングラー
Jeep
リアゲートにアルミやマグネシウム素材を採用し、軽量化を図っています。

今回の2024年モデルで最も変化を感じさせるのは、ディスプレイモニターの大型化でしょう。従来の8.4インチから12.3インチへ飛躍的に拡大し、視認性が向上しています。スマートフォンの接続もUSB方式からBluetooth方式となり、スマホ本体の置き場に難儀することもなくなりそうです。

デザイン的にもメータークラスターと一体感があり新鮮味を感じます。また、日本仕様でどこまで対応するかは未知数ではありますが、通信による車載ソフトウエアのアップデートも可能となっています。

インテリア細部を見てみると、室内灯の数が増えました。こうした細部の改善はユーザーの声を反映したカタチと言えるでしょう。日本仕様のモデル構成と詳細な装備内容は正式発表を待つ必要がありますが、昨今の資源価格の高騰から本国ではわずかながら値上げされています。

ジープ ラングラー
Jeep
物理ボタンは多く残されるとともに、モニターは大型化し使い勝手が向上。
ジープ ラングラー
Stellantis
サイドカーテンエアバックが標準化され、安全装備の充実がまた一歩進みました。

本格仕様のスペックが
本質を求める暮らしに寄り添う

日本におけるJL型「ラングラー」の本格デリバリーが始まったのは、実質的に2019年です。それ以来、2023年までの販売台数実績はジープブランドの中でNo.1を誇ります。その秘訣(ひけつ)は何でしょうか?

まず要因の一つは、世界的知名度にあるでしょう。軍用車両が起源とは言え、丸いヘッドライトと特徴的な7スロットグリルはもはや愛くるしいキャラクターの一種とも言えます。そのブランド力は絶大なものがあります。

ジープ ラングラー
Jeep

もはやブームではなく、広く浸透した感のあるSUVという車型の存在もあるでしょう。特に、セダンなどから乗り換えても不自然な印象のないシティ派SUVは数多く登場していますが、その中に合って「ラングラー」は際立つ存在です。

このモデルの特徴は、ジープの歴史を濃縮したタフな車づくりにあります。強靱(きょうじん)なラダーフレームはボディパネル自体を構造材とする主流のモノコック構造と異なり、万が一キャビンがつぶれても走れます。

サスペンション方式も、トラディショナルなリジット式を伝統的に採用します。このリジット式とは、左右輪が一つの軸で結ばれていて各輪が独立して動きません。つまり、公園の遊具にあるシーソーのような動きをするのですが、それによって片方のタイヤが宙に浮いても、反対側の車輪を地面に押し付けるので駆動力を得られるというメリットがあります。

ジープ ラングラー
Jeep

また、基本的にシンプルな構造で強度があり、メンテナンスや修理も合理的に行えるという点も人気の秘訣かもしれません。とは言え、正直に言えばこの車をオフロードコースに乗り入れてクロスカントリー走行を楽しむユーザーは、きっと少数派でしょう。それでもあえて「ラングラー」を選ぶのは、本質を求めるライフスタイルそのものにありそうです。

無論、日常ユースへの最適化はジープ側も理解するところです。2024年モデルはエアバッグの増設など安全装備の充実に余念はありません。シンプルに「憧れのジープに一度は乗ってみたい」と思い、購入しても後悔はないと思います。

まずは日本発表を待つことにしましょう。

ジープ ラングラー
Jeep
ジープ ラングラー
Jeep

▲2024年モデルの中には、PHEV(プラグインハイブリッド)の「4xe(フォーバイイー)」ももちろんラインナップされています。