100年に一度の大変革期を迎えている自動車業界。「何をそんなに大騒ぎしているの?」と思われる人もいらっしゃるでしょうが、モビリティに関わる各種産業の裾野は広く、世界市場はおよそ10兆ドル(約1401兆円)と言われます。

そのスケール感は、一般消費者である私たちにはなかなか想像できません。が、いまやクルマには地図データと自社の位置を活用した車体制御や安全技術、通信機能など、その装備が多岐にわたっていることは理解できます。

いま日常的に存在するクルマに求められている大きな命題は、“CO2排出量の削減”です。これがいわゆる「脱炭素」や「カーボンニュートラル」という環境問題。世界統一基準の策定はいまだ道半ばですが、“クルマを電気で動かす”というのは誰もが認識しているところだと思います。

当然のことながら自動車メーカー各社は商品性を高めつつ、これらに付随する諸課題に同時並行的に対処しなければなりません。異業種とのM&Aやアライアンスが話題になるのは、従来の産業構造では対応不可能なことを物語っています。

マツダがこれらの難題をクリアし、私たちが「触れてみたい」「乗ってみたい」と思わせるクルマをいかにつくるのか? 大いに興味をそそられます。ロータリーエンジンに代表されるマツダのブレークスルーを目撃する…そんな時代を、私たちはいま過ごしているのです。

マツダは2030 年時点で生産する車の電動化率を100%、EV 比率25%到達を想定しています。その達成に向け、2021年6月には新たな技術・商品の開発方針を発表しています。

具体的には、「SKYACTIV マルチソリューションスケーラブルアーキテクチャー」の商品として、ハイブリッドモデル5 車種、プラグインハイブリッドモデル5 車種。そしてEV モデル3 車種を日本、欧州、米国、中国、ASEANを中心に2022 年から2025 年にかけて順次導入し、2025 年以降でマツダ独自のEV 専用プラットフォーム「SKYACTIV EV 専用スケーラブルアーキテクチャー」を導入する予定となっています。

 
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2022年9月に販売を開始された「CX-60」の日本仕様車。一般走行から長距離ドライブまで余裕を持って楽しめる、「ドライビングエンターテインメントSUV」をコンセプトに掲げた2列シートミッドサイズSUVです。
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これに続き同年10月7日には、2022年から投入されるクロスオーバーSUV5車種のラインナップを発表。日本と欧州向けにはラージ商品群から2列シートの「CX-60」、3列シートの「CX-80」の2車種の登場が発表されました。「CX-60」は2022年9月15日に販売を開始され、6 月24 日の予約受注開始から約2 ヵ月半で8700 台を越える台数を受注したと言います。

現行モデルである「CX-5」「CX-8」は、継続車種としてラインナップを維持するそうですが、いずれにせよデザインと爽快な走りにこだわるマツダ車の選択肢が広がるのはうれしいこと。余談ですが、北米ではこの新規2車種をベースにワイドボディ化した「CX-70」と「CX-90」を設定するなど、市場に応じたモデル構成で新規車種を投入するそうです。海外専売モデルとはいえ、こちらも気になるところです。

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2021年11月に大幅改良が発表された「CX-5」。最新の魂動デザインを取り入れたことで、デザイン表現が進化されました。

この2030年に向けたタイムラインの第一歩をクルマ好きの視点で俯瞰(ふかん)すれば、注目は新開発アーキテクチャーに直列6気筒エンジンが採用された点に尽きるでしょう。

2017年開催の第45回東京モーターショーに出展された“エレガントで上質なスタイル”を描いたデザインビジョンモデル、「マツダ・ヴィジョンクーペ」との整合性を感じずにはいられません。日本の美意識を織り込み深化した「魂動デザイン」に、誰もが夢を見たのではないでしょうか。

もしも後輪駆動を採用する本格的スポーツクーペが登場すれば、前出の電動化モデルと相まって、マツダのブランド価値はさらに高まるに違いありません。

外部機関からも高く評価される マツダの未来

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現地時間2022年6月30日~7月3日に開催されたル・マン クラシック2022では、「マツダ 787B」のデモンストレーション走行が披露されました。1991年にル・マン総合優勝を果たしたこのモデルこそ、マツダの飽くなき挑戦を象徴する1台です(画像は2011年6月10日に実施されたル・マン ドライバーズパレードのもの)。

最後に、マツダの企業としての健全性をチェックしましょう。

世界的金融市場指数プロバイダーのS&Pダウ・ジョーンズ・インデックス社による「Dow Jones Sustainability Asia Pacific Index」では5年連続で選定され、投資に値する企業としてその名を連ねています。

また、DJSI(ダウジョーンズ・サステナビリティ・インデックス)の評価機関であるS&P Globalが、企業のESG取り組みを評価し、毎年業種別に優れた企業を表彰する「The Sustainability Yearbook 2022」では、「Sustainability Yearbook Member」にも選定。自動車業界ではわずか7社中の1社に数えられ、マツダの将来性が期待されていると言えるでしょう。

一方、消費者視点では米コンシューマーレポートに注目。その理由はマツダが発表した2020年3月期の年次報告書の地域別販売比率にあります。このレポートによれば、北米が28%でトップ。続いて欧州19%、中国18%、日本14%という現状が浮き彫りに。やはり北米市場抜きに自動車メーカーを語ることは不可能なのです。

2022年マツダブランドの評価は「Best Reliability」で1位、「The Most Reliable Car Brands」で2位に輝いたことを始め、数々の部門で高い評価を獲得しています。主戦場である北米、そして欧州でのモデル別販売比率は、クロスオーバーSUVが半数を上回りさらに加速中。ブランドバリューの構築と商品への期待値と信頼性を獲得し、その市場に電動化した新規クロスオーバーSUVを投入。その戦略と戦術がどのような結果を生むのか、楽しみでなりません。

また、米アラバマ州ハンツビル市に建設したトヨタとの合弁新工場「Mazda Toyota Manufacturing, U.S.A.」が、2022年1月から本格稼働されています。マツダとトヨタ、互いのリスペクトによるアライアンスが将来的にどのようなサプライズをもたらすのか、こちらのニュースも大注目と言えるでしょう。マツダの今後のさらなる動きから、目が離せそうにありません。