「デロリアン・モーター・カンパニー」と聞いて、すぐにピンと来る人はそう多くないかもしれません。ですが、あの伝説の「DMCデロリアン」のことなら、多くの人がご存知のはず…。

1981年から83年にかけて販売されたスポーツカーですが、ステンレススチール製のボディパネルとガルウイングのドアが特徴的で、唯一無二の1台として今もなお人々を魅了しています。映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー」シリーズでのタイムマシンとして、ロバート・ゼメキス監督が採用したのも納得です。

世界を熱狂の渦に巻き込んだあのクルマが復活を遂げることは、もしかしたら歴史の必然だったのかもしれません。と言うのも、「デロリアン・モーターズ・リイマジンド(DeLorean Motors Reimagined LLC)社」の名のもと、今まさに「デロリアン」復活計画が進行中です。

これはyouTubeの内容です。詳細はそちらでご確認いただけます。
デロリアン開発の裏にある真実…『ジョン・デロリアン』予告編
デロリアン開発の裏にある真実…『ジョン・デロリアン』予告編 thumnail
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筆頭株主にデロリアン・モーター・カンパニーを迎え、元祖「デロリアン」のパーツ販売とレストアに特化した「デロリアン・モーターズ・リイマジンド社」ですが、元祖モデルのクーペに新たな生命を吹き込み、今年8月に開催される「ペブルビーチ・コンクール・デレガンス(カリフォルニア州ペブルビーチで毎年開催れる世界的自動車イベント)」で発表予定となっています。

連続航続距離は500キロに迫る !?

注目の新モデルは、完全限定の少量生産となることが噂されていますが、ガソリンエンジンを搭載した元祖「デロリアン」とは異なり、動力源は電力バッテリーを用いたパワートレインとなる見込みです。

現時点ではデロリアン・モーターズ・リイマジンド社側もこのクルマの詳細については口を閉ざしたままです。そんな中、ボルボやテスラなどで要職を務めた経歴を持つ同社CEOのヨースト・デ・フリース氏は、新生「デロリアン」の航続距離について「少なくとも300マイル(約483km)を達成する見込みだ」と、本誌(アメリカのカーメディア「Car and Driver」)に打ち明けています。

新型「デロリアン」のプラットフォームは、特注で開発が進められているようです。が、電気モーターやバッテリーパックなどのパワートレイン系は、外部調達となる見込みとのこと。「われわれのような(小さな)規模の企業が何から何までを垂直統合することは、今の時代に即したやり方とは言えません」と、デ・フリースCEOは話します。

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TIMOTHY NORRIS//Getty Images

やはり「デロリアン」は、近未来感と夢に満ちた存在であるべきでしょう。「もしあの『デロリアン』がこの40年間ずっと現役であったなら…と仮定して、今はどんな姿になっているかを想像してデザインされています」と、マーケティング部門の責任者トロイ・ビーツ氏は述べています。

ただし、元祖モデル同様に人目を引くデザインになっているかどうかは、今のところ不明です。人々を感情的に魅了することに重点を置いて新型「デロリアン」の開発を行うことを明言するデ・フリースCEOですが、そのためにも空力効率などは多少犠牲にする覚悟であることを明かしています。

実際、元祖「デロリアン」は革新的なその見た目とは裏腹に、クルマとしての性能はお世辞にも素晴らしいとは言えませんでした。その点で言えば、新型は私たちの予想を超えるのかもしれません。デ・フリースCEOによれば、新生「デロリアン」は必ずしも「ハイパーカーとは呼べない」と謙遜しつつも、ドライビングを楽しみたい人々に十分アピールする設計を目指しているとのことです。

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TIMOTHY NORRIS//Getty Images

このプロジェクトを率いる面々が、競争力に富んだハイエンドなEVスポーツカーを生み出すためのノウハウと情熱を備えていることはもはや明白です。しかしながら、小規模のメーカーが収益性の高いクルマを開発、そして量産することは、決して簡単なことではないでしょう。

それでも私たちは、現代によみがえる「デロリアン」の可能性を信じ、8月のペブルビーチに胸を弾ませて乗り込むことになるでしょう。期待は高まるばかりです。

Source / CAR AND DRIVER
Translation / Kazuki Kimura
※この翻訳は抄訳です。