マツダの欧州法人にあたるマツダ・ヨーロッパは現地時間2023年1月13日(金)、ベルギーのブリュッセルで開催中のブリュッセルモーターショーにて、2023年型「MX-30 e-SKYACTIVE R-EV」でロータリーエンジンが復活することを発表しました。

これはあくまでも、PHEV(ガソリン車と電気自動車のいいとこどりのハイブリッド車)における発電用パワートレインとしての使用です。駆動用のエンジンではないものの、ロータリーエンジンを搭載する量産車としては2012年に生産終了した「RX-8」以来のモデルとなります。

マツダによると、今回のロータリーエンジンをレンジエクステンダ―(航続距離延伸を目的としてエンジンを発電機専用で搭載する装置)としての採用は、温室効果ガス排出量の削減に向けた方策の一つとのこと。

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MAZDA

マツダとロータリーエンジンは、浅からぬ間柄にあります。

1961年に、ドイツのNSU社からロータリーエンジンの特許を取得します。そうして開発に挑戦こそするものの、直面したのが量産化に向けた技術激な課題でした。途中で諦めて脱落していく競合他社を横目に、ついに完成させたのが名車としての誉れ高い10A型エンジン搭載の「コスモスポーツ」です。それは特許取得から6年が経過した1967年のことでした。

ロータリーエンジンの特徴は小型で高出力なこと。おむすび型のローターを回転させ出力を得るため、ピストンの上下運動を回転運動に変換するレシプロエンジンよりも低振動というメリットもありました。

その後もマツダは独自に研究開発を進めるその一方で、排気ガス規制の荒波もあってロータリーエンジンの開発を進めていた他メーカーは相次いで撤退していきます。そうして量産車として開発を続ける自動車メーカーは、マツダのみとなりました。

そんな過去を持つマツダによる、“11年ぶりのロータリーエンジン復活”の声…。開発規模縮小の危機を乗り越え、開発を中断する道を選ばなかったマツダの技術者たちはもちろんですが、この一報にココロ躍らせるマツダファンもさぞかし多いのではないでしょうか。

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「MX-30」はマツダの
電動化を牽引役を務めるモデル

さて、マツダ初のBEV(バッテリーEV)として登場した「MX-30」ですが、一部市場向けにはマイルドハイブリッドもラインナップするなど、マツダの電動化の牽引役を務めるモデルでもあります。だからこそ今回のロータリーエンジンを搭載したPHEVが、「MX-30」から登場することも自然の流れと言えるでしょう。

今回搭載しているロータリーエンジンは、発電用として新たに開発されました。バッテリーEVとして使える85キロのEV走行機能を備えるとともに、発電によってさらなる長距離ドライブにも対応。もちろん、走行の全てはモーターで駆動します。

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新たに開発された発電用ロータリーエンジン。
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必要とされる出力性能をコンパクトに実現できるロータリーエンジンの特長を活かし、エンジンは高出力モーターやジェネレーターと同軸上に配置しモータールームに搭載されています。

普通と急速の両方の方式に対応した充電機能や1500ワットの給電機能、使用シーンに合わせて選択できる3つの走行モード(「EVモード」、「ノーマルモード」、「チャージモード」)を備えるなど、多様なカーライフをサポートしてくれることでしょう。なお、今後日本での展開の有無については現状の段階では明らかになっていません。

今回のロータリーエンジン復活の発表とともにマツダは、ロータリーエンジンの形状を模した三角形の中に小文字の「e」を配した新しいロゴも発表しました。そこで同社は、「電動化の時代だからこそ、ロータリーエンジンが新たに生まれ変わる」と宣言しています。

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三角形の中に小文字の「e」を配した新ロゴ。ロータリーエンジンの形状を模しています。