操作に対して大味で、フワフワとした乗り味…。

 昔ながらのアメリカ車のイメージは、よく言えばおおらか…悪く言えば鈍い。日本では、その個性的な乗り味を毛嫌いして揶揄する人も多かったのは事実ですが、今もそう思っているなら時代錯誤です。
 
 今から一年前に「XT5」がデビューした当時、キャデラックは生まれ変わりの大変革の時を迎えていました。それはアメリカだけでなく、ヨーロッパなど海外でも販売拡大を積極的に狙うことと、オーナーの若返りを目標に、乗り味を洗練させ、最新のユーザーインターフェースを取り入れるなど、ブランドをリファインしました。
 
 もちろんキャデラックらしい高級な世界観は絶対に失わない。そこがこだわりです。

 スリムで丸みのある体形の欧州車や、室内の広さを最重要項目に置く、後ろ太りの日本軍のデザインとは明らかに違います。同じボディーサイズであっても、ボンネット周りのデザインなどに縦方向のボリューム感があり、全体的に塊感があるといいますか、迫力があり存在感があるのです。

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丸みを帯びたSUVが増えるなか、トラッドなキャデラックのイメージを彷 彿とさせるエッジの利いたモダンなデザインは実に目を引きます。

 この威風堂々とした雰囲気こそ、アメリカ車らしさ。バンパーまでつながる鋭い眼光のヘッドライトはモダンなデザインですが、キャデラックのトラディショナルを受け継ぐもの。昼夜を問わずシャープな印象を漂わせます。スーツを着こなして、ホテルのエントランスに乗りつけたらオーナーを”やり手”に見せる凛々しさがあります。
 
 まだ日本では多くの台数が走っていないので、街中で実車を見かけたことのある方は少ないかもしれませんが、輝くクロームホイールを、紳士のドレスシューズのごとく嫌みなく履いている品格を見ていただくと、その雰囲気は想像しやすいでしょう。これが新生キャデラックのテイストであり、SUVだらけな今のクルマの世界でも埋もれることのない存在感があります。
 
 走りも昔とは異なるもの。従来のアメリカ車らしい重厚でゆったりとした乗り味はそのままあります。言うなれば、真っすぐ走っている限り、トラッドなアメリカ車らしさはそのまま。シートや内装の造りもまた、広くゆったりとしたリラックスできる空間です。

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車体の大きさで存在感を出し、デザインで引き締まった洗練された印象を漂わせ、走りの良さも予感させる。何より生活感を一切にじませないのでビジネスユースがとても似合うのです。

 しかし、ハンドルを切りこむほどに、昔ながらのアメリカ車とは異なる感触を得るはずです。切り始めこそ若干穏やかで大味な雰囲気を漂わせますが、すぐに足周りがその曲がる力をガッシリと支えだす印象を受けます。まるで足周りが切り替わったような仕上がりで、山道などもストレスなく、気持ちよく、”曲がる”走りへと変貌を遂げているのです。
 
 エンジンも低回転を使って力強く 穏やかに走る味はそのままに、いざ踏み込むと高回転までヒュンと吹き上がる味つけになっていて、スポーティーなテイストも備えています。直進はよきアメリカ車ですが、曲がった瞬間から欧州車的なテイストを適度に見せつけてくる。センス良い仕上がりの一台として、注目すべきモデルでしょう。

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大きなクルマであることを誇示するかのような、鋭い縦のライトデザインは、昼夜を問わずに存在感を漂わせます。このような造りだからこそ、通常だと”浮いてしまう”クロームホイールも嫌みなく履きこなすことができるのです。

Cadillac XT5 CROSSOVER
 
心身共に、ゆったりと上質に走れるアメリカ車のトラッドなテイストはそのままに、強固なシャシー&ボディーと電子制御サスペンションを駆使して、曲がりだすと欧州車的な安定性と旋回能力を発揮。エンジンは最大出力314psを発揮する自然吸気3.6リットルV6エンジンのみで、8ATと相まって素直で力強い加速特性を生みます。グレード構成は、619万円の「ラグジュアリー」と、各所に豪華&快適&洗練装備が満載された699万円の「プラチナム」で、左ハンドルのみの設定。全長4825mm・全幅1915mm・全高1700mmのボディーサイズやゆったりとした室内空間、後席の14cmスライドや12度のリクライニング機能、荷室の床下収納などの基本的な使い勝手に差はありませんが、センターモニターの大きさや運転支援装備のレベル、ホイールサイズなどが異なるので「プラチナム」がオススメです。


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Yoshimi Hatori
五味康隆(自動車ジャーナリスト)

自転車トライアル世界選手権、4輪レースの全日本F3でも活躍した、ジャーナリスト。優れた運転技術と理論に基づく分かりやすい解説に定評あり。先進技術にも詳しい。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。


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