2023年3月5日(現地時間)、F1世界選手権の初戦バーレーングランプリが開催されました。今年のF1シーンを占う開幕戦、メルセデス-AMG・ペトロナス・フォーミュラワン・チーム(以下、メルセデス)のルイス・ハミルトン選手は優勝したマックス・フェルスタッペン選手(レッドブル・レーシング)から50秒以上も遅れる5位に終わりました。ハミルトン選手は、「チームがマシンに関する懸念を聞き入れてくれなかった」と語ります。

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NurPhoto//Getty Images
優勝したフェルスタッペン選手(レッドブル|左)とシャンパンファイトを繰り広げるフェルナンド・アロンソ選手(アストンマーティン・コグニザント・フォーミュラワンチーム|右)。アストンマーティンの今シーズンの躍進を予想する声も多く聞こえてきます。

メルセデスが、2022年シーズンから導入された「グラウンドエフェクト(*1)」に基づく新たな空力手法ルールでのマシンパフォーマンスに不満を抱いているのは周知の事実です。<(*1)グラウンドエフェクトカーとは、車体フロア底面と地面の間における空気の流れでダウンフォースを発生させる仕組みのマシンのこと。1982年に禁止となったが40年後の2022年から再び解禁されました>

昨シーズンからメルセデスが導入している「ゼロサイドポッド(編集注:サイドポッドとは、コックピット側面に張り出した車体両脇側面の部分。内部には冷却システムや電子制御ユニットなどを格納)」というコンセプトは、他のチームには見られない完全なる独自路線です。そんなゼロサイドポッドが採用された2022年型モデル「M13」でメルセデスは、ブラジル・サンパウログランプリでジョージ・ラッセル選手が1勝こそ挙げました。が、グラウンドエフェクト効果特有の悪名高きポーパシング(編集注:走行中に跳ねるように車体が上下してしまう現象)にも悩まされ、不本意なシーズンを送ることとなりました。

2023年シーズンに臨むマシン「W14」にも、ゼロサイドポッドのコンセプトが踏襲されています。が、F1史上最多勝を誇り、メルセデスだけでも6度のチャンピオンに輝いたルイス・ハミルトン選手はBBCラジオ5の取材に対して、「チームのコンセプトについてかなり直接的なアドバイスをしたが、聞き入れてもらえなかった」と語りました。

「昨年、マシンが抱える問題についてチームと話したことがありました。私はこれまでたくさんの車に乗ってきたからこそ、車に必要なものと必要ではないものを理解しているつもりです。私が思うに…、これは説明責任についての話だと思います。『ごめん、君が言っていたことを聞いていなかったよ』と白状することでもあると思うのです。(必要なものが)必要な場所にないのだから、われわれはしっかりと取り組まなければなりません」

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2022年のF1サンパウログランプリで優勝を飾ったジョージ・ラッセル選手は、2023年の開幕戦で7位と出遅れました。

ハミルトン選手は、「現在のマシンは、ポーパシング現象に対する耐性が飛躍的に向上した」と指摘していますが、コーナー中央部でのバランスが大きな懸念点になっているとも付け加えています。最終的に開幕戦では、優勝したレッドブルの周回ペースから約1 秒ほど遅れを取ってしまいました。昨シーズン終盤と比較してみても、両チーム間の差は広がっていると言わざるを得ず、メルセデスが思い描く期待値からも大きく外れています。

チームメートのラッセル選手はバーレーングランプリにおけるレッドブルの圧倒的なパフォーマンスを観て、「今シーズン全レースで彼らが勝利しても不思議ではない」と語ります。この発言に、ハミルトン選手が指摘する懸念点を加えると、明らかに現在のメルセデスが岐路に立っていることがわかるでしょう。

次戦、第2戦となるサウジアラビアグランプリは3月20日(現地時間)に開催され、その後は約1カ月間のオフとなります。その期間はチームの立て直しに充てることができますが、もしメルセデスが本気で今シーズンの勝利を求めるのであれば、すぐにでも抜本的な変更を加える必要がありそうです。

 
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Source / Road & Track
※この翻訳は抄訳です