映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー(BACK TO THE FUTURE)」シリーズで、クリストファー・ロイド扮するエメット・ブラウン博士(通称ドク)が マイケル・J・フォックス扮する主人公マーティー・マクフライとともに改造・開発し、ともに時空を越えて乗り回していたクルマと言えば、そう、デロリアンでした。

 デロリアン(モデル名は「DMC-12」)は1981年に、一般向けに販売されたクルマです。初年度から6500台もの販売を記録するなど、売り上げは順調に推移していましたが、2万5000ドル(当時の日本円に換算すると約1600万円)という高額であったことや、大量のキャンセルが発生した問題となって、徐々に雲行きが怪しくなります…。そして1982年に、会社は解散してしまいました。

 つまり、1985年の映画公開時点ではすでに「過去の名車」だったのです。

Land vehicle, Vehicle, Car, Coupé, Classic car, Delorean dmc-12, Model car, Sports car, Sedan, Subcompact car,
delorean
懐かしのデロリアン…。マーティーがタイムトラベルを繰り返した姿に、多くの人が興奮したものです。

 その後映画が公開され、デロリアンは世界中で広く知れわたることに。それから現在に至るまでの間、「復活する←→しない」「電気自動車として戻ってくる←→戻ってこない」という噂レベルの話を繰り返していました。

 中でも、デロリアン復活に最も近づいたと思われたのが2015年でした。

 この年、アメリカでは“少量自動車製造業者法(the Low Volume Motor Vehicle Manufacturers Act of 2015)” が制定されました。これには年間325台未満であれば、衝突テストやエアバッグの搭載などの連邦安全規制を満たさなくてもレプリカ車を製造できる…という内容が含まれていたのです。

 この動きを受けて2016年、現在のデロリアン ブランドの所有者であり、長年「DMC-12」の部品供給や修理を担ってきたデロリアン・モーター・カンパニー(DeLorean Motor Company)が、「“新車”デロリアンを製造する予定がある」と発表したのでした。

これはyouTubeの内容です。詳細はそちらでご確認いただけます。
DeLorean Motor Company's "Lucky Coin"
DeLorean Motor Company's "Lucky Coin" thumnail
Watch onWatch on YouTube

 その方法は、補修用としてストックしていたパーツなどを組み合わせることで、新車のデロリアンを製造するというものでした。この一報にデロリアンの熱烈ファンは色めき立ちました。しかしながらその計画も、実現することはありませんでした。

 現行の法律との調整が不調に終わり(国家高速道路交通安全局(NHTSA)が、2016年12月までに施行されるはずだったガイドラインを提出しなかったわけです)、デロリアン・モーター・カンパニーはこの計画自体を一度棚上げしたのでした…。ところが2019年10月、新たな動きがググっと起こります。

 自動車用品の製造や輸入に関して働きかけるSEMA(Specialty Equipment Market Association)という団体が、NHTSAに対して“少量自動車製造業者法”を実施するための行動を取らなければ、裁判所に異議申し立てをする用意があることを通知したのです。

 これによって風向きが大きく変わり、NHSTAが新しい法律の規制を記した120ページの書類をついに発表。法律施行への動きが、再び活発に始まったのでした…。

 ミシガン州に本拠を構えるクラシックカー保険を専門とする保険会社のハガティ社(Hagerty Insurance Agency)は、デロリアン・モーター・カンパニーのジェームズ・エスペイ副社長と話し合いを持ち、エスペイ副社長は新しい「DMC-12」の生産を開始する計画が進行中であることを認めました。

LA Special Screening Of Sundance Selects' "Framing John Delorean"
Timothy Norris//Getty Images
純金パネル仕様車も販売されました。

 すでに報道されている通り、新しい「DMC-12」の車内装備は、ハイテク技術を詰め込んだ最新型にアップグレードされる見込みです。エンジンは300~350馬力のものを搭載し、価格はおよそ10万ドル前後(日本円で約1090万円)と予想されています。エスペイ副社長によると、生産ペースは週に1~2台を見込んでいるとのことです。

 もちろん、すべてが決まっているわけではありません。

 諸々の手続きや審査には、6カ月を要する可能性もあるとのことです。また、2020年11月に予定されているアメリカ大統領選挙の結果によっても、法律化までのスピードは変わってくるでしょうが…。

これはxの内容です。詳細はそちらでご確認いただけます。

 ハガティ社によれば、「デロリアン・モーター・カンパニーばかりが、この“少量自動車製造業者法”の恩恵を受ける会社ではありません」と表明しています。つまり、アイコン(Icon)やシンガー(Singer)、スーパーフォーマンス(Superformance)などの競合小規模メーカーもこれを絶機と捉え、新たな動きを見せてくることでしょう。

 ひとまず、実車化に向けて道しるべが整いつつあることを祝い、また新たな知らせが届くことを待ってみましょう。その間、あの映画の予告編でも見ながら気分を盛り上げておくというのはいかがでしょうか?

これはyouTubeの内容です。詳細はそちらでご確認いただけます。
バック・トゥ・ザ・フューチャー (字幕版) - Trailer
バック・トゥ・ザ・フューチャー (字幕版) - Trailer thumnail
Watch onWatch on YouTube

Source / Road & Track
Translation / Esquire JP
※この翻訳は抄訳です。


Related Video


preview for WATCH: Self-driving DeLorean drifts through kilometer-long racecourse